ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖「双頭の悪魔」

2010-06-08 14:28:05 | Weblog
 四国の山奥に、若い芸術家達の村があった。彼らはパトロンから経済的に保護され、世間や周囲の村との交渉を断ち、半ば自給自足の生活を送りながら創作活動に打ち込んでいた。

 そこに『孤島パズル』で心に痛手を負ったマリアが迷い込み、英都大学推理研究会の4人が迎えに行くところから話は始まる。

 大雨が降って土砂崩れで道路が寸断されたり、橋が流されたりして孤立した二つの村。有栖川有栖お得意のクローズドサークル。その中で起こった3件の殺人事件。江神さん、モチ、信長、アリスの推理が冴える!!

 うーん、力作!手掛かりもふんだんに残されているので、第1の殺人、第2の殺人とも推理しやすい。
 犯人はなぜ被害者の居場所が分かったのか? 「出されなかった手紙」はどこへ消えたのか? それらを考えていけば(動機はわからないが)犯人にたどり着く。
 ただ、第3の殺人は…難しいなぁ、というか無理がある。


 また、この作品は推理だけでない。江神さんの生い立ちが断片的に語られる。江神さん、母親から「30歳前に死ぬ。たぶん学生のうちに」と言われたらしい。実の母親にだよ。もう死んだらしいけど、ある種の占いに凝って。ほんとクレージー!

 この続きを読みたい!と意気込んだが、この3冊しか出版されてないんだね。残念。

 と思ったが、調べてみたら『女王国の城』がシリーズ第4作として出ているみたい。早とちりしてごめんなさい。
コメント (6)
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岸本洋子「四十でがんになってから」

2010-06-03 10:53:45 | Weblog
 以前読んだ『がんから始まる』は、書き下ろしだったが、これはあちこちの雑誌に載せたがん関連のエッセイを一冊にまとめたもの。
 私が今まで読んでいたものと少し重複する所はあったが、興味深く読めた。

 私は父方にも母方にも、がん患者はいない。
 どちらかというと、脳梗塞でバタッと倒れ、身体が不自由になって、そのうち寝たきりになって死に至る、というパターン。
 一昔前の典型的な日本人の死に方をする人が多いので、私も多分そうだろう。
 でも、岸本さんも近い血縁者に、がんの人はいなかったようだから、分からないね。

 とにかく、岸本さんは働きすぎ! 1ヶ月に20本も〆切があるなんて、身体にいいわけないよ。おまけに、その〆切に遅れたことが一度も無いなんて、ストレスがたまるはず。
 そうやって一生懸命働いて貯めたお金が、がん治療のためどんどん無くなっていくなんてバカバカしい。
 岸本さんのプライベートな旅行も、本当に慌ただしい。ご自身は「命の洗濯ができた」と満足していらっしゃるが、疲れるだろうなぁ。
 1ヶ月ほど南の島でボーッしてきたら?と奨めたくなっちゃう。
 先のことは何とかなるわよ。

 でも、岸本さんは5年間がんが再発せず一応治癒したらしい。だから闘病記が読みやすいのよね。
 これが、以前読んだ『がん漂流記』のように著者が死んでしまったら…読むのをためらうだろうな。


*イラストは「十五夜」さんです。
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