ご飯を食べているときに硬いものを噛んだという感覚があり、その硬いものを出して見たら奥歯の詰め物だった。
舌で探ってみると奥歯にポッカリと大穴が空いている。
歯科医院を1年半ぶりに訪れた。
待合室には私一人だけ、と思ったらおばさんがマッサージチェアに寝転んでいた。
突起物がガッガッガッガッとおばさんの頭部を持ち上げて振動させている。
髪の毛が振り乱れている。
私はソファに腰を下ろし雑誌とおばさんを見ていた。
見るからに暗い感じの男が入ってきて受付を済ませ私の隣に座った。
10人以上座れるのに私の真横に来ることはないだろうにと感じた。
男は座るや否や何枚ものカードをペラペラとめくり始めた。
たぶん診察券を探しているのだろう。
私は男側に置いた自分のカバンを反対側に移した。
男はその後車の雑誌を見始めた。
そして何かを言っている。独り言だ。
そんなに大きな声で喋ったら私に話しかけていると思うだろ、と思う。
おばさんが呼ばれた。
「○○さーん」
おばさんは頭を強く揺さぶられているため気が付かない。
エクソシスト状態。
看護師さんがそれに気付き揺れが収まってから再び呼んだ。
「○○さーん。どうぞー」
おばさんは寝起きの声で
「はっ、はいっ」と言って急いで診療室に消えていった。
それからまもなく私の番が来た。
「こちらにどーぞ」
何箇所かある診療台のひとつに乗った。
チュイーン ゴリゴリゴリ ミーーン ジュボジュボ シュワー
「ゆすいでください」冷めた声で我にかえる。
椅子が起き上がって紙コップのぬるま湯でゴボゴボする。
いろいろな音がして、その都度痛い感覚やらしみる感覚がある。
しみる箇所に風を当てられるのは嫌だな。
後々まで痛みが残ることもあるから。
それから口を開けたままでいるのが苦痛。
指2本分しか開かないので歯医者さんには申し訳なく思う。
それから髭を生やしているので女性にはチクチクさせてしまって、これまた申し訳なく思う。
新しい詰め物をして終了。
ついでに歯の掃除をしてもらい歯茎のチェックもしてもらった。
老眼鏡をかけて鏡を持ち自分の歯を見て説明を受けた。
もう当分の間来なくてもよいということが嬉しかった。