(本文とは関係ありませんが、JKT48。まあ、これも変わるインドネシアの一面でしょう。
イスラム主義者からの批判などはないのでしょうか?
“flickr”より By Agan Sam http://www.flickr.com/photos/agansam/8404100327/)
【経済規模、30年までに英独を抜く】
インドネシア経済の好調さと問題点については、1月24日ブログ「インドネシア ポスト中国「東南アジアの時代」をリード 労働争議、イスラム主義などの問題も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130124)で取り上げました。
****インドネシア 消費ブームに乗った「稼ぎ頭」*****
GDPは過去10年間で2倍になった。12年の成長率は11年の6・5%から6・3%に「低下」したが、辛うじて2%の伸びを達成したアメリカから見れば羨ましい限りだ。「インドネシアはASEAN全体のGDPの50%近くを占める。ある意味、東南アジアの稼ぎ頭だ」とオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の東南アジア担当エコノミスト、アニンダ・ミトラは言う。
経済規模は1兆ドルに迫る勢いだ。既に東南アジア最大で20カ国・地域(G20)でも16位だが、経営コンサルティング会社マッキンゼーの予測では30年までにイギリスやドイツを抜き、消費人口は9000万人増加する。
人口2億4200万人のインドネシアが快進撃を続ける理由はどこにあるのか。慎重な金融政策と通貨安によって対外債務が減少した結果、民間部門も政府部門も収支が改善。投資はパームオイル、石炭、鉱物資源などさまざまな産業の追い風になっている。経済成長の牽引役は堅調な国内需要で、製造業や輸出に比べて国外の状況の変化に左右されにくい。若い労働力や中間層の成長も、消費の堅調な仲びに貢献する。(後略)【1月29日号 Newsweek日本版】
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1月24日ブログでは、汚職・不正の問題、労使問題、イスラム主義の高まり、テロの拡散といった、インドネシアが抱える問題点を挙げています。
【20年までに中間層が倍増 旺盛な購買意欲】
そうした問題は抱えながらも、インドネシア経済の活況・先行きの明るさを伝える記事を2件目。
1件目は中間層の急拡大と、それに伴う消費傾向の変化を伝えるものです。
*****インドネシア 中間層が倍増 20年までに1億4000万人見込み*****
インドネシアで所得水準の上昇が進み、全国的に消費活動が活発化する見込みだ。米国のボストン・コンサルティング・グループによると、インドネシアでは家賃を除く月間消費額が200万~700万ルピア(約2万200~約7万700円)の人々で構成される中間層が現在の7000万人から2020年までに1億4000万人に倍増するという。現地紙、ジャカルタ・グローブなどが報じた。
同グループは、安定した政治状況などから、インドネシアの堅調な経済成長は今後も続き、内需拡大と所得増が同時に進行すると予想。中間層が50万人以上暮らす生活圏も、現在の24地区から20年には54地区まで増加するとしている。地域も現在のジャワ島に集中した状態からスマトラ島、カリマンタン島、スラウェシ島などに拡大していく見込みだ。
また、同グループ幹部は、4000世帯を対象とした調査で自分よりも家族のための消費を重視すると回答したインドネシア人の割合が全体の63%にのぼったと指摘。今後は、教育、家電などの耐久消費財、保険といった「家族・家庭」をキーワードとする分野で消費拡大が期待できるとの見解を示した。(シンガポール支局)【4月18日 SankeiBiz】
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2件目は、ネット通販(eコマース)業界の急成長を伝えるものです。
****インドネシア、通販活況 ネット市場、3千億→8千億円****
インドネシアで、ネット通販(eコマース)業界が急成長している。2年後には8千億円市場になるとみられ、日系企業も次々と参入する。スマートフォンも普及して勢いに乗るが、課題はインフラと法律の整備だ。
■中間層が購買意欲 日本勢も次々参入
スカーフ姿の若い女性が、棚から取った商品を次々と赤いかごへ入れていく。シャンプー、おむつ、殺虫剤。ここはインターネットの日用品ショッピングサイト「スカマート」の倉庫。女性は、ピッカーと呼ばれる買い物代理人だ。
「パソコン前の顧客には、自分でかごを持って買い物していると思ってもらいたい」。住友商事の子会社、住商Eコマース・インドネシア社の小久保岳人社長は、約2千点を収納するジャカルタの倉庫で、発送までの流れを説明した。
午後5時までなら即日出荷で、翌日か翌々日には届く。昨年12月のオープン後、特に都市部の共働き家庭に受けているという。車で買い出しすれば、数キロ進むのに1時間以上もかかる渋滞に悩まされるからだ。
インドネシアでネット通販が急速に広がり始めたのは、3年ほど前からだ。業界団体などの推計では、昨年は3千億円程度だった市場規模が、2年後には8千億円に達するとみられている。2億4千万人の人口と、年6%を超える経済成長率に支えられた中間層の購買意欲が膨らんでいる。
一番人気は登録者数500万人の地元系「カスクス」。ネット上に無料で売買の場を提供し、広告料から収益を得ている。決済と商品の取引は消費者同士で行われ、年間取引総額は約400億円といわれる。
カスクスのケン・ディーン・ラワディナタ最高経営責任者(CEO)は「インドネシアのネット通販はまだ夜明けの段階。中間・富裕層の多くは、カネを持っていても使い道がないため、シンガポールまで買い物に行く。ネットショッピングは強い消費意欲をすくい上げられる」と話す。
外資系企業の出資や提携が進むなか、日系では楽天が「ラクテン・ブランジャ・オンライン」を2年前に開設。サイバーエージェントの子会社は昨年、ベビー用品を扱う「ビルナ」に出資した。
日本では、注文が平日夜と休日昼に集中するが、インドネシアでは平日の昼間が圧倒的に多いという。「会社のパソコンで、勤務時間中にネットショッピングをやるようだ。ひとごとながら心配になる」(小久保社長)との声もある。
■消費者保護に不安
急成長の陰で、不安要素もある。インフラと消費者保護法の整備だ。
運送会社JNEでは、ネットショップの宅配は2年前から急増し、いまは全体の4割を占めるという。ジョハリ・ゼイン代表によると、渋滞が慢性的なジャカルタでは、大型車だと小回りがきかないため、1回の配送では60個が限界だ。「地下鉄整備などで渋滞対策が取られない限り、一般客と業者による道路の奪い合いが激化し、対応できなくなる」と懸念する。
業界の急成長で法規制が追いつかない問題もある。2008年制定の電子・情報取引法には、オンライン決済や消費者保護などが盛り込まれていない。カード払いなどで詐欺に遭っても救済されないことを恐れてオンラインの支払いをためらう利用者が多く、銀行振り込みが中心だ。
貿易省国内貿易部は「情報通信、財務、法務・人権の各省や警察と会合を開いており、草案作りを進めている」とするが、めどはついていない。カスクスのラワディナタCEOは「中銀頭取に『電子商取引の責任省庁はどこか』と尋ねたが、答えられなかった。早く法整備をしないと、業界全体が信頼を失ってしまう」と危機感を強める。(ジャカルタ=郷富佐子) 【4月14日 朝日】
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【「中所得国の罠」】
ただ、インドネシアだけでなく、経済的に急成長を遂げる東南アジアや中南米の国々に関しては「中所得国の罠」の問題があります。
「中所得国の罠」とは、「中所得国」まで成長したものの、そこから足踏みをしてしまい、次のステージである「高所得国」になかなか仲間入りできない現象で、基本的には“労働コストの低い低所得国との競合や、高所得国(先進国)の産業構造の高度化との板ばさみ”の状態です。
「中所得国の罠」については、4月10日ブログ「マレーシア 政権交代をかけた総選挙 「中所得国のわな」を回避する改革は可能か?」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130410)で、マレーシアに関して取り上げましたが、事情はマレーシアの後を追うインドネシアについても同じです。
*****インドネシア、外国直接投資が過去最高 “中所得国のわな”に警告も****
経済好調が続くインドネシアは、2012年の外国直接投資(FDI)が前年比26%増の230億ドル(約2兆1500億円)に達し、過去最高を更新した。現地紙ジャカルタ・グローブが報じた。
同国投資調整庁の発表によると、12年のFDIは7~9月が前年同期比22%増、10~12月が同23%増と年間を通じて拡大基調が続いた。
産業別の投資先は、10~12月の場合、金属・機械・電子がトップで12億ドルに達した。2位は鉱業で11億ドル、3位は運輸・倉庫・通信で9億ドル、以下、食品(6億ドル)、自動車・輸送機器(5億ドル)と続く。
国別では、シンガポールが最大の投資国で10~12月は14億ドルにのぼる。次いで、韓国(7億ドル)、日本(7億ドル)、米国(5億ドル)の順だった。
同庁の幹部は、高付加価値型産業への投資が増加傾向にあるとしたうえで、「“中所得国のわな”を回避し、さらなる経済成長を実現するには産業革新と技術改革に力を入れなければならない」と指摘する。
中所得国のわなとは、安価な労働力などを強みに急成長した中所得国の経済が先進国入りを前に停滞することを指す。
国際通貨基金やアジア開発銀行などの国際経済機関は、インドネシアに対し、インフラ整備を強力に進めなければ、わなにかかる危険性が高いと警告を発している。【2月15日 SankeiBiz】
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この“罠”を回避していくためには、1月24日ブログで取り上げた諸問題に対処しながら、産業構造の高度化を図っていく必要があります。