ケイの読書日記

個人が書く書評

絶対に「つぶあん」

2015-11-09 09:23:19 | Weblog
 当り前じゃないですか! つぶあんの方がおいしい! 世の中の人がみんなそうだと思っていたら、この前、姪が「こしあん派」なのを発見。つぶあんだと食べられないんだそうです。
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法月綸太郎「しらみつぶしの時計」

2015-11-08 09:12:54 | Weblog
 表題作の「しらみつぶしの時計」は、なかなかの力作。
 外界からシャットアウトされている施設の中にいる主人公が、1分ずつ時刻のずれている1440個の時計から、唯一の正確な時間を表す時計を、論理的な思考で選び出すゲーム。本当に力作だと思うが、読んでいて楽しい話ではない。
 でも、パズルが好きな人にとっては、こたえられない作品かも。
 しかしまあ、デジタル時計とランドルト環(視力検査に使われる「C」のマーク)をながめながら、こんな話を思いつくとは…ミステリ作家も本当に大変な職業だと思います。

 「使用中」は、以前、何かのアンソロジーで読んだことがある。その時も、印象が強かった。正当な密室モノじゃなくて変則物。
 犯人が犯行後、ミスに気が付き現場に戻るが、どういう訳か密室になっている。つまり、外から開かない。自分が犯人だと分かる遺留物を取り返そうと、なんとかして開けようとするが…。下ネタも入っていて、結構、笑える。面白い。

 一番の変わり種は「猫の巡礼」。富士山のふもとに猫の聖地があり、野良猫はもちろん、飼い猫も、一度は行った方が良いという。もちろん架空の話だが、妙に納得する場面も。イスラム教徒にとってのメッカ。日本人にとっての、お伊勢参りみたいなものか。

 現在は、室内飼いが常識になってしまったが、私の子供の頃(昭和40年代ごろ)猫は自由に外に遊びに行って、ご飯の時や寝るときだけ帰ってきた。発情期の時なんか、ヘンな声でにゃごにゃご鳴いて、3、4日帰って来ないことなんかザラ。
 それだけ自然に近かったんだ。
 今よりもうんと、猫の寿命は短かったが、死期が近づくと、猫ってどこかに行ってしまう。
 アフリカの象には、象の死に場所があると聞いたことがあるが、猫にもそういう場所があったんだろうか? 子供の頃、実家で飼っていた猫ちゃんたちも、交通事故で死んだ猫以外は、いつのまにかいなくなっていた。
 今は、室内飼いがほとんどなので、室内で死ぬだろうけど。

 犬と比べると、やはり猫のほうが神秘的な部分が多いと思う。犬は、あまりにも人間に手を加えられすぎてるね。
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水木しげる「のんのんばあとオレ」

2015-11-03 09:55:33 | Weblog
 水木しげるは1922年(大正11年)生まれ。ということは、私の父の4歳年上になるわけだ。
 この本には、山陰の境港で生まれ、ガキ大将として暴れまくっていた「ゲゲル」の幼少年時代が、いきいきと書かれている。むしろ、のんのんばあとの思い出よりも、このガキ大将帝国の攻防のほうがメイン。
 ちっちゃな頃、しげる氏は、自分のことを「シゲル」と発音できず「ゲゲル」と言ったので、周りから「ゲゲ」と呼ばれていたとか。わーーー!可愛らしいエピソードです。

 ゲゲが生まれた頃、つまり大正から昭和初期にかけての境港のあたりでは、神仏に仕える人のことを「のんのんさん」と言っていた。その人がお婆さんなら「のんのんばあ」。その「のんのんばあ」が、ゲゲの子供の頃いつもゲゲの家に来ていた。昔、ゲゲの家の女中さんをしていたらしい。
 NHK朝のドラマ『ゲゲゲの女房』を見ていた人なら分かると思うけど、ゲゲの生家って、裕福だったんだよね。お祖父さんの代まで境港で廻船問屋をやっていたし、お父さんは、明治時代に東京の大学に行って、帰郷して銀行に勤めていた。
 こらえ性のない人で、転職を繰り返し、だんだん財産を無くしていったけど。

 のんのんばあは、その頃は拝み屋みたいなことをしていたが、お客さんはさっぱり来ず、ダンナにも死に別れ、養子にもらった子供もハシカで死んだ。経済的に窮乏しているらしく、子守をしながら、こっそり雇い主の米櫃の米を失敬することもあったらしい。
 そののんのんばあは、ゲゲをとても可愛がり、お化けや妖怪などの話をたくさんしてくれて、ゲゲはすっかりその世界に浸ってしまった。

 もともと目に見えない世界を信じる傾向が強かった人なんだろうね。
 ゲゲの学校近くにある樹齢何百年という古い大木の下に、壊れたお雛様がよく捨ててあったそうだ。死体のように見えたという。
 そのお雛様が、見えなくなった。その古い大木を通じて、どこか別の世界に行くのだろうと、信じていたそうだ。
 ちょっとロマンチックな話だね。こういう人は、お雛様を誰かが拾っていった、とか、燃やしたとか、考えないんだよね。


 しかし、ゲゲが小学校5年の時、のんのんばぁが死ぬ。ばあは、結核患者の看病をして収入を得ていたが、自分にうつってしまったのだ。高齢だし、貧乏でロクに物を食べていないので体が弱っていたのだろう。
 悲劇だが、水木しげるが書いているように、戦前の日本海側の一寒村の片隅で生活していた人たちの、平均的な姿なんだろう。

 でも、この困窮のうちに死んだのんのんばあが、後の鬼太郎を生み出したともいえる。それを思えば、素晴らしい一生だった。
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パトリック・ジュースキント 池内紀「香水 ある人殺しの物語」

2015-10-29 09:18:44 | Weblog
 ルノワールの絵のような、素敵な表紙だったので、手に取って中をパラパラ見ていたら…どうやら、1738年フランスに生まれたグルヌイユという香水調合師の話らしい。こりゃ、面白そうだ。1789年がフランス革命の年だから、きっとこのグルヌイユという男は、自分の優れた嗅覚という才能を使って、貴族たちに取り入り、フランス宮廷の影で暗躍する話ではないか?と勝手に期待に胸を膨らませて読んだが…まったくの空振り、がっかりした。
 ルイ14世とかポンパドール夫人といった固有名詞は出てきたが、ただそれだけ。

 グルヌイユは、香水調合師としての修業時代はパリに住んだが、その後フランス南部に行き、そこで大量殺人を引き起こす。
 ふくらみかけた蕾ような年頃の美少女ばかりを狙って殺害し、その匂いをコレクションする。

 このグルヌイユの鼻は、本当にすごい! 犬並み! なにせ、子供のころ、養い親が隠したお金を、匂いで探し当てたのだ。金属って匂いがあるんだね。
 成長するにつけ、香水調合師の修業の成果もあったろうが、その天才的な嗅覚はどんどん研ぎ澄まされ、ついには、匂いで人を支配できるようになる。
 例えば、自分の娘をグルヌイユに殺され、彼を八つ裂きにしてやると憎みぬいている父親に、グルヌイユが調合した香料を嗅がせると…「赦しておくれ、息子よ、愛しの息子よ、この私を赦しておくれ」と涙を流し、グルヌイユを抱きしめるのだ。

 でも、そういった嗅覚で人を意のままに操るのは一時的で、すぐに匂いに人は慣れてしまうし、匂いも消えてしまう、あるいは変化する。


 確かに、匂いは大事なものだ。現代日本では、体臭というものは忌み嫌われるが、妙に人を引き付ける体臭だってある。楊貴妃は、豊満な肉体で陰毛は床に届くほど長かったとか。つまり、体臭は強かったと思われるが、その女の匂いで玄宗皇帝をノックアウトしたのだろう。

 そういえば、有栖川有栖の『双頭の悪魔』にも、調香師が登場する。そして、香りが大きなカギとなる。香りで、こんなこともできるんだと驚いた。興味のある方は、どうぞ、読んでみて。
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法月綸太郎 「二の悲劇」

2015-10-24 09:57:30 | Weblog
 法月綸太郎は大好きな作家だが…これはイマイチ。この人、寡作だから作品数が少なくても高品質で、ハズレを読んだことないけど、これはハズレだと思う。
 『一の悲劇』っていう作品もあって以前読んだが、そっちの方は面白かった。

 初出が1994年らしいが、作者は極度のスランプに陥って、作家生命が危ぶまれるほどだったと、自分であとがきに書いてある。
 そう、そんな感じ。苦し紛れに書いているって。

 若い女性編集者が、京都の繁華街で、初恋の人を見かけ、声をかける場面から、この物語は始まる。大通りを挟んだ、こちらと向こうで、高校卒業後6年間会わなかった初恋の人を見つけることってできるだろうか? 一方的な片思いで、一度も話したことないのに。
 そのあと、この若い女性編集者の日記が載っているんだが、これがツマラナイ。もう、読むのを止めようかと思ったが、いや、後半に再び、法月警視が登場するかも…と期待して読み続けた。

 そう! 前半は、綸太郎の父親の法月警視の登場機会が多く、私はご機嫌だったのだ!
 エラリー・クイン物でも、私はエラリーよりもお父さんのリチャードのほうが好きだな。(枯れ専?)そういう人って多いと思うよ。考えるに、法月警視の方が、女性の影がチラつかないので安心して読めるのだ。
 綸太郎の方は、若いから仕方ないとしても、この作品では、容子というすれっからしと仲良くなって、一緒にギョーザを作ってる。ムカつくなぁ!
 そういえば、初期の短編集に、図書館司書のカノジョがいたけど、あの子はどうしたの? 名前、なんていったっけ? 清楚なかわいこちゃんだったと思う。

 とにかく、本格推理の名探偵のくせに、女とイチャイチャするな!!! 名探偵は女嫌い、それはもう、ホームズの時代からのお約束です! ハードボイルドは別だよ。


 勘違いやら、思い込みやら、訂正できない臆病さが、複雑に絡み合って、こういった悲劇を生んだのだろうが、どうも作者の法月綸太郎は、女性心理に疎いと思う。女って、こんな行動とらないよ。
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