三日目、朝から台南市議会を訪問した。議場には孫文の大きな肖像画があり、「革命尚未成功、同志仍須努力 (革命いまだ成らず、同志すべからく努力すべし)」という孫文の遺言も掲げられていた。
たまたま、記者会見をしようとしておられた郭國文市議にご挨拶した。
午後は台南市に本社を置く世界第一のABS樹脂生産企業である奇美実業の創業者である許文龍氏を訪ねた。
許氏は、李登輝総統時代に台湾の国策顧問となり、その後、陳水扁総統の相談役も務めている人物で、台湾の政財界に大きな影響力を持っておられる。
本社事務所に《奇美博物館》を設け、世界中から収集した“お宝”を無料公開しておられる。
写真撮影は禁じられたが、バイオリンの収蔵庫には何百本のバイオリンが置かれ、ストラディバリのものもたくさんあった。
「一番高いバイオリンは?」という質問があり、無造作に取り上げられたものはノルウェーの国宝級で10億円は下らないそうだ。
見学の後、許氏と懇談させていただいた。日本統治下の学校を出ておられるので、流ちょうな日本語を話された。
日本の三菱商事と取引を始めるまでの苦労話や創業時のエピソード、経営方針なども聴かせていただいた。
大変な親日家としても知られていて、八田與一技師をはじめ、台湾に功績を遺した日本人の銅像をたくさん作り、台湾国内あちこちに置くという活動もされている。
「台湾は日本に世話になった」「日本が統治するようになり、まず治安が良くなった。次に教育が良くなった。日本に感謝している」とおっしゃった。
また、「日本は大陸(中国)に気兼ねしすぎだ」ともおっしゃり、「日本は台湾ともっと交流すべきだ」という持論も述べられた。
最後は、「皆さん、一緒に日本の童謡を唄いましょう。日本の歌は素晴らしい」とおっしゃり、自らバイオリンを演奏され、みんなで「浜辺の歌」や「仰げば尊し」を熱唱した。
夜は、台南市の職員の方にご案内いただき、地元で人気のある“しゃぶしゃぶ”?の店に連れて行っていただいた。
日本の“しゃぶしゃぶ”とはずいぶん雰囲気が違ったが、美味しかった。