ケイの読書日記

個人が書く書評

桐生操 「美しき殺人鬼の本」 角川ホラー文庫

2017-12-21 14:23:10 | その他
 ブックオフをぶらぶら歩いていたら、目についたのがこの本。日本の話じゃなくて欧米の(主に中世ヨーロッパ)殺人鬼の話だから、読みやすかった。さすがに日本の話だと、怖くて怖気づくと思う。

 イワン雷帝とか、カトリーヌ・ド・メディチ、切り裂きジャック、則天武后、チカチーロなどなど、殺人鬼界のオールスターが勢ぞろい。本の後ろに主要資料が載っているが、個々の話はどうも信憑性が薄いような…。まあいい。ホラー読み物として読めばいいのだ。


 毒殺と言うと、男に比べ非力な女が用いる殺害方法と思われるが、結構、男も利用しているんだ! それに、毒殺は中国の伝統的な方法だろうと思っていたが、古代ローマや中世ヨーロッパまで、幅広く使われている。
 そうだよね。首が胴からちょん切られていたら病死とは言いにくい。でも毒殺だったら病気で死んだと言いやすい。衛生状態も悪いし伝染病もはびこってる。病気で死ぬ人の割合は、今よりうんと高かっただろう。
 高貴な女性が他国へお嫁入するとき、毒薬の専門家が一緒について行ったんだって。政敵を毒殺したり、毒を盛られた時、解毒させるために。

 そんなちまちました毒殺じゃなく、豪快な大量殺人が、カトリーヌ・ド・メディチの起こした聖バルテルミー大虐殺。これは、絵画の題材にもなってるから知ってるが、すざましい。宗教が絡むと、人間はここまで残虐になれるのか。

 1572年8月23日、カトリーヌ派(カトリック)が、新教徒の貴族達を襲い、それが市民にも伝播して、パリのカトリック教徒らは武器を取って新教徒の殺りくに参加した。3日3晩の間、パリの市門が閉ざされ、殺人や略奪がほしいままにされた。
 この大虐殺の挿絵が載っているが…描いた人は眠れなくなったんじゃないだろうか? 本当に怖い。
 それにしても、これだけの大量の死体(2万人~10万人)をいったいどうしたんだろう? この時代、火葬はありえないし、土葬では間に合わないでしょ。夏だからものすごい悪臭の中、野良犬が死体をむさぼっていたのかな? ひょっとしたら、異端の神を信じた輩という事で、燃やしたんだろうか?

 フランス人って怖いよね。フランス革命後半の恐怖政治の時も、人間をギロチンにかけるのは、豚を豚肉にするより簡単だった。イギリスも清教徒革命とか、色々あったけどもっと理性的だったような気がする。
 アングロ・サクソンとラテンの違いなんだろうか?
コメント
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