一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

五たび大野教室に行く(後編)・初勝利

2011-07-08 01:28:08 | 大野教室
私の形は今風ではないが、玉の堅さより広さで勝負しようというものである。
中盤、▲5六銀めがけて△5五銀とぶつける。小学生クンは、銀交換はできぬと▲6七銀と引いたが、これはこちらがポイントを稼いだ。
しかしそのあと私に不用意な一着があり、小学生クンに十分の捌きを与えてしまう。棋力は明らかに彼のほうが上だし、とても勝てる見込みはない。が、もう少しだけ…と指し継いだら、けっこうな勝負になっていた。
迎えた終盤戦の一部分を以下に記す(後手番)。

先手・小学生クン:1六歩、1八銀、1九香、2八玉、2九桂、3八金、4六歩、4九金、5三と、5五桂、5六歩、7六馬、8二飛 持駒:いろいろ
後手・一公:1一香、1四歩、2二玉、2五桂、2六歩、3一飛、3二金、3三角、3四銀、3五銀、3六歩、4一香、4七歩 持駒:金、歩…

以下の指し手。△3七歩成▲同桂△同桂成▲同金△3六桂▲3八玉△4八金▲2九玉△4九金▲3六金△同銀▲4九馬△3七金▲3九金△2七歩成 まで、一公の勝ち。

自玉は一手スキではないが、△4六銀と出る手は考えず、△3七歩成。ここで△3七金は重いと思った。▲同桂に△同桂成と、私は気のないそぶりで指す。小学生クンは、つられたように▲同金。私は△3六桂と王手したが、これが決め手。
この手を見て、小学生クンが考え込んでしまった。この手を軽視していたのは明らかだった。実はその前の△3七同桂成で、ちょっとしたテクニックを使った。ここでは▲3七同玉と取られるのがイヤだったので、私は△3七同桂成を、さして考えるふうでもなく指した。小学生は「流れ」から▲同金と取ったのだが、もしここで桂成を力強く指していたら、小学生クンに事の重大性を気づかれ、▲3七同玉と取られていたかもしれない。
小学生クンは力なく▲3八玉。以下数手進んで投了となったのだが、これも重大な逸機だった。投了の局面では▲2七同銀と取り、△同銀成(そう指すつもりだった)に▲2八歩と打てば、先手玉はけっこう寄らない形だった。
戻って、▲3六金に△同銀と取ったのが私の悪手。△3九金打▲2八玉を入れてから△3六銀なら、私の明快な勝ちだった。
小学生クンは、完全な勝ち将棋をひっくり返されて、イヤ気がさしていたのだろう。ちょっと淡泊な投了だった。
このあとは、大野八一雄七段に、再び角落ちで教えていただく。私は再び居飛車で挑む。序盤、上手の桂の活用を防いだ▲7五歩が機敏な一手。それでも上手は銀を繰りだしてきた。この局面の一部分が下。

上手・5四歩、6一飛、6五銀 持駒:歩
下手・5六歩、5七銀、5八金、6九玉、7五歩、7六銀、7七角、7八金

ここで私は▲6七銀と引く。意表を衝かれた大野七段は△6六歩と打ち、▲同銀右△同銀▲同銀と進み、1歩得の私が指しやすくなった。
ところが局後大野七段から、
「△6六歩では△7六銀と出る一手だった」
と言われ、青くなった。これなら歩を損せずに、銀交換が可能となる。上手に1歩があるとないとでは、あとの展開が全然違っていた。
本譜は私が快調に指し手を進める。△4七銀の絡め手には▲5七金と惜しげもなく打ち、△3六銀成には▲3七歩△3五成銀▲4七桂と、成銀を殺しに行く。
大野七段、非常手段の△4六成銀▲同金△5七銀には、▲4三歩が軽手。これを△同金は▲5二銀の飛車金両取りなので△4一金だが、私が歩頭に▲3五桂と跳ねたのが妙手。これは▲2三飛成までの詰めろなので△同歩だが、▲同金とこの金が捌けては、さすがに優勢を意識した。
数手進んで、局面は大詰めだ。大野七段、△6六銀と捨て、▲同玉に△9三角の王手飛車取り。私は慌てず▲7五歩。ここで大野七段が、
「うん、負けました」
と、投了した。
もう一度書く。ここで大野七段が、
「うん、負けました」
と、投了した。
読み飛ばした人のため、もう一度書く。ここで大野七段が、
「うん、負けました」
と、投了した。
念のため、もう一度書く。ここで大野七段が、
「うん、負けました」
と、投了した。
や、やった…!! 2009年2月20日、LPSA金曜サロンにて、大野七段に初めて角落ちで教わってから2年4ヶ月余。角落ち13戦目にして、記念すべき初勝利となったのだった。この歴史的快挙の目撃者は、大野七段と指導対局をしていた、W氏しかいなかった。否、W氏も熟考中だったので、みなが知らないところで、ひっそりと連敗がストップしたのだった。
「もう一局やりましょう」
と大野七段が誘ってくれるが、私はHon氏と練習対局を指すことにする。プロ棋士に対局を所望され?それを断るのもバチ当たりだが、せっかく大野七段に勝たせていただいたのに、惨敗でもして勝利の余韻をかき消されては、おもしろくないと思った。
そんなHon氏との一戦は、Hon氏の普通四間飛車。Hon氏には変態三間飛車の得意戦法があるが、毎度毎度変態というわけではないようだ。
終盤、自玉は受けの利かない二手スキとなっていた。簡単な部分図の符号を記せば、

先手・一公:4五成銀、4六歩、5三馬、5六歩、7六歩、7八銀、8七歩、8八玉、8九桂、9六歩、9九香 持駒:飛2、角…
後手・Hon氏:6一金、6六歩、6八金、7二銀、7三歩、8一桂、8二王 持駒:金、歩…

私は▲3一飛と下ろす。△5一歩▲同飛成△7一金打▲4四角△6二銀。この頑強な受けを軽視していた。私はいきおい▲同だが、ここでHon氏が6一の金で△6二同金上と取ったのが敗着となった。
私は▲7一竜。以下△同王▲6二角成△同王▲2二飛△5二歩▲5三銀△同王▲5四成銀△同王▲5二飛成△4四王▲4五金、まで私の勝ちとなった。
▲6二同馬には、7一の金で△6二同金右と取れば、▲同馬が「ナナメZ」で一手スキにならず、△7九角▲9八玉△7八金まで、Hon氏の勝ちだった。
Hon氏はなよなよした指し手が多いのだが、油断していると一発がある、ヘンな将棋である。オリジナリティあふれる変態将棋の使い手として、玄人筋での評価も高い。私も見習いたいと思った。
このあとはみんなで食事。だが、Kaz氏は奥さまと夕食を摂るとかで、一足先に帰宅した。さすがは愛妻家のKaz氏、将棋談議よりも家庭を取るのであった。
夕食は中華。腹もくちたあと、行きつけの喫茶店に入り、おしゃべり。
11時になり、閉店の音楽が鳴ると、
「この音楽を聞いてから店を出るのが習慣なんですよ」
と大野七段がそう言って、笑った。
コメント (6)
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