女性専用車両

夜７時、久しぶりに地下鉄に乗る。目の前に止まった車両が
ガラ空きだったので、これ幸いと乗った。若い女性が数人のみ。
次の駅、次の駅、乗ってくるのは女性ばかり。視線を感じる。
名古屋駅では、女性ばかり大勢乗ってきた。そこで気がついた。
「女性専用車両」だったのだ。

「女性専用車両」があることは知っていたが、朝のみと思って
いた。夕刻５時から９時までもそうだとは知らなんだ。

虚無僧は、煩悩を滅しているから“男に非ず”などと言い訳け
してもいいわけない。あわてて隣りの車両に移動した。隣りは
満杯。男性の中に結構女性もいるではないか。

車内アナウンスで「不審な物、不審者を見つけたら、車掌まで
お知らせください」と。不審者って私のことか???

通りすがり その1

上下白のスーツに派手なシャツ、茶髪の“兄さん”二人が、
パン、パンとおもちゃのピストル? を鳴らしながら近づいて
きた。「ヤバイ、ナムアミダブツ」と内心思いつつ、そ知らぬ
顔して尺八を吹く。

天蓋はこちらの顔が見えないから、目を合わさないですむ。
しばらく、しげしげと私を見つめて、ポケットに手を入れ、
小銭をジャラジャラ取り出して偈箱に入れてくれた。
「おッ500円!」と一瞬喜んだら、「あ、これは違う違う」と
500円玉は引っ込められた。(残念)

そして頭を深々と三度も下げて立ち去った。この筋の方は、
今まで数回めぐり合っているが、怖い目に遭ったことはない。
得てして手を合わせ、布施してくださる。神仏には信仰心が
あるようだ。


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通りすがり その2、 3

(その2)
最近のデジカメは小型化して、いいような悪いような。
天蓋の中までカメラを突っ込んで、顔を撮ろうとする輩が
現れた。若者だ。
インターネットのＨサイトでも「のぞき趣味」が蔓延。
女子高生のスカートならぬ、虚無僧の天蓋の中まで覗きたいか。
(そんなに、顔見たいですか? 、見ると“目”つぶれますよ)

(その３)
小学生の女の子でも最近は背が高い。いいような悪いような。
虚無僧を見て、「なんで、変なもの被ってるの? とりなさい」と、
天蓋に手をかけられた。前にも二度ほどやられたので、今は
しっかり紐で結んで、はずれないようにしている。
「昔なら手討ちにしてくれる!だぞ」と言っても「手討ち」の
意味が解らんか。怖いもの知らずにはこちらが恐れ入る。


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通りすがり その4

(その4)

男性が近づいてきた。「この偽坊主が!」と。
(坊主頭じゃありません、髪の毛は有ります。
虚無僧は“僧にあらず、俗人”。などと、心の
中でつぶやきながら、尺八を吹く。

その御仁、しばらく尺八に耳を傾け「偽坊主よりは
いいな」と。どうやら乞食や托鉢僧より、尺八を
吹くだけいいという意味か。

「私は日蓮聖人を信じてる。日蓮聖人は一番偉い。
日蓮聖人は一番多く人を救った」と。

人が信じているものを否定したり、論争することは、
もうやめた。「そうですね、日蓮聖人も立派な方
ですね」と肯定することにした。「私も日蓮聖人の
ように、みな様の心の中に入ってきたいと願って、
尺八を吹いてます」と。

すると、私の尺八に満足されたか「ま、頑張って」と、
喜捨して行かれた。「南無妙法蓮華経」


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