ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖 「狩人の悪夢」  角川書店

2018-08-08 13:09:08 | 有栖川有栖
 人気ホラー作家・白布施と対談したミステリ作家の有栖川は、彼に誘われ、京都にある彼の家『夢守荘』を訪問する。その家には「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があり、その部屋にアリスが泊まった翌日、『夢守荘』のそばの『獏ハウス』で、右手首がない女性の変死体が発見される。
 『獏ハウス』というのは、以前、白布施のアシスタント・渡瀬が住んでいて、2年前、彼は心筋梗塞で亡くなったのだ。殺された女性は、渡瀬の親しい友人で、何か探し物をするために『獏ハウス』へ来たらしい。
 彼女は何を探していたのか? 果たしてそれが殺人の原因になっているのか? そもそも犯人はなぜ右手首を切り落とした?

 夜に落雷があって、大木が倒れ、通行止めになってしまったので、一種のクローズドサークル。もともと登場人物が少ない事もあり、犯人の見当はすぐつくが、どういった経緯でこうなるのか、それを推理するのが面白い。

 最初から、臨床犯罪学者・火村のフィールドワークの話でもちきりなので、ひょっとすると犯人は、犯罪を犯して火村を引っ張り出し、それを観察するのが目的なのかしら?とも思ったが、そうではないみたい。
 相変わらず火村は理屈っぽく、タバコが手放せない。ぼろぼろのベンツに乗っている。修理費用だってバカにならないだろうに。国産の新車に乗れ!!!


 小説内で、手首が切り取られ無くなっている事について、アリスが蘊蓄をたれている。ハンド・オブ・グローリー(栄光の手)。絞首刑になった罪人の手首を加工して燭台にする。家の前で、それに火を灯したら、その家の人は死んだように深い眠りに落ちるんだそうだ。

 小栗虫太郎『黒死館殺人事件』や『ハリー・ポッターと秘密の部屋』にも出てきたそうだ。私は両方とも読んだが、全く覚えていない。ホントに何を読んでも、すぐ忘れちゃうね。悲しいよ。

 でもまあ、ハンド・オブ・グローリー。死体愛好家がやりそうなことだね。ユダヤ人強制収容所でも、ガス室に送り込んだ若い女性の遺体から皮膚をはぎ取り、ランプシェードを作ったりしたらしい。人間ってのは、スゴイことやるね。
コメント (2)
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