23年前に起きた「地下鉄サリン事件」の中心的な役割をしていた、「オウム真理教」の教祖・麻原彰晃をはじめとする7人の死刑執行が、今日された。
若い方々にとっては、映像の世界のような事件かもしれないが、私と同世代の人たちにとっては「働く仲間たちが、テロによって殺された」という、印象の事件なのではないだろうか?
というのも、被害にあわれた方たちは、ごくごく普通の人達で、その日の朝も普段と変わらず出勤をし、毎日使う地下鉄に乗り合わせていただけの人たちだったからだ。
正に「無差別テロ」というほどの事件であり、社会を震撼させた事件でもあった。
その後、徐々に事件の姿が露わになり始めると、一つの疑問に当たる。
それは、事件を引き起こした犯人の多くが、有名大学・大学院出身で、被害にあわれた方たちとほぼ同世代だったからだ。
Huffpost:オウム真理教事件、初めて死刑執行された7人のプロフィール
「頭が良いのに、何故荒唐無稽なことを考える宗教に入信をし、その果てに教祖の言いなりになり、殺人事件まで引き起こしてしまったのか?」という、疑問だった。
そして今でもその疑問は、残されたままのような気がしている。
ただ共通している点は、教祖である麻原彰晃と古参といわれる井上嘉浩、新実智光以外の4人が、いわゆる「医学・理工系」の出身者である、という点だ。そして入信をした時期も1987年~1991年と、日本の経済がバブルへと向かっていく時期でもある。
違う言い方をすれば、日本の社会的価値観が大きく変わった頃でもある。
「経済万能」と呼ばれた時代(だったような気がする)で、コツコツと真面目に研究に取り組むことへの価値が、軽んじられた部分もあったようにも今になっては思うところだが、それでも、理論的思考を持つと思われている彼らが、社会の常識からは大きく外れ、理論的にも破たんしたような考えに、のめり込んでいったのは、「経済万能」という社会的風潮から自分たちがはじき出された、という思い込みがあったからなのだろうか?
死刑執行がされた今、高学歴で将来が嘱望されていた研究者たちが何故?という疑問には、犯人となった彼らは答えてはくれない。
それどころか23年間、彼ら自身から回答となる発言は、無かったように思う。
「オウム真理教」という宗教団体の名は、この一連の事件で無くなってしまったが、考えや思想を同じとする団体は継続されている。
それどころか、「オウム真理教事件」を知らない若い世代を中心に、信者を増やしているという話もある。
今一度、事件を知らない若い世代が、このような宗教団体に惹かれるのか、考えてみる必要があるような気がする。