日々是マーケティング

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これが「企業価値を上げる」こと?-村上ファンド-

2006-02-02 23:12:27 | ビジネス
Yahooのトピックスに「松坂屋従業員全員解雇」という、センセーショナルな見出しのニュース記事が出ていた。
共同通信社が配信したニュースで、内容を読むと松坂屋の筆頭株主である村上ファンドの村上氏が、昨年暮れに松坂屋サイドに提案したことのようだ。

村上氏は、これまで様々な企業の株を買い集め「筆頭株主」となってきた。
その度ごとに口にする言葉は、「経営者は、企業価値を上げる責任がある」ということ。
確かに村上氏の言う「企業価値を上げること」は、経営者・経営陣にとって大切なことだが、その企業価値を決めているのは村上氏ではなく、その企業の製品・サービスを購入する生活者だ。
企業の持っている土地などが、企業価値を上げているわけではない。

そして、百貨店における「企業価値」とは「お客様と直接接する社員」なのでは、ないだろうか?
名古屋における「松坂屋」のステイタス度は、他の百貨店に比べ遥かに高い。
それは、土地建物の価値ではなく「松坂屋」という百貨店が築いてきた「ブランド」であり、その要素として従業員の接客態度なども含まれているのだ(決して、他の百貨店の接客態度が、落ちるわけではない。現場で働く人たちは、皆さんプロとしてのプライドを持って接客していると思っている)。
そんな基本的なことも忘れて、「従業員全員解雇」という提案を平気でする村上氏は、「小売業」をなんだと思っているのだろう?
それとも「時代がネットショッピングに移りつつあるのだから、従業員も店舗も要らない。一等地にもっと高収益性のある何かを作ったほうが、もっと儲かる」とでも思っているのだろうか?
とすれば「ショッピングの楽しさ」という、生活者の気持ちを忘れている。

今日の中日新聞に「女性がおしゃれをして出掛ける時の費用」という記事が出ている。
調査を行ったのは、岐阜に本店がある大垣共立銀行。
地方都市における「おしゃれをしていく場所」のひとつが、百貨店である。
そこでは、海外の有名ブランド品を手に取ることも、ファッションコーディネートの相談もできる場所なのだ。
そういう「ショッピングの楽しさ」を、百貨店は生活者に提供し信頼を得てきた。
そのような背景も、スッカリ忘れて「企業価値を上げる方法」として、従業員全員解雇というのであれば、村上氏はなにをもって「企業価値を上げる」というのだろう?
それとも村上氏は、今でも「土地神話」を信じている、というのだろうか?