先日、バーバリーが42億円相当の売れ残り商品を焼却処分していた、というニュースがあった。
BBC:英バーバリー、42億円相当の売れ残り商品を焼却処分
記事の中で、バーバリー側は「自然環境に優しい方法で、処分をしている」と、コメントをしている。
このニュースを読んだ生活者の多くは、「焼却処分方法」について興味を持つ、と思ってバーバリー側はこのようなコメントをしたのだろうか?
とすれば、残念ながらバーバリー側は、今の生活者を理解していないのでは?ということだと思う。
おそらく多くの生活者は「環境に優しい焼却」などよりも、「42億円相当の売れ残り商品(を処分)」に興味を持ったのではないだろうか?
今回の焼却処分を行った理由として、「ブランド価値を下げないための処置」としている。
バーバリーだけではなく、人気ファッションブランドとなると「偽物ブランド」が、市場に登場する。
生活者の一部が「偽物ブランドでも良いから、そのブランドだと分かるモノが欲しい」という、欲求があるからだ。
あくまでも個人的な感覚
だが、「偽物であってもブランド品が欲しい」という気持ちそのものが分からない。
そもそも、自分の生活にそのようなブランド品を持ったところで、自分が変わるわけではない。
偽物であっても、ブランド品名が分かる商品を持つことで、そのようなブランド品を持っている人たちの仲間入りができる、という思い込みなだけだと考えている。
その「偽物ブランド」とは違う、ということを「価格維持」という方法で、ブランド価値を維持しようとしている、ということのようだ。
そしてこのような方法で、ブランド価値を維持している有名ファッションブランドは、何もバーバリーだけではない(と思っている)。
そのような「価格維持=ブランド価値の維持」という方法は、これからの生活者に受け入れられるのだろうか?という、疑問がある。
今回の「焼却処分」という方法で、これまで「バーバリー」のファンの中には、焼却処分を良しとしたバーバリーに違和感を感じた人たちもいたのでは?
バーバリー側の言うように「価格維持=ブランド価値の維持」と考えた時、ベストな方法は「受注生産」だろう。
パリの「オートクチュール(=オーダーメイド)」は、1着2千万円以上といわれているが、きらびやかな手仕事の刺繍やレース、縫い取りのビーズなどが必要ではないバーバリーであれば、今の販売価格+数万~10数万円仕立てることができるだろう。
何より「売れ残り商品」が発生しないので、服に関しては「焼却処分」をする必要がなくなる。
「焼却処分費」も軽減されるので、その分の「仕立て代」もわずかながら値下がるかもしれない。
とすれば、「プレタポルテ(=既製服)」であっても、受注生産限定という方法を検討する必要があるのでは?
バーバリーほどのブランド価値を持っている企業であれば、それは可能だと思うし、逆にそのような企業姿勢が「ブランド価値」をより高める切っ掛けとなるかもしれない。
以前、拙ブログでも「ファッション業界で起きている、大量の処分」について、エントリをした。
そう考えると、バーバリーだけの問題ではなくファストファッション・ブランドを含めた、「ファッション業界」全体の問題なのかもしれない。
それは、私たち生活者の「ファッション」に対する意識の問題とも繋がっている、と思っている。
ファストファッションが安いことには、それなりの理由がある。
途上国の女性(や子どもたち)が、安い人件費で、ブラック企業並みの労働環境で作っているからだ。
「ファッション」という華やかな世界であっても、それを支えている人たちの多くの生活環境にまで目を向けなくては、私たち生活者もファッションを楽しめない未来がやってくるかもしれない。