先日、出生率の発表があった。
その数字が、1.20人だった。
第一生命経済研究所:少子化の危機をよく見よ!~コロナ禍後急加速~
ご存じの通り、出生率というのは、一人の女性が生涯を通して出産する子供の人数のことだ。
中でも東京都は0.99人と、1.0人を下回るという数字となった。
1人の女性が、その生涯で出産する子供が1人いない、ということになる(実際は1人と考えるべきだろう)。
このような数字が出ると、「女性がもっと子供が生みやすい環境にすべき」という議論が出てくるのだが、実は既婚女性が出産する子供の人数というのは、大きく変化している訳ではない、と言われている。
国立社会保障・人口問題研究所:夫婦調査の結果概要 2.夫婦の出生力
このレポートの中から、夫婦の出生力のみを抜き出した表が↓だ。
3人以上のお子さんがいる世帯は少なくなってきているが、2人という世帯は大幅な減少が見られない、ということが分かる。
ということは、非婚者が増えたために、出生率が下がってきていると、考えるのは当然のことかもしれない。
そこで東京都が考えたのが、東京都内の独身者向けの婚活アプリ(=マッチングアプリ)だった、ということだろう。
NHK Web News:東京都が婚活支援 独自のマッチングアプリ 夏頃本格実施
これまでも、若年現役世代の結婚サポートとして、自治体が「婚活パーティー」等を開催したりしていたが、これまでの自治体が主体となる「婚活支援」と、東京都の「婚活支援」とでは、分母となる若者の人数が圧倒的に違うという点と、「出会いの場」となる場所も違う、という点だろう。
これまで地方自治体が主体となる「婚活支援」は、「出会いの場が無い」とか「当事者である若者自身にも結婚の意志がそれなりにあった」等の理由があった(はずだ)。
それに対して、東京は婚活対象となる若者も多く、出会いとなる場所も多い。
ただ「結婚したい」という意志を持つ若者が、多いのか?という点だろう。
東京での生活が、独身者にとって快適で、結婚することでその快適さが感じられない、ということであれば、いくら「婚活支援」のマッチングアプリを開発したところで、利用者が劇的に増えるとは思えない。
特に、経済的に自立をし、キャリアを目指す若い女性にとって、「結婚」そのものがネガティブと感じる要素の方が、高いのでは?と感じている。
例えば、結婚後苗字を替えるのは、多くの場合女性だ。
仕事をする為に旧姓で通すことは、珍しいことではないが、その為に係る労力と時間等の負担は大きい。
それは、企業側にとっても負担の様で、昨日経団連が「選択咳夫婦別姓」導入を、政府に提言している。
NHK Web News:経団連が「選択的夫婦別姓」導入を求める提言 経団連として初
そう考えると、東京都の「婚活支援マッチングアプリ」は、「東京都という自治体が管理するマッチングアプリ」という信頼等、ある程度有効かもしれないが、だからと言って根本的な「少子化対策」となるわけではない、ということが分かる。
もう一つの懸念が、既に民間企業が展開をしている「婚活支援(マッチングアプリも含む)」に影響を与えないか?という点だ。
「民業圧迫」と、言われる可能性もある。
果たして5億円という税金を投入して実施する「東京都婚活支援マッチングアプリ」、対費用効果のほどは?