ケイの読書日記

個人が書く書評

ポール・アルテ「七番目の仮説」

2008-10-11 19:52:51 | Weblog
 1938年の夏の夜、ロンドン市警の巡査は奇妙な格好をした男に出くわす。
 足首まで届くコート、手袋をはめた手、つばの広い帽子、顔に当てた白い仮面には25センチはあるだろう嘴がある。中世のペストの医者だ。
 そんな異様な格好をした男が、ゴミ箱を漁っている所に出くわした巡査は職務質問をするが、異常なし。
 男が去った後、ゴミ箱の蓋を開けたら、さっき調べた時にはなかった死体が転がっていた。


 実は、その数時間前、近くの下宿屋で下宿人の青年がペストらしい病気で苦しんでいた。
 中世のペストの医者の格好をした3人が担架で患者を運び出そうと狭い廊下に入った途端、肝心の患者は煙のように担架の上から消えうせるという事件があったばかりなのだ。


 いくらなんでも1938年のロンドンでペストはないでしょう。でも、ペストの医者が登場した時点で、雰囲気は一気に中世暗黒時代にタイムスリップ!
 あのペストの医者の衣装は本当に不気味。死神の画より怖い。

 密室状態の廊下で、患者が煙のように消えたトリックは、中々いいと思う。マジックに詳しい人だったら謎が解けるかもしれない。

 ただ、トリックはいいが、ストーリー特に人間関係がアルテにしては珍しくゴチャゴチャしている。
 もっとシタタカと思っていた人物が、案外気弱な好人物だったり、剛健な人だろうと思っていたら、変態さんだったり。
 キャラの豹変はよくあることだが、ちょっと拍子抜け。
コメント (4)
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