ケイの読書日記

個人が書く書評

角田光代「しあわせのねだん」

2010-04-14 11:13:28 | 角田光代
 「私たちはお金を使うことで品物といっしょに、何かべつのものも確実に手に入れている。大事なのは品物より、そっちのほうかもしれない」という持論を持つ角田さんの買い物とお金に関するエッセイ。

 たいした事は書いてないが、角田さんは本当に上手いなぁと思う。今まで私が読んだ彼女の小説やエッセイの中で「読んで時間を損した」という作品は無い。
 当たりハズレが無く、皆水準以上の作品ばかり。これも直木賞を取った後で、すごく忙しくなって仕事の密度が薄くなるはずだが、しっかり読ませる。


 ところで、角田さんはモテるんだという事をはじめて知った。
友達が…とエッセイ内で書かれているので同性かと思いフンフン読んでいると、異性。そんな事が何度もある。
 このエッセイを書いたのは、彼女が30才後半だろうが、その年代で男友達がたくさんいる人って、そんなに多くないと思う。

 過去の恋愛体験も豊富。よくもまぁ、こんなに次々と相手が現われるもんだとも思う。
 そういえば同業者との事実婚を解消して、なんとかいうバンドのミュージシャンと結婚した、と少し前新聞に載ってたね。
 ほっそりして神経質そうな、芸術家タイプの人が好みらしい。

 角田さんは、小柄で華奢な体型、童顔でおめめパッチリ!しかも料理が得意。モテる要素は揃っている。その上、もともと恋愛体質の人なんだろうね。
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角田光代「幸福な遊戯」

2009-09-01 15:10:54 | 角田光代
 表題作「幸福な遊戯」は、角田光代のデビュー作らしい。しかし、私はどちらかと言うと表題作よりも「無愁天使」の方が印象深い。

 母親が死に、多額の保険金を手にした一家(父親、長女、次女)が、買い物依存症→片付けられない症候群に陥り、家庭が崩壊していく様を描いている。

 父は会社をやめ、バカ騒ぎの果て、長期の旅行に出る。妹は同棲相手のマンションに転がり込み、カードを使って買い物をしまくっている。

 ただ一人、家に残った姉は、物で一杯で足の踏み場が無い家からデパートへ出掛けては買い物をし、ますます家の中を物で一杯にしている。

 一時、買い物依存症に陥った中村うさぎがエッセイの中で書いていたが、ブランド品のバ-ゲン会場に行くと、クスリをやっている訳でもないのに、物すごくハイな気分・高揚した気持になるんだって。
 すべての商品が、自分に向かって「買って、買って」とウインクしている様に見えるらしい。 
 この小説の主人公もそう。デパートの中の色んな色彩が自分を呼んでいるんだそうだ。

 買い物依存症の人は、買うという行為に発情するのであって、買った商品に対して、愛情は抱かない。箱から、袋から取り出しもせず、昨日買った商品の上に、それらを放り投げる。

 この長女は、にっちもさっちも行かなくなり、その物が溢れかえって床や廊下が見えない乱雑な家から脱出し、アパートを借りる事にする。

 そんな金があるんだったら業者に頼め!! まずリサイクル業者に来てもらってブランド品を買い取ってもらい、次にハウスクリーニング業者を呼ぶのだヨ!
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角田光代「人生ベストテン」

2009-06-18 11:01:54 | 角田光代
 私の中の『角田光代ブーム』が終わらない。ついつい読んでしまう。

 中短篇6作品が収められている。みな良いが、その中で表題作の「人生ベストテン」が一番印象に残った。

 もうすぐ40歳という仕事熱心な独身女性が主人公。同窓会の幹事に初恋の人の名前を見つけ、気合を入れて(服も靴もかばんもみな新調)出かけるが…そこからが、よくある不倫ものにならないのが角田光代らしい。

 私が興味を持ったのはそんなストーリーではなく、彼女のちょっとした習慣。彼女は寝付けない夜はベッドの中で薄い水割りを飲みながら、自分の人生のイベントベストテンを考えるのだ。
 この場合、ベストだけでなくワーストも入っているから、自分史の重大事件10という事だろう。
 彼女のそれらは、すべて18歳までに集約されているのだ。という事は残りの22年は何やってた?

 主人公本人は「まったく驚きを通り越して恐怖すら感じてしまう」と言っているが、そんなもんだろうか?
 現在の彼女の職場は大変居心地がよく、仲の良い同僚4人とランチやアフターファイブに食べ歩き、女子高生のノリなのだ。

 私も彼女にならって自分の中の人生ベストテンを考えてみる。でも…これからも生きるつもりなので、なかなか真剣にならない。しかし第1位は今後も不動だと思う。えっ?何かって?それは『出産』です。
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角田光代「あしたはうんと遠くにいこう」

2009-06-13 11:05:25 | 角田光代
 帯には

   今度こそ幸せになりたい。
   ある女の子のせつない恋愛生活15年を描く
   角田光代のはじめての恋愛小説。

 と書かれてあるが、江國香織のような恋愛小説を期待したらまったくのハズレ。
当たり前だよね。だって角田光代だもの。

 高校3年生(1985年)から32歳(2000年)までの、ある女性の恋愛遍歴を書いている。オトコはつぎつぎ代わりオトコの質もどんどん低下していく。あんた、シノザキさんなんて、どっから見てもストーカー予備軍だよ。早く逃げるんだって!と作中の女の子に怒鳴ってやりたくなる。

 とにかく疲れる。読み終えてグッタリ。しっかしこの女の人もなぁ。子どもは要らないとはっきり決めているなら、どうしてオトコと暮らしたがるのかなぁ。外で会えばいいのに。
 一緒に暮らすということは、余分な荷物を背負い込むのと同じ。なまじっか人間なだけに一方的に放り出す訳にもいかなくなっちゃうよ。

 オトコがいなくなって、空間にポッカリ穴が空いて寂しいなら、ピカチュウの縫いぐるみでも置いとけ!! ハム太郎でもいいぞ!

 まだ誰とも付き合ったことが無い人でも、読み終えれば、オトコはもうコリゴリと思わせる一冊。
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角田光代「トリップ」

2009-06-03 10:23:49 | 角田光代
 東京近郊の私鉄沿線。南口改札を抜けると、何の変哲もない地方の町が広がっている。ロータリーをまるく縁取るように数軒の店が並び、バス停にはバスが停まっている。
 南にのびる道を歩いていくと次第に店はまばらになり、かわって住宅が混じってくる。小さな橋を渡り向こう側に行けば、そこからは住宅街が広がっていて…。

 そのありふれた町の普通の人々のちょっとズレた日常。

 その中に、30歳代の半ば過ぎでずーっと自分探しをしている女の人がいる。
 ニュースキャスターを目指してアルバイトしていたが、自分のなりたいのはジャズシンガーだったと目覚め単身NYへ飛んだ。
 3ヶ月で日本に帰ってきて自分の表現方法はカメラしかないと商店街で個展を開く。本当にやりたかったのは声優だったと気付き、声優養成学校に入り深夜ラジオのパーソナリティを数ヶ月やったが仕事が途切れる。
 ダンススクールに通い、ストリートダンスの発表会に1度出演し、平行してフラワーアレンジメントを習い、講師をやるんだろうと思っていたら、酒屋の息子に嫁いで行った。
 そして今、店番しながら小説を書こうとしている。

 わかるなぁ…。こういう節操もなく焦る気持ち。「私はまだ何者にもなっていない」「何者かになれるはずだ、いや、ならなければならない」と自分を延々と探し続けている。

 でも上野千鶴子も書いている。「自分というのは他人との関係の中にしかないのだから、探しても見つからないのは当たり前」ってね。
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