ケイの読書日記

個人が書く書評

上野友愛・岡本麻美共著 「かわいい絵巻」 ㈱東京美術

2018-05-15 13:11:24 | その他
 今回も前回と同じ ㈱東京美術の本です。8世紀から江戸時代までの、日本のかわいい絵巻が紹介されている。
 宗教的なものも多い。たとえば、お釈迦様の前世と現世を説いた8世紀の『絵因果経』とか、空海の伝記絵巻『弘法大師行状絵巻』とか。これらを使って、信仰を広めていったんだろうね。

 すごく有名な『鳥獣人物戯画』は、じっくり見るとホント楽しい。ピーター・ラビットの作者も、この絵を見た事あったんだろうか? ウサギ、カエル、猿の水遊び。猫、ウサギ、狐、猿、ネズミがカエルの大道芸を見物してるとこなんか、しみじみ可愛い。特に、烏帽子をかぶった猫殿が男前!!

 そうそう、男前といえば、絵巻に描かれている平安貴族の男は、皆「引き目」だと思ってたけど、16世紀の『しぐれ絵巻』の主人公は、バッチリクッキリ二重まぶたに描かれてある。驚きました! そして、この絵巻を描いたのはなんと!室町後期の女性らしい。これにもビックリ!

 水木しげるが喜びそうな『付喪神絵巻』(16世紀)なんてのもある。付喪神(つくもがみ)とは、古道具の化け物の事。年末の大掃除で捨てられた古道具たちは、長年の奉公が報われなかったと、持ち主へ復讐を企てる。その時の絵…古文先生を囲み妖怪になる術を教わっている…それが、本当にカワイイ。先日亡くなった加古里子の『だるまちゃんと天狗ちゃん』シリーズを思い出すなぁ。

 他には、ちょっとHで、子どもには見せたくない絵巻もある。『おようの尼絵巻』。一人寂しく暮らす年老いたお坊さんの家に、おようの尼と呼ばれる御用聞きのおばあさんが訪れ、身の回りの世話をする若い女を紹介しようと申し出る。そして夜になったら灯を消して待つよう念を押す。やがて女が現れ、お坊さんは大喜びで一夜を共にしたが、朝起きると横にいた女は、おようの尼、その人だった。
 いくら闇夜でも、分からないのかな? 分からないなら婆さんでもOKじゃん。

 そして最後に大爆笑の絵巻のご案内。
 14~15世紀に描かれたと思われる『掃墨物語絵巻』。ある日、お坊さんが若い娘のもとを訪れた。突然の訪問に慌てた娘は、白粉と眉墨をまちがえお化粧してしまう。真っ黒な娘の顔を見てお坊さんは驚き逃げ出す。自分の間違いに気づいた娘は、ひどく落ち込みついに出家した。
 この絵巻で、母親が鏡を見せ、娘が自分の真っ黒い顔に仰天するのだが、お母さん、どういう訳かニコニコ笑ってる。これ、ますます娘さん、落ち込んじゃうね。
コメント
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