日本の防衛産業は政治の体たらくで完全に危機のようです。家電や半導体など多くの産業がこうした政治の気概の無さで衰退して来た例が沢山あります。
兵器産業の危機を桜林美佐さんが書いてくれたようです。宮崎さんが書評で取り上げてくれています。
それにしても、想像以上に日本の兵器産業は危機のようです。と言うか、日本の産業自体が政・官・財・マスメディアなどの正しい国家観も歴史観も無いリーダー達によって潰されようとしているようです。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和四年(2022)9月15日(木曜日) 通巻第7463号 <前日発行>
書評
兵器国産はわが国の防衛の基本方針ではなかったのか
下請けの町工場に押し寄せる廃業、倒産、外国ファンドの買収危機
桜林美佐『危機迫る日本の防衛産業』(産経NF文庫)
危機とは国家安全保障の状況を一般的に表す。保守論壇は相変わらず、日米安保同盟深化、日米安保条約の改定と憲法改正はセット、米国と核シェア、日本の核自主開発などの議論で賑わっている。
しかし足下をも見よ!
防衛力強化、自主開発などといっても、それは難しい環境にあるばかりか、日本国内の防衛産業は人材不足と予算不足により未曾有の経営危機に瀕している。
何がネックかと言えば、第一に防衛予算のアンバランスである。
「約44%が人件費、約35%がローン支払いという義務的経費、残りの20%に満たないお金がその年に使える金額である。しかし、その虎の子の20%も大半が米軍や基地周辺への自治体に支払われる分や装備の維持整備費になっている」。
もっとも重要な「研究開発費」に割かれるのは予算の僅か4%。これじゃ、防衛の根幹が崩れていると同義ではないのか?
はたして国内防衛産業が存続できるのか、廃業に追い込まれるのかの瀬戸際に立っている。
防衛予算のアンバランスの問題、とくに装備一辺倒の特徴がある防衛予算は分割ローンが組まれている。装備の充実といっても、対米一辺倒という方向性、しか も、この状況の間隙を縫って、中国がダミーのファンドを駆使し、日本防衛産業の重要な部品をつくる企業の買収を狙っている。
国内調達が減少し、関連企業は防衛から撤退したため、技術基盤は弱体化している。まさに著者が指摘する如く「これは産業の問題ではない。国家安全保障の問題」なのだ。
あまつさえ、国防の基本方針にあった「国産化」は、あらかた消えて、我が国の防衛体系は、自主防衛など不可能、在日米軍の作戦補完のための装備が強要さ れ、国内産業の育成強化どころではない。まして日本学術会議とかいう不思議な左翼団体が、国家破壊の策動に手を貸している。
日本に戦略兵器は存在しない。すなわちICBM、戦略爆撃機、原潜、空母、宇宙キラー衛星がない。あるのは米軍の作戦を補完する護衛艦、哨戒機、あとは 『防護兵器』のみで、攻撃兵器は、これからホンのちょっと配備される。継戦可能な弾薬、弾丸、砲弾、ミサイル、その他は圧倒的に不足している。ウクライナ がもっている防衛兵器すら自衛隊には数えるほどしかない。
本書は、このような日本の防衛上の欠陥をみごとえぐり出した。そのうえで、いかに国内で防衛産業を復活させなければならないかの重要性を説いている。
「自衛官は装備に自らの生命を預け、それを維持し運用するために全力を尽くす。あやまった選択の結果は現場隊員が命がけでツケを払うことになる」(64p)
いやツケは表面化している。日本経済新聞(9月6日)にこんな記事がでた。
「南西諸島で『有時があれば数日も持たない』。精密誘導弾が不足しているからだ。『稼働できる航空機が足りません。』。陸海空の三自衛隊総てでている。全装備品のうち、足下で稼働するのは五割、必要な部品と予算が足りない」からだ。(日経『防衛費を問う』シリーズ)。
著者の桜林さんは十二年前に『誰も語らなかった防衛産業』(並木書房)以来、防衛産業を取材し続けてきた。いま、嘆息していう。
「だんだんとその活動に『辛さ』を感じるようになっていった」
状況はますます悪化している。本書は防衛議論の前提となる問題提議である。
それにしても政・官・財・マスメディア等日本を率いるリーダー達に正しい国家観と歴史観を持たせない限り日本の前途は真っ暗なのじゃないでしょうか。
折角、劣化したとは言え世界一優秀な労働力を持つ日本がこんな体たらくなのはどうにも我慢出来ない。
やはり、どんなに時間がかかろうとも教育改革に乗り出すしかない。それには、やはり日本人が目覚めてまともな国会議員を選ぶしかないでしょう。
さて、日本人は目覚めることが出来るか!
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