ケイの読書日記

個人が書く書評

泡坂妻夫「亜愛一郎の狼狽」

2011-02-12 18:58:50 | Weblog
 先日読んだ「DL2号機事件」が、とっても風変わりで印象的だったので、このシリーズを続けて読んでみたいと思っていた。予想以上。秀作揃いのバリバリの本格モノ、8編が収められている。

 みな面白いが、私は「掌上の黄金仮面」と「ホロボの神」が特にいいと思う。
 ファンタジックというか寓話的な雰囲気が(解説にも書かれているが)ブラウン神父シリーズに似ている。

 名探偵・亜愛一郎(あ あいいちろう)は、背が高く端正な顔立ちの青年で服装もパリッとしている。雲や虫、化石など、あまりお金になりそうも無いものを撮るカメラマンだ。
 見た目はいいが運動神経はまるでダメという彼が、抜群の推理能力を発揮して何事件を次々解決していく。
 しかし、事件解決の糸口が頭にひらめくと、亜は目を白目にして固まってしまうし、登場人物の名前はヘンテコな当て字で読みにくいし、「三角形の顔をした洋装の老婦人」がストーリーには関係なくいつも出てくるし…。

 読んでもらえば分かるが、不思議な読後感。

 名探偵・亜愛一郎の内面の感情も全く書かれておらず、彼に感情移入をしようとしても出来ない。
 そもそも、そういったタイプの作品ではない。推理パズルとして読めば一級の作品集。
コメント (4)
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