2月14日(日)は、東京都・大田区民ホール「アプリコ」で、「LPSAオフィシャルファンクラブ・Minervaファンクラブイベント」が開催された。
約9ヶ月ごとに行われる同イベント、前回は昨年の黄金週間に行われたが、私は旅行中で参加できなかった。今回も北海道旅行期間内にあたり、どうするか迷っていたのだが、ファンランキング第1位嬢の営業トークに折れ、参加を決めたのだった。これ、LPSAファンランキングの何位までだったら、私の心が動いただろうか。ちょっとここには書けないが。
14日は朝一番の飛行機を予約する手も考えたが、万が一寝過ごしたら何もかもパーだ。大事を取って、約1ヶ月前に、13日の最終便を予約した。
イベントスケジュールは追って記すが、14日は午前10時開場、同30分から12時までが指導対局(有料)である。前日の帰京で午前中の時間ができたので、私はあらかじめ指導対局の申し込みを済ませていた。
当日はスーツを着用し、10時15分ごろ入場。指導対局に臨む会員だけが、一足先に入場するわけだ。アイリスなどの受付嬢の先で、船戸陽子女流二段と藤田麻衣子女流1級が、笑顔で出迎えてくれる。
この旅行中に当ブログで発表したファンランキングの改訂版で、前回同様第1位につけた女流棋士と、次点に落とした女流棋士が並んでいる。私は早くも動揺してしまった。
「あっ、やっ、これは、パーッという感じで、パーッと!(華やいだ感じで素晴らしい)」
と私は両手を拡げ、おふたりを褒める。
船戸女流二段は髪をチョコレート色に染め、正月より少し長くなった髪は、ストレートにおろされている。頭上のカールが愛らしい。でも、似合っているのだろうか。なんだかサザエさんの髪型の親戚みたいだ。いやこれこそ、最先端のオシャレなのだろう。ファンランキング1位の髪型に、ケチをつけてはいけない。
「次点になっちゃった」
と、藤田女流1級が早速ジャブを飛ばしてくる。おふたりとも、当ブログの読者なのだ。
「あ、いや、これは、違うんですよ。中井先生と本田先生を入れちゃったもんで、たまたま藤田先生がはじき出されちゃったわけで…先生のファン度が下がったわけではないんです」
ファンクラブイベントなのに、なんでこちらが焦らなければならないのだろう。しかしこれから石橋幸緒女流四段(現・天河)ともお話しする機会もあろう。私は石橋女流四段も、別格扱いの次点につけた。しかしその反応を想像するのも恐ろしく、あとは成り行きに任せることにした。
午後2時30分から始まる、要チケットのフリーブースコーナーが選択制なので、ここで選ぶことになる。私は「心理クイズ」を選んだ。
指導対局も抽選。私は大庭美樹女流初段だった。しかし私は間違えて、藤森奈津子女流三段のコーナーに座ってしまう。頭の中が真っ白になっていた証左だ。いまから石橋女流四段の影におびえてどうするのか。
10時30分になり、指導対局開始。最多でも3面指しだが、ここは2面指しだった。大庭女流初段には、金曜サロンで何局も指導を受けている。最初のころは大庭女流初段の軟体戦法に幻惑され、思うような将棋が指せなかったが、最近はまずまずの内容になり、対戦成績も盛り返していた。今回も我が実力を発揮して…と盤に向かったが、さすがに2面指しとなると、女流棋士も手を抜かない。というか、抜けない。
大庭女流初段は四間飛車から早々と角交換をして、私に☗8八銀型を強要する。居飛車対振り飛車でこの形は左銀が使いづらく、早くもポイントを取られたと思った。さらに☗7六銀と立った手に☖4三角と打たれたのが存外厳しかった。☗6六歩と突いていないので☗7七玉と立つよりないが、これでは玉が露出して辛い。
さらに進んで、☗2三歩が疑問だったか。手順に☖6二飛と逃げられ、☖5四金と繰り出され6筋でケンカが始まっては、私の非勢が明らかとなった。
それでも私は角を2枚持つなどして粘り、☗5五角と打つ。これは☗7四桂の王手飛車取りを狙っている。だから大庭女流初段は☖6四銀とはじいたが、これを☗同角と取ったのが早まったか。☖同飛に再度☗5五角と打ったが、☖6三歩☗6五歩に☖5四歩で飛車角交換を強要されては、こちらに楽しみがなくなってしまった。
戻って、最初の☗5五角に☖6四銀の局面では、黙って☗1一角成と香を補充したほうがよかったようだ。
以下は、大庭ワールドの「真綿で首」の指し手に、なす術なく投了。さすがに女流棋士は強かった。
蒲田の街に昼食に出る。さんざん迷って「吉野家」で豚丼定食を食す。
食後は安いネットカフェがあったので、そこに入り、ブログの文章を更新(未公開)しておく。1年前では考えられなかった行動だ。バカだ。
午後1時少し前に会場に戻ると、かなり会員が増えていた。金曜サロンの常連も何人かいる。そのうちのひとりと談笑していると、藤田女流1級が左に座った。
ひっ…ま、まだ何か言いたいことがあるのだろうか。しかし藤田女流1級から出た言葉は、意外なものだった。
「一公さん、この前はペア選手権に来てくれてありがとう。初めて優勝できました。ほら、いつも一公さん、私は急戦の将棋が合うって言ってくれたでしょ。だから今回は急戦で伸び伸び指して…だから今回優勝できたのは、一公さんのおかげです。ありがとうございました」
午前中とは別の表情で、藤田女流1級が静かに語る。
「あ、ああ…あれは5局中4局が急戦でしたか。ブログにも書きましたけど、あれはホントにひとりが指しているような、素晴らしい将棋ばかりだったです」
私もしんみりしながら返す。
「…ありがとう」
その言葉とは裏腹に、藤田女流1級のその表情は、いままでに見たことのない、ウェットな感じだった。
「これからも対局ガンバッテください。応援してますから」
私もまたホロッときつつ、激励の言葉をかけた。
「うん…」
そう言って、藤田女流1級は私のもとを離れた。
ペア将棋とはいえ棋戦初優勝を果たし、藤田女流1級の喜びは大きかったと思う。しかしそれをわざわざ私に伝えに来るものだろうか。ありがたいことではあったが、ともかくこの時点では、これからは一皮むけた藤田将棋を見られると、次の対局を楽しみにしていた。
しかし3時間後、そんな彼女の口から衝撃的な公表を聞こうとは、このときは夢にも思わなかった。
(つづく)
約9ヶ月ごとに行われる同イベント、前回は昨年の黄金週間に行われたが、私は旅行中で参加できなかった。今回も北海道旅行期間内にあたり、どうするか迷っていたのだが、ファンランキング第1位嬢の営業トークに折れ、参加を決めたのだった。これ、LPSAファンランキングの何位までだったら、私の心が動いただろうか。ちょっとここには書けないが。
14日は朝一番の飛行機を予約する手も考えたが、万が一寝過ごしたら何もかもパーだ。大事を取って、約1ヶ月前に、13日の最終便を予約した。
イベントスケジュールは追って記すが、14日は午前10時開場、同30分から12時までが指導対局(有料)である。前日の帰京で午前中の時間ができたので、私はあらかじめ指導対局の申し込みを済ませていた。
当日はスーツを着用し、10時15分ごろ入場。指導対局に臨む会員だけが、一足先に入場するわけだ。アイリスなどの受付嬢の先で、船戸陽子女流二段と藤田麻衣子女流1級が、笑顔で出迎えてくれる。
この旅行中に当ブログで発表したファンランキングの改訂版で、前回同様第1位につけた女流棋士と、次点に落とした女流棋士が並んでいる。私は早くも動揺してしまった。
「あっ、やっ、これは、パーッという感じで、パーッと!(華やいだ感じで素晴らしい)」
と私は両手を拡げ、おふたりを褒める。
船戸女流二段は髪をチョコレート色に染め、正月より少し長くなった髪は、ストレートにおろされている。頭上のカールが愛らしい。でも、似合っているのだろうか。なんだかサザエさんの髪型の親戚みたいだ。いやこれこそ、最先端のオシャレなのだろう。ファンランキング1位の髪型に、ケチをつけてはいけない。
「次点になっちゃった」
と、藤田女流1級が早速ジャブを飛ばしてくる。おふたりとも、当ブログの読者なのだ。
「あ、いや、これは、違うんですよ。中井先生と本田先生を入れちゃったもんで、たまたま藤田先生がはじき出されちゃったわけで…先生のファン度が下がったわけではないんです」
ファンクラブイベントなのに、なんでこちらが焦らなければならないのだろう。しかしこれから石橋幸緒女流四段(現・天河)ともお話しする機会もあろう。私は石橋女流四段も、別格扱いの次点につけた。しかしその反応を想像するのも恐ろしく、あとは成り行きに任せることにした。
午後2時30分から始まる、要チケットのフリーブースコーナーが選択制なので、ここで選ぶことになる。私は「心理クイズ」を選んだ。
指導対局も抽選。私は大庭美樹女流初段だった。しかし私は間違えて、藤森奈津子女流三段のコーナーに座ってしまう。頭の中が真っ白になっていた証左だ。いまから石橋女流四段の影におびえてどうするのか。
10時30分になり、指導対局開始。最多でも3面指しだが、ここは2面指しだった。大庭女流初段には、金曜サロンで何局も指導を受けている。最初のころは大庭女流初段の軟体戦法に幻惑され、思うような将棋が指せなかったが、最近はまずまずの内容になり、対戦成績も盛り返していた。今回も我が実力を発揮して…と盤に向かったが、さすがに2面指しとなると、女流棋士も手を抜かない。というか、抜けない。
大庭女流初段は四間飛車から早々と角交換をして、私に☗8八銀型を強要する。居飛車対振り飛車でこの形は左銀が使いづらく、早くもポイントを取られたと思った。さらに☗7六銀と立った手に☖4三角と打たれたのが存外厳しかった。☗6六歩と突いていないので☗7七玉と立つよりないが、これでは玉が露出して辛い。
さらに進んで、☗2三歩が疑問だったか。手順に☖6二飛と逃げられ、☖5四金と繰り出され6筋でケンカが始まっては、私の非勢が明らかとなった。
それでも私は角を2枚持つなどして粘り、☗5五角と打つ。これは☗7四桂の王手飛車取りを狙っている。だから大庭女流初段は☖6四銀とはじいたが、これを☗同角と取ったのが早まったか。☖同飛に再度☗5五角と打ったが、☖6三歩☗6五歩に☖5四歩で飛車角交換を強要されては、こちらに楽しみがなくなってしまった。
戻って、最初の☗5五角に☖6四銀の局面では、黙って☗1一角成と香を補充したほうがよかったようだ。
以下は、大庭ワールドの「真綿で首」の指し手に、なす術なく投了。さすがに女流棋士は強かった。
蒲田の街に昼食に出る。さんざん迷って「吉野家」で豚丼定食を食す。
食後は安いネットカフェがあったので、そこに入り、ブログの文章を更新(未公開)しておく。1年前では考えられなかった行動だ。バカだ。
午後1時少し前に会場に戻ると、かなり会員が増えていた。金曜サロンの常連も何人かいる。そのうちのひとりと談笑していると、藤田女流1級が左に座った。
ひっ…ま、まだ何か言いたいことがあるのだろうか。しかし藤田女流1級から出た言葉は、意外なものだった。
「一公さん、この前はペア選手権に来てくれてありがとう。初めて優勝できました。ほら、いつも一公さん、私は急戦の将棋が合うって言ってくれたでしょ。だから今回は急戦で伸び伸び指して…だから今回優勝できたのは、一公さんのおかげです。ありがとうございました」
午前中とは別の表情で、藤田女流1級が静かに語る。
「あ、ああ…あれは5局中4局が急戦でしたか。ブログにも書きましたけど、あれはホントにひとりが指しているような、素晴らしい将棋ばかりだったです」
私もしんみりしながら返す。
「…ありがとう」
その言葉とは裏腹に、藤田女流1級のその表情は、いままでに見たことのない、ウェットな感じだった。
「これからも対局ガンバッテください。応援してますから」
私もまたホロッときつつ、激励の言葉をかけた。
「うん…」
そう言って、藤田女流1級は私のもとを離れた。
ペア将棋とはいえ棋戦初優勝を果たし、藤田女流1級の喜びは大きかったと思う。しかしそれをわざわざ私に伝えに来るものだろうか。ありがたいことではあったが、ともかくこの時点では、これからは一皮むけた藤田将棋を見られると、次の対局を楽しみにしていた。
しかし3時間後、そんな彼女の口から衝撃的な公表を聞こうとは、このときは夢にも思わなかった。
(つづく)