ケイの読書日記

個人が書く書評

伊坂幸太郎 「重力ピエロ」

2018-05-04 15:02:15 | 伊坂幸太郎
 仙台市内で頻発するショボい連続放火と、その火事を予見するような謎のグラフィティアート(壁のスプレー落書き)。
 そのグラフィティアートと遺伝子の奇妙なリンクに気付いた泉水は、弟の春とガンで入院中の父と一緒に、犯人を推理しようとする。(優しくて美しかった母親は数年前に亡くなっている)

 実はこの一家には秘密があった。いや、秘密でも何でもないか、読み始めて9ページ目に書いてあるもの。兄の泉水と弟の春は、半分しか血がつながっていない。父親が違うのだ。弟は、母がレイプされたことで生まれた。普通、こういう時は中絶をすると思うけど、この夫婦は産んで育てることを決断した。まぁ、宗教的な立場で、どうしても中絶できない人はいる。(ちなみに、この家族はカソリックではない)
 この事実は、春が高校生になってから本人に告げられ、大変ショックだったろう。しかし、うすうす泉水も春も気づいていた。そうだろうなぁ、隠し通せるわけないよ。
 でもレイプ犯は、未成年という事もあり、法律に守られ、名前もすっかり変えて再登場してきた。
 
 こういった痛ましい過去はあるけど、この一家は本当に仲が良いんだ。そして魅力的。
 特に弟の春は、アスペルガーだと思われるが、容姿もよく(お母さんが美人だった)IQも高く、女の子に冷たいので、逆に女の子から追いかけられる。どんな美女にも醜女にも平等に冷たいので人気があるのだ。ストーカー化する女の子も出てくる。彼は自身をピカソの生まれ変わりと信じ、尊敬する人は非暴力を貫いたガンジー。(でも春は結構暴力的)

 ストーリーも面白いが、どちらかと言えば、キャラで読ませる作品。それから、春が語る色んな蘊蓄が面白い。


 そうそう、個人的に胸がキュンとする場面があった。小説内で、春が小学校5年生の時、春の描いた絵が県のコンクールで大賞に選ばれた。家族は春の芸術的才能に気が付き、喜んで、週末には家族そろって展示会場に出向いた。会場の真ん中に堂々と飾られていた春の絵の場面。
 その場面を読んだとき、次男の事を思い出したなぁ。
 次男が保育園児だった時、県下の仏教系保育園の絵画コンクールで最優秀賞をもらったのだ。家族一同びっくり!!!
 親として嬉しくて誇らしかったなぁ。ひょっとして、この子は絵の才能があるのかも!?と絵を習わせようとしてみたり(本人が嫌がったので辞めたが)後にも先にも、その1回だけです。素敵な思い出です。
コメント (4)
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