10000歩の内の8000歩くらいの所つまり帰り道に公園の隣を歩いていた。
道路の端にかがんだ状態のおばあちゃんが居た。
近づいてきたら分かった。
彼女はかがみこんで道路の端を掃除していたのだ。
公園の長いフェンス沿いの、ほぼ5分の3は驚くほどきれいになっていた。
家庭用のチリトリを使い枯れ葉やドングリを集めてはゴミ袋に入れている。
余りにも非効率的だし距離が長いからご苦労さんなことだな、と思った。
近づいて行って「ご苦労様です。距離が長いからたいへんですね。丁寧にやっていただけたのですね」と労いの言葉を掛けた。
「ああ、どうも」とぶっきらぼうに答えたのみで手を休めない。
ふと気づいたのだがビーグル犬がおばあちゃんの体の繋がれている。
犬は私を恨めしい目つきで見て「どうすんだよ。散歩に行くもんだと思っていたのに。ちっとも進まないんだよ」と言いたげであった。
私は言葉に出さず「仕方ないんだよ。もう少し待ちな」という目で犬を慰めた。
別の日散歩の途中、堤防で小柄なおばあちゃんが私と同じ堤防に乗ってきた。
横断歩道を渡り橋のたもとで止まって河川の工事現場を眺めていた。
「なにかあったのかな?疲れちゃったのかな?」と思いながらその横を通り抜ける時おばあちゃんの様子を見てみた。
タイミングよく私に「こっちの堤防が低いだかいねぇ?」と言う。
そうかこの工事が気になって誰かが通るのを待っていたのか、と感じた。
「堤防の高さは同じです。川の中に打ち込んだ杭をやり直しているんです」と教えた。
「84になるもんで自転車は乗らずに歩きで来た」という。
「ああ。良いカバンですね。買い物袋を持って歩くよりリュックに入れて歩いたほうがいいですよね」と言った。
続けて「84の割には顔が若いね」と要らぬことをしゃべった。
おばあちゃんのスイッチが入ってしまった。
「ああうれしいやぁ。2年前に心臓の手術をしたらぁ。そうしたら顔がしわだらけになっちゃって」と言う。
そして気を良くしたついでに「昔はぽっちゃり顔で高田みづえに似てるって言われた」と言う。
「相撲の親方に嫁いだ人?」と聞くと「そう」と答えた。
「そういやぁ似てるわ。高田みづえに」というと満面の笑みを見せた。
こりゃぁもっと長引くぞと思い「じゃあね」と言って散歩を続けた。
あの笑顔が長く続いてほしいと思った。
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