現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

沈まぬ太陽 その1

2009-11-09 20:44:32 | 「沈まぬ太陽」を観て
(『沈まぬ太陽』について、11/8からの記載を、順に並べ換えました。)


山崎豊子原作の『沈まぬ太陽』が映画化され、話題となっている。

渡辺謙演じる主人公恩地元には、実在のモデルがいたとか。日本
航空元社員小倉寛太郎だそうな。

組合活動でアフリカに左遷されるという不条理。御巣鷹山墜落事故を
主題に、日本航空の腐敗した経営内部を鋭くえぐった作品として、
『週刊新潮』連載中から、私は関心をもって読んでいた。

日航としては不快極まりなく、抗議しているらしいが、山崎豊子側は
「あまでフィクション(創り話)」だと。

映画では、渡辺謙は“善玉”として描かれているが、日航の組合活動
には、批判が多いのも事実。

日本航空が経営再建を進めている中で、「5労組」が、『業務移動時の
グリーン車やファーストクラスの使用や、“通常出勤時”のハイヤーの
使用を要求していることに対して、「会社の経営状況を省みない、特権
意識丸出しの労働貴族そのもの、非常識な要求だ」との批判がある。

もう何十年も前だが、日航に就職した大学の先輩が、まだ課長にもなって
いないのに、横浜の自宅から成田まで、毎日ハイヤーで通勤していると
聞いて驚いたことがある。私の月給が10万円くらいの時だ。ハイヤーで
横浜-成田は、ウン万円はしたと思う。それが往復、毎日。それほど激務
なのだという。
日航の社員への厚遇をうらやましいと思うより、「それでいいのか?」と
危惧さえしたものだ。その先輩は40歳の働き盛りで、突然過労死した。
若い奥さんと中学生の子供を二人残して。葬儀の様子を今でも思い出す。

その日航が「沈まぬ○○」どころか、今や「沈みゆく○○」だ。会社を
潰すのは、経営者ばかりでない。社員も運命共同体なのだ。


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沈まぬ太陽 その2

2009-11-09 19:39:10 | 「沈まぬ太陽」を観て
映画『沈まぬ太陽』見てきました。3時間の超大作。
原作者の山崎豊子が、いくら「フィクションです」と
言い切っても、「日本航空」のこととして見てしまう。

見た人の思いはさまざまだろう。
「金と政治家との癒着、上層部の腐敗。私利私欲に
走り権力抗争。日航ってなんてひどい会社か」と思う
人もあれば、逆に、日航を悪者にした山崎豊子に
反感を持つ人もいるだろう。

組合のストにも賛否両論。アフリカに飛ばされ、不遇を
かこつ主人公も含めて、登場人物はみな“自業自得”
“身から出た錆び”とも読み取れる。御巣鷹山の墜落も
“整備不良という“身から出た錆び”。

最後、主人公の恩地(渡辺謙)がアフリカの大地に、
新たな気持ちで赴任していくシーンまで見て、漸く
得心する。会社からどんなに冷遇されようと、会社を
辞めない。逃げない。与えられた今に最善を尽くす。
「沈まぬ太陽」とは「恩地」のことだったのか。「大地の
恩」という意味が込められた名前だったのだ。


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沈まぬ太陽 その3

2009-11-09 18:22:02 | 「沈まぬ太陽」を観て
映画『沈まぬ太陽』を見て、千代田生命勤務時の組合活動を
思い出し、当時を回想した。

組合は「権力闘争」から「御用組合」に変わっていった。
生保労連委員長として辣腕を振るっていた堀江氏は、いきなり
役員に、書記長は人事課長になった。「職員のため」と信じて
一生懸命赤旗を振っていた仲間は飛ばされた。恐怖の嵐が
吹き荒れた。

会社は誰のためにあるのか。「会社を守る」とは何なのか、
考えさせられたものである。子会社を通じての政治家への献金。
不正経理。みんな見聞きしてきた。その結果千代田生命は
“墜落”した。日航も今や墜落寸前。この映画はタイミング良く、
そんな日航に喝を入れ、反省を促すのか。また日航離れを
誘うのか。

ところで、映画で不正の一例となった?ニューヨークの「日航
ホテル」。私も泊まったことがある。一泊4万円。超豪華だった。
ドアから長い廊下があって、3LDKのマンションより広くて、
調度品も超豪華。“日航”は“結構、最高”のホテルでした。
私も、バブルに酔った一人なのだ。


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沈まぬ太陽 その4

2009-11-09 17:56:40 | 「沈まぬ太陽」を観て
映画『沈まぬ太陽』で、笑えたのは、三浦友和演じるライバル
行天の妻(松雪泰子)。

1960年当時、スチュワーデスとして、恩地(渡辺謙)、行天
(三浦友和)とともに組合活動に参加していた。そして行天と
結婚する。その当時、行天は30代後半。それから25年。
行天は常務に昇進し、次期社長のポストを狙う。妻(松雪)も
50歳は過ぎているはずだ。ところが、常務の妻が、未だに
スチュワーデスとしてご出勤。きもちわるい。ありえない。


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沈まぬ太陽 その5

2009-11-09 16:00:26 | 「沈まぬ太陽」を観て
『沈まぬ太陽』で泣けたシーン。

テヘランからナイロビへの転勤命令が出た時、恩地の妻子は、
「もう一緒には着いて行けない」と日本に帰る。そのテヘランの
空港で、日本へ帰る妻(鈴木京香)が、二人の子どもの手を
引いて搭乗口を出ていくシーン。恩地はそのとき「声をかけた
けれど、妻は振り返らなかった。号泣する恩地(渡辺謙)。

これは作家の創作だろうと思ったら、山崎豊子がインタビューで、
次のように語っている。

 「小倉さんは『その後ろ姿を見ながら泣きました』と話して
 くださいました。私はこの場面を小説に書くとき、泣きながら
 書きました。奥様に会って、「なぜ振り返らなかったのですか」
 と聞きました。「振り返ったら崩れます」と奥様はおっしゃい
 ました。
 会社はこんなことまでしていいのでしょうか。私は、このことを
 知って、航空会社がどんなに取材を妨害したり、誹謗中傷して
 こようと、最後までこの作品を書きあげなければいけないと
 思いました」と。

私もそうだった。海外赴任ではなくとも、家族とは離れ離れだった。
「千代田生命は、家族にとって良き夫、良き父親は要らん!」と、
そこまで言われて、土日も休まず、24時間働かされてきた。
笑顔も許されなかった。自殺者も数人出た。私も、会社に泊まり
こみで、一日置きに明け方に、シャワーと着替えに帰って、朝食も
とらずにまた出勤。最後の方は、会社の近くにアパートを借りて、
家族とはずっと別居生活だったのだ。退職と同時に、妻から
「離婚届け」を突きつけられた時、「仕方ない」と判を押したのだ。

恩地(小倉氏)の妻も、きっと夫に愛想をつかして、振り返らな
かったのだと思った。しかし「振り返ったら崩れます」その言葉に、
私はまた泣けた。

小倉氏は、最後まで日航を辞めなかった。妻も別れなかった。
「逃げたらあかん」か?

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沈まぬ太陽 その6

2009-11-09 15:22:24 | 「沈まぬ太陽」を観て
映画『沈まぬ太陽』を見たおかげで、過去のことをいろいろ
思い起こさせてしまった。

組合で戦った同志の一人八木(香川照之)は、書記長だったが、
露骨な報復人事で、支店での窓際に追いやられる。そして行天
の指示で、「航空割引券」を支店から盗み出して、金券ショップ
に売りに行き、換金して 行天に渡す。これはありえない。

「割引航空券」や「株主優待券」はいくらでも 刷り増しできる。
それをプレゼントして、もらった方が金券ショップに持ち込んで
換金する。これは しかるべきポストの人が 行う。支店の倉庫から
盗み出して、金券ショップに持ち込み 換金させるということはない。
支店の監査(検査)が入ったら、「航空割引券」の在庫が合わない
ことがすぐバレる。盗み出さなくとも、会社は、堂々と「航空券」を
政治家の 資金管理団体に渡すぐらいのことはやっていたのだ。

所轄官庁のお役人やマスコミ関係者との接待ゴルフ、さらに19番
ホール(ホテル) というのも“知る人ぞ知る”。運輸省OB官僚も
ノーパンしゃぶしゃぶ接待の事実を認めている。

もうひとつ、これは他の小説でも書かれていることだから、オープン
にするが、ある大物政治家の金庫番は、画商だった。千代田生命も
本物かどうかも判らぬ マネ、モネ、シャガールといった絵を 200点も
高値で 買わされた。政治家とのつながりが、当社の転落の引き金と
なったのだ。

『沈まぬ太陽』で、大物政治家の名前が「竹丸」となっているのは
笑える。竹下と金丸のこととすぐ判る。自民党政治の下での、政治と
金の腐敗構造には、恩他(小倉氏)ならずとも、多くの国民が憤って
いたはずだ。それが、自民党の自滅を招いたのだ。『沈まぬ太陽』は
日航だけでなく、自民党政権の崩壊も招いた。恐るべし。


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沈まぬ太陽 その7

2009-11-09 09:05:41 | 「沈まぬ太陽」を観て
「御巣鷹山日航機墜落事故」後の関係者の処分について
いろいろ検索してみたが、出てこない。

遺族補償も明らかにされていない。私の記憶では、働き
盛りの男性で 6,000万くらいだったように思う。
映画では、性別、年齢、収入のオフマン係数で計算された
額に、一律 1,900万円と事務的に説明して遺族の怒りを
かうシーンがあった。

名古屋空港での中華航空墜落事故では、最初の提示額が
一律600万円だった。これが世界の相場らしい。それから
みれば日航の補償は最高。

映画『沈まぬ太陽』では、宇津井健がいい役を演じていた。
「息子夫婦と孫まで失くして、自分にはもう何も無い。
補償金なんてそんなもん要らん」と、交渉に応じず、家も
処分し、四国遍路の旅に出る。

だが、「この人は実在しない。山崎豊子の創作」と聞いて
がっかり。こういう人もいていい。私もあの立場だったら、
そうするだろう。家も処分して、一生虚無僧として旅に明け
暮れ、野垂れ死にしたい。それが夢だ。

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小倉寛太郎

2009-11-09 05:12:46 | 「沈まぬ太陽」を観て
『沈まぬ太陽』で渡辺謙が演じた主人公「恩地」のモデルと
される「小倉寛太郎」をネットで検索すると、結構出てくる。
東大の駒場祭でも講演しており、その全文が掲載されていた。

【小倉寛太郎氏の履歴】

東大法学部を出て、AIUに勤務。組合を結成して、退職金制度
などを認めさせるが、解雇となり、日航には中途採用で入社。

1960年代前半、社員の待遇改善と「空の安全」の確立を求めて
経営陣と厳しく対決し、日航初のストライキを指導。その後、
社内規定を大幅に越える約10年間の海外僻地(カラチ、テヘラン、
ナイロビ)での勤務を強いられる。

1970年代前半の日航機の連続事故が国会で取り上げられる中、
いびつな労務対策を是正する一環として、国内勤務とされる。

その時の彼自身の話では、「“カンリショク”として日本に
帰されました。“管理職”ではない“閑離職”。つまり“窓際”」
だったそうな。私も今“閑離職”だ。いい言葉だ。

1985年の日本航空123便墜落事故後、会長室部長に抜擢。
鐘紡から迎えた伊藤会長率いる新体制の下、社内改革に
力を注ぐが、さまざまな圧力で中断を余儀なくされ、
再びアフリカへ。

定年退職後は、僻地勤務が縁でアフリカ研究家、動物写真家、
随筆家として活躍。東アフリカの自然と人を愛する同好の士を
集めて「サバンナクラブ」を発足させ、事務局長を務めた。

この時、山崎豊子がアフリカを訪れ、観光案内役を務めた。
そして問わずがたりに、日航在職中の話をしたことで、
『沈まぬ太陽』が生まれたそうだ。

2002年10月、肺癌で死去。

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日航の体質

2009-11-09 05:08:10 | 「沈まぬ太陽」を観て
日本航空が、『沈まぬ太陽』を社内報で取り上げ、
「企業として信頼を損なうばかりか、お客様離れを
誘発しかねない」と批判。

社内報は映画公開直前の10/21付。「心をひとつに
立ち向かおう 風評・批判に惑わず」と大見出し。
 
映画で描かれている社内の報復人事や役員の不正経理、
政治家・旧運輸省幹部らへの利益供与や贈賄について
「こんな不正があるわけがない」と断言。そして日航や
役員個人のイメージを傷つける」として、「しかるべき
措置を講じることも検討している」と法的手段も辞さない
姿勢を見せている。

今や墜落寸前、迷走している日航だが、『沈まぬ太陽』で
描かれた体質は、20年経っても全然変わってないようだ。
真摯な反省もない。とラジオでもコメンテーターが言って
いたっけ。

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