ケイの読書日記

個人が書く書評

津村記久子「サイガサマのウィッカーマン」

2015-03-21 10:19:55 | 津村記久子
 サイガサマという固有名詞は、たしか遠野物語にあったような記憶があるので、東北地方の土着の神様の話だろうと思って読んでいたら…どうも関西の話らしい。

 とっても変わった神様で、人々の願い事をかなえる代わり、その人の身体の一部を取ってしまうという。だから、お願いする人は、心臓とか脳とか、絶対に取ってもらっては困る物をサイガサマに申告するため、そのパーツの模型を作って、大きな人形の中に入れ、その人形を冬至の日の祭りで燃やすのだ。

 折り紙で心臓らしきものを作って、簡単に済ませる人もいるが、時間とお金と労力をつかって美術品みたいな物を作る人もいるらしい。
 へーーー!すごいなぁ!と感心したが、そこで気が付いた。これって架空の祭りだよね?
 だって、こんなユニークなお祭りが大阪の方であるなら、絶対TVか新聞で取り上げられるだろうけど、私、いままでそんなニュース、見た事ない。

 
 シゲルという、ニキビに悩んでいる高校2年の男子生徒が主人公。彼の家はゴタついている。
 父親は不倫中で、あまり家に寄りつかないし、弟は学校に行かないで、サイガサマの祭りで燃やす申告物のパーツばかり作っている。母親は、家庭内の不和におろおろするばかりだし、シゲルはそういった揉め事から目をそらし、せっせとバイトしお金を貯めようとしている。
 
 そういえば、津村記久子の書く小説って、仲のいい家族ってホント出てこないよね。かといって、空中分解してバラバラになる所まで行かない、その一歩手前で踏みとどまっている家族というか…。割合で言えば、そういった家族が一番多いんだろう。

 弟は、家族が再び以前のように仲良くなる事を願ってサイガサマにお祈りするし、シゲルは気になる女の子のために、サイガサマに願い事をする。
 さて、その願いはかなうのでしょか? そして、サイガサマはシゲルの身体の何を奪うのでしょう? 興味のある人は読んでみて。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする