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女性マーケターから見た日々の出来事

「ブランド」とは何か?改めて考えてみたい

2018-07-26 19:43:28 | マーケティング

Huffpostに、トランプさんのお嬢さんイバンカさんが、自身の名前を使ったファッションブランドを廃業する、という記事が掲載されている。
Huffpost:イバンカ・トランプ氏のブランド廃業へ「成長する力そがれた」

イバンカさんが展開していたファッションブランドについては、父親であるトランプさんが大統領に就任した時から様々な指摘がされていた。
特に、大統領顧問である女性が「皆、買いに行って!」といったり、父親であるトランプさん自身が「娘のブランドが、不当な扱いを受けている」などという発言があり、公私混同も甚だしい、と言われてきた。
それだけではなく、大統領の親族という関係からビジネス展開をすることに対しての、問題も指摘されてきたことは、ご存じの方も多いと思う。
それだけに、今回の廃業は当然という気がしない訳でもないのだが、この「廃業理由」が、チョッと引っかかるのだ。

確かに、父親であるトランプさんが大統領という職についた後、娘の事業の宣伝をするというのは、公私混同だし、親として応援したい気持ちはあっても、口にすべきことではない。
まして、大統領顧問という立場の人物まで使って「買って欲しい!」というのは、行き過ぎというか、いかがなもの?!ということになるのは、当然のことだろう。
だからといって、「ブランドの成長する力がそがれた」のは、指摘されているような問題だけなのだろうか?

日本よりも、ファッションビジネスが厳しいアメリカにおいて、これまで注目を浴びていたのは「トランプ氏の娘のブランド」だったからではないだろうか?
言い換えれば、話題性という点では他の新人デザイナーよりも注目を浴びやすい立場にあった、というだけなのでは?
しかしながら、トランプさんの人気に翳りが出始めれば、「トランプ氏の娘のブランド」もまた、世間の興味は薄れる。
薄れるどころか、批判的な見方をされても仕方ないだろう。
何故なら、娘の名前がついているブランド名であっても、父親である「トランプ氏」の存在を、感じさせるからだ。
そのようなことを考えると、「ブランドの成長する力がそがれた」のではなく、世間から興味が持たれなくなった、ということのほうが正しいのでは?という気がする。

そもそも「ブランド」とは、ある意味「社会からの信頼」というところもある。
誰もが知っている高級ブランドの「ルイ・ヴィトン」は、堅牢な旅行鞄として船旅が盛んだったころから、上流階級の人たちから信頼され、人気を勝ち得てきた。
それが「ルイ・ヴィトン」という企業の、社会的信頼となり、バッグメーカーとして「ブランド」を確立してきたはずだ。
今誰もが知っている、国内外を問わず「有名ブランド」と呼ばれる企業は、そのような「社会との信頼関係」があり、それが企業を大きく成長させ、一部の人たちだけが知っているブランドから多くの人達が知るブランドへと発展してきたはずなのだ。

だからこそ、「イバンカ・トランプ」というファッションブランドの「成長する力がそがれた」ということに、違和感を感じるのだ。
名前が付けば「ブランド」である、というのは「他者との区別をするための名前(あるいは印)」という点で、間違ってはいないが、それが「話題性(だけ)」によるものなのか?「社会との信頼関係」なのか?という違いは、とても大きいように思えるのだ。