ケイの読書日記

個人が書く書評

道尾秀介 「鬼の跫音(あしおと)」

2017-05-21 17:46:39 | 道尾秀介
 道尾秀介さん、TVのバラエティクイズ番組のレギュラー解答者やってるんだ。ふーん、売れっ子ミステリ作家としての容姿を期待していたが…人気のない塾講師のような風貌。1975年生まれというから40歳を過ぎた頃ですか。

 
 初出は野生時代に掲載された中編6編を収録。その中で『悪意の顔』が印象に残っている。

 僕のクラスメートS。僕たちは今、小学4年生だが、Sは1年の頃から、皆に嫌われていた。もともと口数が少なく、話しかけても乗って来ないSは、避けられていた。ただ、男子にありがちな、叩いたり蹴ったりという身体的ないじめはなかった。
 このSという子は、道尾作品の重要なモチーフとして繰り返し登場する。『向日葵の咲かない夏』にも出てきた。
 
 Sのお母さんが死んだ時、僕はSが可哀想だと思った。自分もお父さんが死んでいなかったから。他のクラスメートがSに何の言葉も掛けなかったのに、僕はSに声をかけた。「僕も、お父さんがいないからわかるよ」
 翌日から、僕に対するSの攻撃が始まった。
 それが陰湿なんだ。それだけじゃない。暴力的なんだ。イスに瞬間接着剤を塗り僕が座るのを待つ。はがすのに手間取っている僕を押し倒して、皮膚をはがし激痛に悲鳴をあげさせる。
 こういう事ってあるよね。自分は純粋な善意でやったのに、相手の悪意のスイッチを入れてしまう事が。

 一度、担任の先生にSからの仕打ちを相談したら、その夜、バッタとカマキリとカナブンが足がもがれた状態で郵便受けに投げ込まれた。僕はSが恐ろしい。

 そんな時、僕は学校からの帰り道、知らない女の人から声を掛けられる。「うちに来れば…助けてあげる」

 この先に興味がある人は読んでください。ダークファンタジーっぽい作品。
コメント
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