ケイの読書日記

個人が書く書評

津村記久子「バイアブランカの地層と少女」

2015-03-26 10:24:08 | 津村記久子
 バイアブランカは、アルゼンチンの一地方の名前らしい。どっから、その地名を引っ張ってきたのか、よく分からないが(津村記久子の小説では、よくある)「母をたずねて三千里」のマルコが行こうとしていたのがバイアブランカだという。へーーーー。


 作朗という京都の大学生が、インターネットの京都観光に興味がある外国人のためのコミュニティサイトを覗くようになり、そこでファナJuanaというバイアブランカ在住の女の子と知りあう。
 ファナは、三島由紀夫がとても好きで、三島を研究するために日本の大学に交換留学生としていく予定があるらしい。
 地球儀を見れば、日本の真裏に住むアルゼンチンの女の子が、京都が好きで、金閣寺が好きで、三島由紀夫が大好きでいてくれるのだ。ああ、世界は本当につながっているんだな、とつくづく思う。


 そのファナの恋人は、サッカー選手らしい。彼がケガで大変な時、作朗はメル友ファナの恋人の回復を願い、女の子とのデートをすっぽかし、清涼寺の法輪(ハンドルのついた大きな櫓のようなもの。中に経典が収められている。1回廻したら、お経をすべて読んだのと同じ功徳があるという。昔は文字が読めなかった人が多かったから、こういった物を作ったんだろう)を、ぐるぐるまわすのだ。ぐるぐるぐるぐる「ファナの彼氏のケガが治りますように」と叫びながら。


 どうして、私が津村記久子の小説を好むかと考えてみた。
 石原慎太郎が、彼女の『ポトスライムの舟』を、いささか退屈と評したらしいが、私は全然退屈とは思わない。すごく面白い。
 確かに書いてある事は、大した事件が起こらない平凡な日常だけど、ゆるーーーいユーモアがあって、声を出して笑う事もしばしば。初期の作品は、どんより暗い作品もあったが、最近はその可笑しみが、どんどん増していると思う。

 こういったほのかな可笑しさは、私が敬愛する岸本葉子さんのエッセイと通じるものがある。だから私は、津村記久子の小説が好きなのか。納得。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする