昼は会場の向かいにある「ゆで太郎」に入る。LPSA星組の充実は実感したが、そうは言っても自身は負け。食欲はないが、もりそばを強引に流し込んだ。
浜松町駅前の本屋に入って、戻ってくると、すぐに2回戦の開始となった。節電のため、進行が早めになっている。
メンバーは若干チェンジしたが、大将と私は不動だ。七将のW・Hanaちゃんもそう。偶数先手で、私は先手となった。本局は船戸陽子女流二段の扇子を前に置く。▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩。これもゴキゲン中飛車か。いまやゴキゲン中飛車は、後手番の主力戦法だ。
私は迷いながら、またも超速▲4六銀を選ぶ。みんなが指すから私も指しているが、これは優秀な戦法なのだろうか。大山康晴十五世名人だったら、▲5七銀・6七銀の二枚銀で対抗しそうな気がする。この手が、私自身の棋風にも合っているような気がする。
△5六歩▲同歩△同飛。ここで▲5五歩は、△同飛▲同銀△同角で、相手の研究にはまると思った。私は穏やかに▲5八金右。しかし後手氏はバンバン指し手を進めてくる。
数手後、△6五歩▲同銀△4五歩ときた。それが下の局面である。
先手・一公:1七歩、1九香、2五歩、2八飛、2九桂、3六歩、4六銀、4七歩、5五歩、5八金、6五銀、6七歩、6八金、7六歩、7八玉、8七歩、8八角、8九桂、9七歩、9九香 持駒:歩
後手:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3二銀、3三角、3四歩、4一金、4五歩、5一飛、6一金、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、9一香、9三歩 持駒:歩
▲4五同銀は△5五角▲同角△同飛で、後手捌け形。よって▲5七銀と引くのが本手だと思ったが、考えているうちに面倒くさくなり、歩得に目がくらんで、▲4五同銀と取ってしまった。前日の就寝は午前2時だった。明らかな寝不足で、そのツケがここにきた感じだ。以下△5五角▲同角△同飛▲5六銀右に、△6五飛が私の見落としていた手。同じ飛車を切るにしても△5六だと思い、それなら形よく▲同銀と取れるから先手よし、と考えていたのだからおめでたい。
▲6五同銀には△5五角と飛車香両取りに打てるのが大きい。ここまで後手氏の消費時間は3分。明らかに研究にはまっている感じで、ここで私は戦意を喪失した。
以降はこちらが攻められっ放し。▲8九飛廻りに△9七歩の垂らしが軽手。9九香のない端はもろく、歩成りをうまく受けられない。その数手後、△4五桂と気持ちよく跳ばれ、あとは受けても一手一手なので、ここで私は投了した。
団体戦だから早投げはしたくないが、これ以上相手に気持ちいい手を指させて、至福の時間を与えるほど、私はお人好しではない。
最悪の2連敗。さらにW氏も敗れ、大将と副将がまさかの連敗となってしまった。チームも2勝5敗で負け。柳の下にドジョウは2匹おらず、トップ2の成績不振が、そのままチームの成績に反映されてしまった。
誰かに慰めてもらいたくて、私はLPSAブースに向かう。船戸女流二段がいたが、
「時間切れで負けたんだ」
と手厳しい一言である。もうこの情報が伝わっているのか。ここにも私の居場所はないようだった。
石橋幸緒女流四段に会う。2局目の経過を言うと、
「大沢さんて、読めば分かるのに、それを省略して指しちゃうときあるよね」
と、なかなか核心を衝いた一言をもらう。たしかに私はそういうところがある。さすがに石橋女流四段、会員の将棋をよく見ている。
しばし頭を冷やし、3局目に臨む。本局は島井咲緒里女流初段の扇子。三たび私の先手で、▲7六歩△3四歩▲2六歩△4二飛。後手はゴキゲン中飛車ではなかったが、またも角道を止めない振り飛車だ。対して私は▲6六歩。なんで振り飛車側が角道を開けたままで、居飛車側が角道の歩を止めなければいけないのか。まったくいまいましいが、さりとてふつうに駒組を進めれば、△8八角成と来るのだろう。それは相手の土俵だ。もう後手の好きな手は指させない。それが「▲6六歩」だった。
私は5筋に位を張り、後手は△1五歩。▲同歩△同香▲1六歩△同香▲同香△1五歩▲2四歩△同角▲2七香△1六歩▲2四香まで、角香交換で私の勝勢になった。
しかしこの必勝の将棋が、だんだん怪しくなっていく。後手氏の勝負手に私が誤る、という展開が続き、終盤では完全にひっくり返っていた。
どうにも指す手がなく、私は目をつぶって▲7七桂。これに△7六銀なら先手が負けだったろう。
本譜は△8六銀(と桂を取る)▲同歩に△5七金と飛車銀両取りに打ってきたが、これには▲4六角の王手金取りがピッタリ。
後手氏は△5五歩だが、▲5七角△5六歩に、▲9三銀があった。△同桂▲同角成△同王▲8五桂、まで、何とか初勝利を挙げることができた。
チームも6勝1敗で勝利。うち1勝は、某氏必敗の将棋を、相手の時計の押し忘れで拾ったもの。チームの勝敗が同じだった場合、勝数で順位が決まるから、1勝でもおろそかには出来ない。この勝ちは大きかった。
今度は少しホッと胸をなでおろして、LPSAブースに向かう。と、松尾香織女流初段が、
「最後のワンツーフィニッシュ、見てましたよー」
とねぎらいの言葉をかけてくれた。うれしい。LPSA女流棋士も、けっこう私たちの将棋を見てくれてるんだな、と思った。
今回も、LPSAの女流棋士が多く見えている。いままで名前を出した意外では藤森奈津子女流四段、神田真由美女流二段、大庭美夏女流1級、大庭美樹女流初段などを拝見した。チームの応援はともかく、ここで自団体をアピールすることが大事だ。
LPSAブースの反対側では、将棋ペンクラブがブースを出している。将棋ペンクラブは今年、社団戦に初参戦した。その繋がりで、ここにも出展したのだ。
LPSAの女流棋士で、将棋ペンクラブへの入会方法が分からない、という人がいた。これは一般の将棋ファンも同じだと思うが、今回出展したことで、謎の団体の全貌が見え、入会者も多かったのではないかと推察する。
受付では、A幹事の奥さんがテキパキと働いている。奥さんと会うのは久しぶりだが、元気そうで何よりだった。奥さんと飲む酒は楽しい。一応旦那さんも交えて、また一献傾けたいものだ。
棋士の姿も何人かあった。石川陽生七段と勝又清和六段が話している。石川七段は、きょうのNHK杯将棋トーナメントで対局をしているはずだ。ちなみに石川七段の予選決勝の相手が、その勝又六段だった。
さて、泣いても笑っても、次が第1日の最終局である。私は気合を入れて、対局に臨んだ。
(つづく)
浜松町駅前の本屋に入って、戻ってくると、すぐに2回戦の開始となった。節電のため、進行が早めになっている。
メンバーは若干チェンジしたが、大将と私は不動だ。七将のW・Hanaちゃんもそう。偶数先手で、私は先手となった。本局は船戸陽子女流二段の扇子を前に置く。▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩。これもゴキゲン中飛車か。いまやゴキゲン中飛車は、後手番の主力戦法だ。
私は迷いながら、またも超速▲4六銀を選ぶ。みんなが指すから私も指しているが、これは優秀な戦法なのだろうか。大山康晴十五世名人だったら、▲5七銀・6七銀の二枚銀で対抗しそうな気がする。この手が、私自身の棋風にも合っているような気がする。
△5六歩▲同歩△同飛。ここで▲5五歩は、△同飛▲同銀△同角で、相手の研究にはまると思った。私は穏やかに▲5八金右。しかし後手氏はバンバン指し手を進めてくる。
数手後、△6五歩▲同銀△4五歩ときた。それが下の局面である。
先手・一公:1七歩、1九香、2五歩、2八飛、2九桂、3六歩、4六銀、4七歩、5五歩、5八金、6五銀、6七歩、6八金、7六歩、7八玉、8七歩、8八角、8九桂、9七歩、9九香 持駒:歩
後手:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3二銀、3三角、3四歩、4一金、4五歩、5一飛、6一金、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、9一香、9三歩 持駒:歩
▲4五同銀は△5五角▲同角△同飛で、後手捌け形。よって▲5七銀と引くのが本手だと思ったが、考えているうちに面倒くさくなり、歩得に目がくらんで、▲4五同銀と取ってしまった。前日の就寝は午前2時だった。明らかな寝不足で、そのツケがここにきた感じだ。以下△5五角▲同角△同飛▲5六銀右に、△6五飛が私の見落としていた手。同じ飛車を切るにしても△5六だと思い、それなら形よく▲同銀と取れるから先手よし、と考えていたのだからおめでたい。
▲6五同銀には△5五角と飛車香両取りに打てるのが大きい。ここまで後手氏の消費時間は3分。明らかに研究にはまっている感じで、ここで私は戦意を喪失した。
以降はこちらが攻められっ放し。▲8九飛廻りに△9七歩の垂らしが軽手。9九香のない端はもろく、歩成りをうまく受けられない。その数手後、△4五桂と気持ちよく跳ばれ、あとは受けても一手一手なので、ここで私は投了した。
団体戦だから早投げはしたくないが、これ以上相手に気持ちいい手を指させて、至福の時間を与えるほど、私はお人好しではない。
最悪の2連敗。さらにW氏も敗れ、大将と副将がまさかの連敗となってしまった。チームも2勝5敗で負け。柳の下にドジョウは2匹おらず、トップ2の成績不振が、そのままチームの成績に反映されてしまった。
誰かに慰めてもらいたくて、私はLPSAブースに向かう。船戸女流二段がいたが、
「時間切れで負けたんだ」
と手厳しい一言である。もうこの情報が伝わっているのか。ここにも私の居場所はないようだった。
石橋幸緒女流四段に会う。2局目の経過を言うと、
「大沢さんて、読めば分かるのに、それを省略して指しちゃうときあるよね」
と、なかなか核心を衝いた一言をもらう。たしかに私はそういうところがある。さすがに石橋女流四段、会員の将棋をよく見ている。
しばし頭を冷やし、3局目に臨む。本局は島井咲緒里女流初段の扇子。三たび私の先手で、▲7六歩△3四歩▲2六歩△4二飛。後手はゴキゲン中飛車ではなかったが、またも角道を止めない振り飛車だ。対して私は▲6六歩。なんで振り飛車側が角道を開けたままで、居飛車側が角道の歩を止めなければいけないのか。まったくいまいましいが、さりとてふつうに駒組を進めれば、△8八角成と来るのだろう。それは相手の土俵だ。もう後手の好きな手は指させない。それが「▲6六歩」だった。
私は5筋に位を張り、後手は△1五歩。▲同歩△同香▲1六歩△同香▲同香△1五歩▲2四歩△同角▲2七香△1六歩▲2四香まで、角香交換で私の勝勢になった。
しかしこの必勝の将棋が、だんだん怪しくなっていく。後手氏の勝負手に私が誤る、という展開が続き、終盤では完全にひっくり返っていた。
どうにも指す手がなく、私は目をつぶって▲7七桂。これに△7六銀なら先手が負けだったろう。
本譜は△8六銀(と桂を取る)▲同歩に△5七金と飛車銀両取りに打ってきたが、これには▲4六角の王手金取りがピッタリ。
後手氏は△5五歩だが、▲5七角△5六歩に、▲9三銀があった。△同桂▲同角成△同王▲8五桂、まで、何とか初勝利を挙げることができた。
チームも6勝1敗で勝利。うち1勝は、某氏必敗の将棋を、相手の時計の押し忘れで拾ったもの。チームの勝敗が同じだった場合、勝数で順位が決まるから、1勝でもおろそかには出来ない。この勝ちは大きかった。
今度は少しホッと胸をなでおろして、LPSAブースに向かう。と、松尾香織女流初段が、
「最後のワンツーフィニッシュ、見てましたよー」
とねぎらいの言葉をかけてくれた。うれしい。LPSA女流棋士も、けっこう私たちの将棋を見てくれてるんだな、と思った。
今回も、LPSAの女流棋士が多く見えている。いままで名前を出した意外では藤森奈津子女流四段、神田真由美女流二段、大庭美夏女流1級、大庭美樹女流初段などを拝見した。チームの応援はともかく、ここで自団体をアピールすることが大事だ。
LPSAブースの反対側では、将棋ペンクラブがブースを出している。将棋ペンクラブは今年、社団戦に初参戦した。その繋がりで、ここにも出展したのだ。
LPSAの女流棋士で、将棋ペンクラブへの入会方法が分からない、という人がいた。これは一般の将棋ファンも同じだと思うが、今回出展したことで、謎の団体の全貌が見え、入会者も多かったのではないかと推察する。
受付では、A幹事の奥さんがテキパキと働いている。奥さんと会うのは久しぶりだが、元気そうで何よりだった。奥さんと飲む酒は楽しい。一応旦那さんも交えて、また一献傾けたいものだ。
棋士の姿も何人かあった。石川陽生七段と勝又清和六段が話している。石川七段は、きょうのNHK杯将棋トーナメントで対局をしているはずだ。ちなみに石川七段の予選決勝の相手が、その勝又六段だった。
さて、泣いても笑っても、次が第1日の最終局である。私は気合を入れて、対局に臨んだ。
(つづく)