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日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「下請け構造」そのものを、考え直す必要があるのでは?

2020-07-29 15:15:35 | ビジネス

日本のメディアが、踏み込んだ報道がなかなかされていない感のある「定額給付金」をめぐる、事業費の中抜きなどについて、ロイターがなかなか興味深い記事を出している。
ロイター:焦点「コロナ給付金」見えない下請け実態 電通関与になお不透明感

そもそも「定額給付金」の事業を中心に行ったのは、経産省・中小企業庁だった。
ここから事業委託されたのが「サービスデザイン推進協議会」という、外郭団体(のような印象を受ける)だ。
この時点で当初事業費から、約20億の事業費が消えている。
何故「中小企業振興」とは関係のなさそうな、「サービスデザイン推進協議会」という団体に、委託をしたのだろうか?という、疑問がわく。

その「サービスデザイン推進協議会」は、3.5億の手数料(おそらく、協議会の運営費として差し引いた額だと思われる)を差し引き、電通に729.1億円、みずほ銀行に15.6億円、電通ワークスに0.7億円、日本生産性本部(商工会議所内にある組織)に、0.1億円で、下請けに出している。
電通ワークスそのものは、いわゆる「派遣会社」のような企業だと考えてよいと思う。
電通ワークス:事業紹介
ただ派遣先は、多岐にわたり事務系からいわゆる不動産関係の警備のような「人材派遣」を行っているようだ。
とはいえおそらく多くの派遣先は「電通絡み」の企業への派遣なのでは?と、考えられるので、「電通グループ」としては、729.8億円が支払われている、と考えたほうが良いだろう。

見逃しがちだが、みずほ銀行に対して15.6億円支払われている、という点も気になる。
これまでの報道では、ほとんどその名前が出てきていなかったような気がするからだ。
金融システムの運営の為であれば、もっと公的な団体を電通に委託する前に別委託すれば、良かったのではないだろうか?
電通の株主であり、取引銀行という関係があるからだろうか?

次ぎに登場するのは、「電通ワークス」を除く「電通及び電通グループ企業」だ。
中には、何故か「国内の経済振興策」のはずなのに、「電通国際情報サービス」というグループ会社の名前も登場する。
曾孫請けになって登場するのが、日本のメディアでも取り上げられてきた「パソナ」や「トランス・コスモ」だ。
これらの企業に発注しているのは「電通ライブ」という企業で、「電通」からの直接ではない。
「電通ライブ」から請け負った「パソナ」や「トランス・コスモ」、「大日本印刷」は、曾孫請けよりも下の扱いだった、ということになる。
ここで突然消えた「電通」の名前、そして登場する「電通ライブ」の名前に、違和感を感じるのは私だけではないと思う。
「パソナ+トランス・コスモ+大日本印刷」への下請け金額は302.8億円であり、残り額565.42億円はどうなってしまったのだろう?

このような構造からわかってくることが、いくつかある。
一つは「東京一極集中」の構図だ。
今回の「定額給付金」を決めたのは、国会だったが実際の給付に携わったのは、各地方自治体だった。
そのため、自治体によっては給付が遅かったりして、生活者の不満の多くは自治体へと向けられることになった。
各自治体が給付の処理をするのであれば、孫請け位のところで地方に権限とお金を渡すべきだったのではないだろうか?
「そのためのノウハウがない」と指摘されるとは思うのだが、下請け企業が「運用 テキスト」を作成し、そのテキスト通りに運営すれば、全国各地同じシステムで運用できたはずだ。
下手に「マイナンバーカード」の推進を図ろうとして、マイナンバーでの申請を喧伝したため、逆に現場は大混乱に陥ってしまった。
中途半端な、自治体への丸投げが、逆に現場を混乱させてしまったように思うのだ。

そして「下請け構造」により、現場に近くなればなるほど利益は無く、労力だけが増えるという、ある種の「労働力の搾取」が起きるという点だろう。
実際「電通」以外に名前の挙がった「パソナ」や「トランス・コスモ」、「大日本印刷」等は、この事業に関していうなら曾孫請け位の位置づけになっている。
「儲け」という点だけで考えれば、「電通」に比べれば「うまみの少ない仕事」だったかもしれない。
そもそも「電通ワークス」という派遣会社がありながら、人材派遣の最大手「パソナ」を曾孫請けすること自体、どこかおかしい気がする。
「人材派遣」ということを考えれば、「電通ワークス」から直接「パソナ」へ仕事を発注(本来であれば、共同事業として進めるべきであろう)すれば、良いだけの話だ。
それを回りくどい方法で、仕事を発注している。

そう考えると「定額給付金」の問題は、下請け構造で産業が成り立つ日本の産業全体の問題なのかもしれない。
特に公共事業などは、事業が行われる現場に近い企業に直接ではないにせよ、孫請け位の時に仕事を委託させれば、地域経済の振興にもつながる。
それをあえてしないのであれば、それは「東京一極集中」であることにメリットを感じている人(多くの場合「自己益を感じている」と言って良いと思う)が、少なからず政府にも企業にもいる、ということなのではないだろうか?