対象範囲が決まり二人の作業員は別れて、それぞれの区域で伐採に入った。
チェーンソーの音が静かな村に響き渡る。
片方を見に行ってみた。
道路や電線が邪魔になって思うように倒せないようだ。
それでも倒す方向を指差したり実際に移動してみたりして慎重に進める。
木にロープを巻きつける。
そのロープを縄跳びの後回りをするときのように両手で上に上げる。
するとロープは今までよりも高い位置に留まる。
それを繰り返して3メーター以上も上に留めた。
根元付近を予め切ってあるので、後はロープを引いて、そちら側に倒す。
たいして太くない木であったが、それでも倒れると長い。
あわや道路に、はみ出るかとヒヤッとした。
若い作業員は熱くなったようで腕をまくった。
腕には木の根のような静脈がクッキリと何本も見えた。
やがて、もう片方の作業員がやってきた。
そちらも電線や道路が邪魔になって思うように切り倒せないようだ。
午後からは二人で作業していた。
1人がチェーンソーを担当し、もう1人がチルホールという器具で引っ張る。
倒れる方向を確実に決めないと惨事を招く。
連携作業は見事なものだった。
片方の作業を見つつ自分の作業を進める。
ボワ ブォー ブォーン ブォーンとチェーンソーのエンジン吹け上がりを確認して木を切り始める。
まるで豆腐に包丁を入れているかのようにチェーンソーが食い込んでいく。
ただ木の切れ端が粉となって吹き出てくる。
ギシギシギシ とチルホールでワイヤーを絞る。
木は バキッ と音を立てて亀裂が走る。
チェーンソー担当者は具合を見て高回転で回る刃を押し当てる。
そしてワイヤーが引かれる。
木に角度が付き上部が他の木と接触し始め枝と枝がパチパチという音を立てて折れ合う。
根元が バキバキ メリメリ と発しながら木は倒れていく。
一瞬の静けさの後ドドーンと着地する。
着地後少し飛び跳ねた木は地面に静かに横たわる。
上から千切れた枝や葉がパラパラと降り注ぐ。
危なくない所で見ている私にも地響きが伝わってくる。
しばらくすると製材所の前を通ると匂う、あの木の香しい香りが漂ってきた。
私は家に戻り部屋の中から危険と隣り合わせの豪快な仕事の無事を祈った。
キンキン カンカン コンコン コーンコーン とクサビを打ち込む音が聞こえてきた。
クサビの音は次第に低くなり打ち込む速度もゆっくりになる。
やがてバキバキ ドドーンという音になる。
間伐によって我が家の山が明るくなり残った木々や草が活き活きと生長することができる。
倒された木がもったいないことに放置されるだけだ。
それをどうにか使うことを考える。
それが今後の私の目標だ。