2011年1回目のLPSA芝浦サロンは、1月14日(金)に行った。その前の週の7日は中倉宏美女流二段の担当だったが、私がインフルエンザに罹り、無念の休み。
バカも風邪はひくのである。こんなケースは初めてで、残念だった。
14日の担当は、松尾香織女流初段。前年のマッカラン勝負に負けた罰として、松尾女流初段にマッカランを進呈した。18年の700ml。もっと高いのもあるが、酒の味が分からない松尾女流初段には、このくらいで十分である。
「今年はなにか勝負しないの?」
と松尾女流初段。マッカランをゲットした早々、もう次の勝負に目が行っている。
「今年もですか? こっちは勝っても、あまり得がないんですけど…じゃあやりましょうか」
「うん、やろう」
「じゃあ…年末まで12局指すとして、6勝6敗…いやそれは厳しいな。5勝7敗なら私の勝ち。私が4勝8敗だったら松尾先生の勝ちとしましょう。それでマッカランを贈呈します」
「今度は芋焼酎がいい」
「グッ…い、いいですよ」
という具合で、今年も松尾女流初段とのお酒勝負が始まったのだった。
午後6時、指導対局開始。しばらくして
「全部別の戦法を指しましょうか」
と、松尾女流初段がつぶやく。後手番の松尾女流初段の得意はゴキゲン中飛車。あとは松尾矢倉か。それ以外に何を指せるんだろうと思うが、不得手な将棋を指すことで、ハンデに代えたいようだ。
しかし私はキッパリと断った。上手の作戦を限定してまで勝ちたくない。
「(大沢さんが規定の勝数を挙げたら)私も何か差し上げましょうか」
「どうせ私が勝ちますから」
松尾女流初段の思いやりに対して、私も妙な受け答えをする。ここは「どうせ私が負けますから」が、意味の通じる会話だろう。
私の「どうせ私が勝ちますから」は、「最後は私が勝つけど、松尾さんはおカネを使う必要はないので、どうか無理をなさらずに…」という意味を込めた。
将棋は松尾女流初段の三間飛車。私は▲4六歩から▲4五歩と仕掛ける。松尾女流初段は△4二飛。以下数手進んで、▲4四歩△同銀に▲2五歩と継ぎ歩をしたのが、下の局面である。
上手・松尾女流初段:1一香、1三歩、2一桂、2四歩、3三角、3四歩、4二飛、4四銀、5二金、5四歩、6一金、6四歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、9一香、9四歩 持駒:歩2
下手・一公:1七歩、1九香、2五歩、2八飛、3六歩、3七桂、4八銀、5六歩、5七銀、5八金、6七歩、6九金、7六歩、7八玉、8七歩、8八角、8九桂、9六歩、9九香 持駒:なし
若干形は違うが、この局面は「将棋世界」の別冊付録で長沼洋七段が解説していて、正解は△4五銀だった。この手があるので、▲2五歩は疑問手なのだ。
しかし松尾女流初段はそうは指さないだろうと踏み、私はあえて▲2五歩と指したわけだった。
果たして松尾女流初段は△5三銀。やはり松尾女流初段、△4五銀とは指さなかった。しめしめと私は、▲3三角成~▲2四歩。
しかし松尾女流初段に△4七歩の叩きから△2六歩と垂らされ、分からなくなった。混乱した私は▲2三歩成とするが、△4五桂が幸便。以下も存分に捌かれ、58手までで投了を余儀なくされた。
研究熱心な方のために、△5三銀以下の棋譜を、改めて記しておく。
△5三銀▲3三角成△同桂▲2四歩△4七歩▲5九銀△2六歩▲2三歩成△4五桂▲同桂△同飛▲2六飛△4四角▲4六歩△8五飛▲7七桂(悪手)△8七飛成▲同玉△2六角▲7八玉△8六桂▲8八玉△4八歩成 まで、松尾女流初段の勝ち。
しかしおかしい。松尾女流初段が△5三銀と引いた時点では、私のほうが優勢ではなかったのか? スタッフのS氏がいたので、検討に加わっていただく。しかし△5三銀以降をどうやっても、下手(先手)よしの変化にならないので、呆れた。
結局、「△4五銀なら上手が明快な優勢だったが、△5三銀もなかなかの手で、この局面でもすでに下手がむずかしい」という結論になった。しかしどうも、釈然としない。ただ、▲2五歩が飛車先を重くして、見た目以上にヒドイ手だったようだ。
ううむ、松尾女流初段、恐るべし。しかし、芋焼酎12番勝負はまだ始まったばかり。これからが本当の戦いである。
バカも風邪はひくのである。こんなケースは初めてで、残念だった。
14日の担当は、松尾香織女流初段。前年のマッカラン勝負に負けた罰として、松尾女流初段にマッカランを進呈した。18年の700ml。もっと高いのもあるが、酒の味が分からない松尾女流初段には、このくらいで十分である。
「今年はなにか勝負しないの?」
と松尾女流初段。マッカランをゲットした早々、もう次の勝負に目が行っている。
「今年もですか? こっちは勝っても、あまり得がないんですけど…じゃあやりましょうか」
「うん、やろう」
「じゃあ…年末まで12局指すとして、6勝6敗…いやそれは厳しいな。5勝7敗なら私の勝ち。私が4勝8敗だったら松尾先生の勝ちとしましょう。それでマッカランを贈呈します」
「今度は芋焼酎がいい」
「グッ…い、いいですよ」
という具合で、今年も松尾女流初段とのお酒勝負が始まったのだった。
午後6時、指導対局開始。しばらくして
「全部別の戦法を指しましょうか」
と、松尾女流初段がつぶやく。後手番の松尾女流初段の得意はゴキゲン中飛車。あとは松尾矢倉か。それ以外に何を指せるんだろうと思うが、不得手な将棋を指すことで、ハンデに代えたいようだ。
しかし私はキッパリと断った。上手の作戦を限定してまで勝ちたくない。
「(大沢さんが規定の勝数を挙げたら)私も何か差し上げましょうか」
「どうせ私が勝ちますから」
松尾女流初段の思いやりに対して、私も妙な受け答えをする。ここは「どうせ私が負けますから」が、意味の通じる会話だろう。
私の「どうせ私が勝ちますから」は、「最後は私が勝つけど、松尾さんはおカネを使う必要はないので、どうか無理をなさらずに…」という意味を込めた。
将棋は松尾女流初段の三間飛車。私は▲4六歩から▲4五歩と仕掛ける。松尾女流初段は△4二飛。以下数手進んで、▲4四歩△同銀に▲2五歩と継ぎ歩をしたのが、下の局面である。
上手・松尾女流初段:1一香、1三歩、2一桂、2四歩、3三角、3四歩、4二飛、4四銀、5二金、5四歩、6一金、6四歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、9一香、9四歩 持駒:歩2
下手・一公:1七歩、1九香、2五歩、2八飛、3六歩、3七桂、4八銀、5六歩、5七銀、5八金、6七歩、6九金、7六歩、7八玉、8七歩、8八角、8九桂、9六歩、9九香 持駒:なし
若干形は違うが、この局面は「将棋世界」の別冊付録で長沼洋七段が解説していて、正解は△4五銀だった。この手があるので、▲2五歩は疑問手なのだ。
しかし松尾女流初段はそうは指さないだろうと踏み、私はあえて▲2五歩と指したわけだった。
果たして松尾女流初段は△5三銀。やはり松尾女流初段、△4五銀とは指さなかった。しめしめと私は、▲3三角成~▲2四歩。
しかし松尾女流初段に△4七歩の叩きから△2六歩と垂らされ、分からなくなった。混乱した私は▲2三歩成とするが、△4五桂が幸便。以下も存分に捌かれ、58手までで投了を余儀なくされた。
研究熱心な方のために、△5三銀以下の棋譜を、改めて記しておく。
△5三銀▲3三角成△同桂▲2四歩△4七歩▲5九銀△2六歩▲2三歩成△4五桂▲同桂△同飛▲2六飛△4四角▲4六歩△8五飛▲7七桂(悪手)△8七飛成▲同玉△2六角▲7八玉△8六桂▲8八玉△4八歩成 まで、松尾女流初段の勝ち。
しかしおかしい。松尾女流初段が△5三銀と引いた時点では、私のほうが優勢ではなかったのか? スタッフのS氏がいたので、検討に加わっていただく。しかし△5三銀以降をどうやっても、下手(先手)よしの変化にならないので、呆れた。
結局、「△4五銀なら上手が明快な優勢だったが、△5三銀もなかなかの手で、この局面でもすでに下手がむずかしい」という結論になった。しかしどうも、釈然としない。ただ、▲2五歩が飛車先を重くして、見た目以上にヒドイ手だったようだ。
ううむ、松尾女流初段、恐るべし。しかし、芋焼酎12番勝負はまだ始まったばかり。これからが本当の戦いである。