ケイの読書日記

個人が書く書評

「上野先生、勝手に死なれちゃ困ります」 上野千鶴子・古市憲寿 光文社新書

2020-02-09 16:50:44 | その他
 「僕らの介護不安に答えてください」というサブタイトルが付いている。筆者の古市さんは、朝のTV番組『トクダネ』でコメンテーターやってるので知ってる人が多いと思うし、上野先生は、言わずと知れたフェミニスト界のレジェンド。このビックネーム2人の対談なんだ。
 上野先生は団塊の世代。この世代は、たしかに戦後の焼け野原に生まれたが、日本の高度成長期と連動して、自分たちも経済的に成功していった。それなりに給料をもらい退職金をもらい年金をもらっている。
 それに対して、古市さんは1985年生まれのロスジェネ世代。就職は大変だったし、給料は上がらないし、少子高齢化で社会保険の負担は増える一方だし、自分たちの年金はどうなる?という不安だらけ。
 そういった古市さんが、今までのストックで何とか逃げ切れるだろう団塊の世代の上野先生に「勝手に死ぬなよ。オレらはどうなる?」と迫っている。話は、実際的な介護の話から、親子関係の分析、世代間格差の問題、共同体や運動の可能性の話などなど、多岐にわたる。なかなか興味深いよ。

 私は上野先生の本を読むと(たいして読んでないが)あまりにも恵まれた人の言い草だと思う。強者の理論。富山の裕福な開業医の家に生まれ、東京の大学に進学し、次に海外留学した。1948年生まれで、そんな事出来る人が、どれだけいる? もちろん本人の能力もあるだろうけど、知的で裕福な家庭に生まれ育ったという環境が大きかったのは事実。でもその有利な環境を自覚せず、自覚していたとしても無視して、他の人には努力を強要する。

 「助けてほしいと思わないんだったら、孤立したまま生きていっていただくしかない。(中略)その人のキモチまでは救ってあげられない。たとえ食べるものがあっても孤立感から死ぬ人は防げない。人の心なんて救ってあげられませんよ。誰にも。(中略)カウンセラーがいたって、本人が助けを求めない限り、何の役にも立たないんだから」(本文より抜粋)
ごもっともでございます。正論だがシビアな意見。
 時々、生活保護の申請をせずに自宅で餓死している人が見つかるが、自己責任と言うことなんだろうか?コミュニケーション能力が低くて助けを求められないから孤立しているのにね。
コメント
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