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宝島社の新年企業広告に見る「皮肉と批判」

2021-01-07 19:03:59 | CMウォッチ

出版社・宝島社のお正月広告は、元旦から三が日の間ではない。
いわゆる「松の内」と言われる、今日位までの間に新聞掲載される。
それだけではなく、他社の企業広告のような明るさや未来感などは無く、どこかシニカルで社会を批判するような内容が入っている。
それが、宝島社の「企業メッセージ」ということになる。
今年は例年に比べ、ダイレクトな批判要素が感じられた広告だったように感じている。
宝島社:企業広告2021年

上は昨日1月6日に朝日新聞に掲載された広告。
左下に広告に使用した浮世絵が、葛飾北斎の「北斎漫画」からのものである、ということがわかる。
キャッチコピーとして使われている「ねちょりんこ、ダメ。」の「ねちょりんこ」というのは、この広告の為に作った造語のようだ。
ただ「北斎漫画」の図柄と一緒にキャッチコピーを見ると、「のんびり家族で過ごしちゃダメなの?」という、ほのぼの感のあるキャッチコピーとは別に、今の世知辛さを皮肉っているようにも思える。
それを気づかせるのが、右下にある「濃厚接触による感染拡大は、個人の責任だそうです」という、コピーだ。
江戸時代の長屋で生活していた人たちが、「ソーシャルディスタンス」などという、距離で生活すること自体、難しかったはずだ。
何故なら、6畳くらいの部屋に家族で生活をしていたからだ。
当然昼寝をするにしても「ソーシャルディスタンス」を保って、昼寝などできるはずもない。

そして今日7日に掲載された広告が、昭和20年代頃の小学校での写真だ。
女子児童が一生懸命に机を拭いている、何気ない1枚の写真だ。
裸足であることから、日本が第2次世界大戦後まだまだ復興途中の頃だろう、と想像できる。
そしてキャッチコピーとして使われているのが「言われなくても、やってます。」だ。
写真だけを見ると、戦後間もない日本のありふれた光景のように見える。
そこに「言われなくても、やってます。」というキャッチコピーが入ると、それは一転して今の不甲斐ない(?)政府の「新型コロナ対策」に対する批判のように思えてくるし、昨年打ち出した「新しい生活様式」に対しての、生活者からの皮肉のようにも感じられるキャッチコピーだと思う。

何よりも「皮肉だな~」と感じられるのは、この日にちを変えて掲載した二つの広告の右下には「個人の責任だそうです」というコピーだ。
使われている写真や浮世絵は、ほのぼのとしているのに、キャッチコピーを読むと今の政府に対する批判とも皮肉とも捉えられるような内容になっている。

もう一つ感じたことは、共通して使われている「個人の責任」という言葉だ。
ここ20年くらいの間で、日本で頻繁に聞かれるようになった「自己責任」という言葉。
今回のような「感染症」の場合、個人の努力では限界があり、個人の責任を問うようなものではない。
もちろん、個人として様々な予防策を取ることはできても、個人の努力で予防・感染拡大防止をすること自体、無理があり過ぎる。
にもかかわらず「新型コロナ」の感染者が判明してから約1年経っても、日本の政府は「緊急事態宣言」をする・しないの検討会をして何日に出します、というような悠長なことしかしてきていないのが現状だ。
「アベノマスク」にしても、官邸付き官僚が「マスクを配布すれば、国民の不安なんて、パァ~と無くなります」という、戯言のような一言で、500億近い税金が投入されるという結果になった。
どこかこの国の政治家は「他人事のような感覚」で、生活者を見ているようなのだ。

だからこそ、今回の宝島社の広告はとても強いメッセージとなって伝わるのでは?と、感じている。
まぁ、感じているのが生活者ではなく、政治家であって欲しいとは願ってはいるのだが…。