ケイの読書日記

個人が書く書評

伊坂幸太郎 「死神の精度」

2016-12-15 09:58:19 | 伊坂幸太郎
 驚くべきことに、これが私の初・伊坂幸太郎作品。評判良いので、読みたいなぁとずっと思っていたが、どういう訳か未読だった。
 読み始めると…これがすごく面白い! 実家に行く地下鉄の中で読み始めたが、あまりに面白いので、行きについつい2駅、帰りに1駅乗り過ごした。本当の話です。

 6話の連作短編集。当然ながら、すべてに死神が出てくる。意外だが、死神は自殺や病死は管轄外らしい。事故死とか犯罪で死ぬのを担当しているようだ。これにはビックリ! 自殺は死神のせいだと思っていたのに。
 死神は、死神の上部組織から調査を依頼され、一週間前にターゲットに接触。2,3度話を聞き「可」もしくは「見送り」の報告をする。
 ターゲットがどういう経過で選ばれるのか、全くわからない。そもそも、何を基準に「可」or「見送り」を決めるのかも分からない。ほとんど「可」らしい。たまに、ターゲットの歌声を聴きたいという理由で、今回は「見送り」とする事もある。

 また、死神たちは皆、無類の音楽好きで、よくCDショップの視聴コーナーに入り浸っている。本作の主人公の死神など「人間の作ったもので一番素晴らしいのはミュージックで、もっとも醜いのは、渋滞だ」という。音楽のジャンルは何でもいいらしい。

 このちょっとズレてる死神のキャラの魅力だけでなく、物語構成も本当に見事。一編一編のプロットに仕掛けがあって、ターゲットの謎にひきこまれる。それぞれの謎は最後に解き明かされてスッキリするが、第5作品「旅路で死神」では、その謎が解けてない。だからフラストレーション。作者の提示した色々な解答は、すべて違っているような気がするな。

 そうそう、作中に出てくる若い女の子(ターゲットではない)のセリフ「人間の作ったもので最悪なのは、戦争と除外品だ」には、思わず同意した!! 素敵だなぁと思っている服屋があって、バーゲンのはがきが来たので、いそいそと出掛け、30~50%オフか、これなら買えそうだと、あれこれ選び、これに決めた!とレジに持って行くと「これはセール除外品ですが、よろしいですか?」と店員さんが無情の宣告。がーーーーん! 早く言ってよ!
コメント
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