今日も1日よく遊んだ。
帰宅してありあわせのもので夕食を済ませた。
妻が1月誕生日の人が多いと言う。
「A山さんご主人でしょ。その翌日がA山さん。同じ日がK林さん。あなたと私。でIW君」
私は妻の言葉にハッとなった。
IW君は妻の元彼氏である。
「IW君まで覚えているの?」と言うと
「うん。ちゃんと誕生日おめでとうって言ったよ」と言う。
「へぇー、すごいじゃん」と言いながら妻のやさしさを改めて痛感した。
楽しく話しながらテレビを見ていると妻が、ある新聞記事を読んでくれた。
児童文学作家 内田麟太郎 「母の愛に飢え続け」
5歳で生みの母と死に別れ父の再婚相手は自分に愛情をくれなかった、というものだ。
聴いているうちに涙が出てきて泣き出してしまった。
何故泣いているのか自分でも分からない。
彼に同情しているわけではない。
彼の生い立ちと私のとでは全く違うので私の過去を思い出しているのでもない。
ただ共通しているのは妻に出会って自分が変わったということだけだ。
極度に疲れているわけでもなし、酔っ払っていたのでもない。
ただ涙が出てきてしまった。
近くに置いてあった台拭きで目を覆った。
妻の前でかっこ悪いなと感じたが涙は止まらない。
「ほら、麿ちゃんが心配しているよ」と言われて膝に座っている麿君を見ると私を見上げて確かに心配していてくれた。
私が頭を撫でると麿君は安心して目を閉じた。
しばらくの間涙を流して収まった。
自分の中のどこかに忘れられていた傷を見つけたのかもしれない。
布団に入って妻は私の手を握って「今日は楽しかったよ。お休みね」と言ってくれた。
「お休み」と私も答えてテレビを見ていた。
すると妻は私の手を結構強く握っているにもかかわらず、いびきをかき始めた。
このおおらかさで私は助けられているのだなと思うと、また少し涙が出てきた。
手を離すと妻は一瞬気付き「オヤスミ」と言って本格的な眠りに落ちた。