ケイの読書日記

個人が書く書評

島田荘司 「新しい15匹のネズミのフライ」

2016-10-07 09:57:04 | 島田荘司
 去年、話題になっていたので、私も読んでみる。なんせ筆者が島田荘司、そしてサブタイトルに「ジョン・H・ワトソンの冒険」と書かれてあるので、評判になるのは当然だろう。
 
 結局、こういう事が書いてある。
 ホームズが解決したはずの「赤毛組合」の事件は、まだ終わっておらず、黒幕は悠々自適なリッチ生活をおくっていた。ホームズの働きで、捕まえられ刑務所に入ったはずの悪人たちは「新しい15匹のネズミのフライ」という言葉を残して脱獄。
 肝心のホームズといえば、コカイン中毒で暴れまわったので精神病院へ押し込められて、まったく使い物にならず、ワトソン一人が孤軍奮闘する。

 前半、ホームズの推理の間違いを、ワトソンが心の中で指摘する場面には、私もそうそう、そういう可能性だってあるよねと喜んでいたが、後半、ホームズが入院し、主役が完全にワトソンになると、とたんに面白くなくなる。ワトソンの恋愛話や、ワトソン大活躍のアクションシーンなど、読みたい人がいるんだろうか?
 最後にちょろっとホームズが登場し、「新しい15匹のネズミのフライ」の謎を解いて、ベイカー街に戻る。コカインの成分は、まだ完全には抜けきっていないようだ。

 しっかしねぇ、他人の創作した超有名キャラクターを、ここまで勝手にぶち壊してもいいんだろうか? もし、誰かが、御手洗を狂人にして、石岡君を勝手に活躍させたら、島田荘司は大いに腹を立てるだろうに。

 でも、皆さん、安心してください。本当のホームズは(コナン・ドイルの書いたホームズは)コカインで廃人になどなっていません。老後は田舎に引っ込み、ミツバチを飼って養蜂家として暮らしています。もちろん、事件には遭遇しますが。

 この小説で唯一読みどころがあるとすれば、それは売れっ子作家と担当編集者の攻防だろうか? 筆者の島田荘司も経験しているだろうが、アイデアに詰まって書けなくなった小説家から、あの手この手を使って原稿を吐き出させようとする戦いは、あっぱれ!!! ホームズ物で人気が出てきたが書けなくなったワトソンから、担当は自分の子供まで使って泣き落としを図る。立派です。
 
 そして島田荘司。どうして最近の作品は、こんなページ数が多いの? 原稿料がたくさん入るから? ページ数と中身が合っているものを書いて欲しい。

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