ケイの読書日記

個人が書く書評

柚木麻子 「ナイルパーチの女子会」 文藝春秋社

2017-10-06 13:07:29 | その他
 以前、書評欄で紹介されていたので読んでみたが…あまりにも身につまされる事柄が多く、読むのが苦しかった。そういった女の人、多いんじゃないだろうか?


 大手商社の総合職・栄利子と、ダメ主婦ブログを書いている専業主婦の翔子。偶然、知り合った二人は、女友達が出来ない・上手に付き合えないという共通の悩みを抱えていたことで仲良くなった。その良好な関係がずっと続くと思っていたが…

 栄利子には、幼馴染で、小中高と同じ学校に行った圭子という親友がいた。同じマンションだったので、小さな頃から友達というより姉妹のように遊んでいた。栄利子が有名女子私立中学に行くというので、圭子も頑張って勉強し、同じ中学に入学。ずっと仲良しだったが、高校に進学した頃から二人の関係に変化が訪れる。圭子が、高校から入学してきた女の子たちと仲良くなり、栄利子と距離を置き始めたのだ。
 圭子以外にあまり友人のいなかった栄利子は、なぜ圭子が自分から離れていくのか混乱し、圭子にストーカーのように付きまとうようになる。


 こういった経験のある人って、多いんじゃないだろうか?中学・高校の時って、女の友人関係が固定化してきて、自分の仲良かった子に別の友達ができると一人になっちゃうんだよね。いまさら他のグループに入ることは難しい。
 小学校低学年の頃は、家が近い・登下校が一緒というだけで仲良くなれたのに、大きくなると自分なりの好みが出てきて、友人との共感を一番大切なものに思う。共感できない人は排除…みたいな。

 つらいよね。自分の事を全く無視して、新しい友人たちとキャッキャと笑いさざめきあっている圭子を見るのは。でも、それは仕方のないこと。追いかけても仕方ない。学校内で友人が出来にくいと思ったら、校外に目を向けよう。別に、友人でなくてもいい、おしゃべりできる相手がいたら。


 自分でも今、考えるに、どうして中高生の時、「本当の友達」「親友」という言葉にあんなに憧れたんだろう。少女マンガの影響だろうか?「永遠の友情」というのは、結果からすれば長く続いたという事で、最初から永遠を求めるのはおかしいよ。
 人との関係というのは、付かず離れず が望ましい。あまりに近くなりすぎると、かえって破綻する。
 それを、この高校生の栄利子さんに伝えてあげたい。

 結局、栄利子の圭子へのストーカー行為は問題となり、学校や良好だった双方の家庭も巻き込みズタズタになる。
 栄利子は勉強して別の大学に進み、父親のコネで大手商社に入社。キャリアウーマンとして働くが、ブロガーの翔子と出会う事で、彼女に執着し再びストーカーするようになる。


 圭子も、精神に傷を負ったせいか、何をやっても上手く行かない。就職も結婚も人間関係さえ。

 最後に夜更けのファミレスで、栄利子と圭子が会話する場面が心に染みる。栄利子は「偽りの親しさを向けられるくらいなら、いっそ冷たく拒否されるほうがまし」と言うが、圭子はそれに反論する。「一瞬でもその場を楽しくする花火みたいな社交性が、楽天的な調子のよさが、次につながらないかもしれない小さな約束が、根本的な解決にならなくても、実は通りすがりの色んな人を救っているんじゃないかな」
 その通りだと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

立憲民主党について

2017-10-04 09:22:45 | Weblog
 民進党が希望の党に吸収された時、心底驚いた。政治家って、票さえもらえれば誰とでも寝るんだって。
 だから、枝野さんたちが新党を立ち上げたとニュースで聞いた時、とても良い事だと思った。確かに政権交代するような大きな勢力にはならないだろう。でも、いわゆるリベラルという考えの人が一定数いて、その人たちの投票先が無くなるのは、おかしいと思う。

 「安倍政権をなんとしても止めなければ」って言って止めるのは良いが、もっと右寄りの政権を作ってどうするの?
 
 小池さんの風など、いつかは止まる。現にもう弱くなってるよ。有権者は見ている。政治家の皆さん、あまりにあさましい真似はしないでください。

 私は支持政党なしだけど、選挙は毎回行きます。立憲民主党に投票はしないが、多様性の必要は感じています。枝野さんたちに頑張ってほしいです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東野圭吾 「あの頃のだれか」 光文社文庫

2017-10-01 08:17:35 | 東野圭吾
 この短編集は…はっきりいって駄作集ですね。これについては、東野圭吾自身が「あとがき」の中で、どれもこれも「ワケアリ物件」と書いているので、自覚はあるんでしょう。売れっ子作家になる前、あちこちで発表した作品を、売れっ子になった後、何を出しても東野圭吾の名前があれば売れるだろうと、出版社が出したんでしょう。

 8つの短編が入っています。一番ヒドいと思ったのは、別冊小説宝石89年12月号が初出の『20年目の約束』。ページ数がそこそこあるので、よけいガッカリしました。


 「子どもは作らない」と宣言している男と結婚した女性が、夫の言葉に疑問を持たず夫の赴任先のカナダに行ったが、そこで体調を崩す。日本に一時帰国して実家で静養していると、なぜ夫がかたくなに子供はいらないと突っぱねるのか、その理由が知りたくなってくる。
 そして、故郷の山梨に帰省するという夫の後を尾行すると…。

 一応ミステリ仕立てにはなっていて、あれこれ読者も考えるけど…あまりにもありきたりな結末でがっかり。別冊小説宝石が、よくこのクオリティの作品を載せたなと、そこら辺がかえってミステリです。

 文句ばかりではいけない。一番出来の良い作品は…というと、ううう難しい。『再生魔術の女』かなぁ。
 子どもが生まれない金持ち夫婦が養子をもらう事になり、赤ちゃんと対面する。妻の方は大喜びで、すぐに赤ちゃんを連れ帰る。まだ少し手続きが残っているというので、夫の方は、養子縁組を世話してくれた中年女性の話を聞くため残る。
 そこで中年女性は語り始める。赤ちゃんの出生の秘密を…。

 現代の生殖医療の技術は、すごい事になっているから、こういう事も可能でしょうが、胸が悪くなります。

 
 『名探偵退場』は、ミステリとはちょっと違います。雪の中の三重密室殺人がでてきて、本格でこのテーマだったら、さぞ読み応えあるだろうと思えますが、この作品では、それは小さな小道具。その謎を解くわけではありません。
 名探偵のわがままさ、尊大さ、子どもっぽさに対するツッコミ満載の作品。『名探偵の掟』天下一シリーズの原型みたい。


 あとがきに書かれているのですが、東野圭吾はデビュー当時、雨の会という若手作家グループに入っていたそうです。井沢元彦や大沢在昌がリーダー格で、宮部みゆきも入っていたそうです。すごいなぁ。東野圭吾も宮部みゆきも、今では、井沢や大沢など完全に凌駕しているからね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする