1月21日(金)のLPSA芝浦サロンは島井咲緒里女流初段の担当だった。島井女流初段は1月5日(水)も担当で、私もサロンに出向いたのだが、指導対局が満員だったため、そのまま回れ右をして帰宅した。
しかしそのときから体調がおかしく、このときすでにインフルエンザに罹っていたと思われる。もし5日に島井女流初段と指していたら、彼女にインフルエンザをうつしていたかもしれず、あぶないところだった。
17日(月)からウチの仕事の終業時間が午後6時になり、サロンに入ったのは7時ちょっと前だった。先客は、Kur氏、Si氏ら。
島井女流初段に新年の挨拶を交わし、早速指導対局に入る。
私の居飛車明示に島井女流初段は△4二飛。△6二王の次に△7二銀と上がり、早くも穴熊を放棄した。私は▲5七銀左。島井女流初段は、相手が急戦でくるときは、△3二銀型で待つ。何かのときに△4五歩と突き、角を交換してしまう狙いだ。9筋の端歩を突きあって、△5四歩。
この形になれば私が必ず指す手がある。▲9七角の山田流がそれだった。
以前櫛田陽一六段がLPSA金曜サロンの手合い係をしていたとき、
「私が△3二銀型で△5四歩と突かないのは、この手があるから」
と語ったことがある。
この局面で▲9七角と指す女流棋士は、清水市代女流六段と貞升南女流1級ぐらいしかいないと思うが、私は自信を持って着手した。もっとも、ほかの女流棋士は「スキあらば穴熊」なので、急戦自体指さない。
△4一飛に▲7九角。従来は▲8六角といったん上がって▲6八角と引き2四に利かせたが、現在は一手早く引く▲7九角が発見され、こちらが主流になっている。
かつて私がこの手を指したとき、櫛田六段に
「よく知ってますねー。ウエヤマさんは知りませんよ」
と、妙なホメ方をされたものだ。しかしさすがにウエヤマ先生は、この手をご存じだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/97/11f9ce195da0a3c3e6dde35f4087dfcc.png)
ここで島井女流初段の指し手を注目した。ふつうは△4五歩だろう。以下▲6六銀△6四歩▲2四歩△同歩▲同角△4四角…ぐらいが相場か。
ところがここからの島井女流初段の3手は、私の読みにまったくない手だった。
△4二角▲6六銀△3三銀
このままでは▲7九角が2四に利かないので、下手は▲6六銀が必須となる。
ということは、上手はわざわざ△4五歩と▲6六銀の交換をする必要もないわけだ。上手が何を指しても、下手は次に▲6六銀と指すのだから。
そこで島井女流初段が△4二角と引いたのが意味深長な手。さらに私の▲6六銀には△3三銀と上がって、ガッチリ2筋を守ったのだ。
見たことのない手だが、何と、これで下手から指す手がないのに驚いた。
指す手がない、は大袈裟で、実際は下手にも指す手がいっぱいあるのだろう。しかしこの3手にショックを受けたのは確かである。
島井女流初段が▲9七角戦法を受けたことはあまりないはずだ。たぶん研究もしていなかったと思う。
それでいて、島井女流初段はサラッと、この3手を指した。私はここに、島井女流初段の才能を見た。
△3三銀の局面は互角。しかし対局中に、こんなに相手に感心していては勝てない。
中盤以降も島井女流初段の捌きが冴える。▲4二歩成、と5一の飛車取りに成ったが、島井女流初段に待ってましたとばかり△5七飛成と切られ、返す刀で△3九角と打たれては、私も投了するしかなかった。文字どおりの、完敗だった。
局後、あの3手は経験があるのかと問うたら、
「思いつきで…」
と、事もなげに言った。そうだったのか…。いや、まいった。
感想戦が一息ついたころ、右で指しているSi氏が、
「島井先生とは何を賭けるんですか?」
と言った。
「しっ…これ以上対局者が増えると…島井先生は知らないんですから」
私は慌てて声をひそめる。
「?」
島井女流初段は怪訝そうだ。
「あ、いや…今年は何人かの女流棋士とお酒を賭けて勝負をしてまして…。宏美先生とはワイン、船戸先生とはマッカラン、松尾先生とは芋焼酎です」
私は島井女流初段に説明した。
「ああ…負けると、罰ゲームなんですか」
「そうですね、私がプレゼントするわけです。先生が負けても罰はありません。先生ともやりましょう。12局指して5勝7敗なら私の勝ち、4勝8敗なら先生の勝ちになります。先生への賞品はリラックマにしましょうか」
「リラックマは部屋じゅうにあふれてるんですよ。でも私はお酒はあまり飲まないし…甘いものがいいです」
「じゃあ『チョコレート勝負』にしましょう、とりあえず」
「それは張り合いが出ますねェ」
「今回の勝負の結果も入れますから」
「そうですか。ふふっ」
というわけで、島井女流初段とは「チョコレート勝負」が始まったのだった。
しかしそのときから体調がおかしく、このときすでにインフルエンザに罹っていたと思われる。もし5日に島井女流初段と指していたら、彼女にインフルエンザをうつしていたかもしれず、あぶないところだった。
17日(月)からウチの仕事の終業時間が午後6時になり、サロンに入ったのは7時ちょっと前だった。先客は、Kur氏、Si氏ら。
島井女流初段に新年の挨拶を交わし、早速指導対局に入る。
私の居飛車明示に島井女流初段は△4二飛。△6二王の次に△7二銀と上がり、早くも穴熊を放棄した。私は▲5七銀左。島井女流初段は、相手が急戦でくるときは、△3二銀型で待つ。何かのときに△4五歩と突き、角を交換してしまう狙いだ。9筋の端歩を突きあって、△5四歩。
この形になれば私が必ず指す手がある。▲9七角の山田流がそれだった。
以前櫛田陽一六段がLPSA金曜サロンの手合い係をしていたとき、
「私が△3二銀型で△5四歩と突かないのは、この手があるから」
と語ったことがある。
この局面で▲9七角と指す女流棋士は、清水市代女流六段と貞升南女流1級ぐらいしかいないと思うが、私は自信を持って着手した。もっとも、ほかの女流棋士は「スキあらば穴熊」なので、急戦自体指さない。
△4一飛に▲7九角。従来は▲8六角といったん上がって▲6八角と引き2四に利かせたが、現在は一手早く引く▲7九角が発見され、こちらが主流になっている。
かつて私がこの手を指したとき、櫛田六段に
「よく知ってますねー。ウエヤマさんは知りませんよ」
と、妙なホメ方をされたものだ。しかしさすがにウエヤマ先生は、この手をご存じだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/97/11f9ce195da0a3c3e6dde35f4087dfcc.png)
ここで島井女流初段の指し手を注目した。ふつうは△4五歩だろう。以下▲6六銀△6四歩▲2四歩△同歩▲同角△4四角…ぐらいが相場か。
ところがここからの島井女流初段の3手は、私の読みにまったくない手だった。
△4二角▲6六銀△3三銀
このままでは▲7九角が2四に利かないので、下手は▲6六銀が必須となる。
ということは、上手はわざわざ△4五歩と▲6六銀の交換をする必要もないわけだ。上手が何を指しても、下手は次に▲6六銀と指すのだから。
そこで島井女流初段が△4二角と引いたのが意味深長な手。さらに私の▲6六銀には△3三銀と上がって、ガッチリ2筋を守ったのだ。
見たことのない手だが、何と、これで下手から指す手がないのに驚いた。
指す手がない、は大袈裟で、実際は下手にも指す手がいっぱいあるのだろう。しかしこの3手にショックを受けたのは確かである。
島井女流初段が▲9七角戦法を受けたことはあまりないはずだ。たぶん研究もしていなかったと思う。
それでいて、島井女流初段はサラッと、この3手を指した。私はここに、島井女流初段の才能を見た。
△3三銀の局面は互角。しかし対局中に、こんなに相手に感心していては勝てない。
中盤以降も島井女流初段の捌きが冴える。▲4二歩成、と5一の飛車取りに成ったが、島井女流初段に待ってましたとばかり△5七飛成と切られ、返す刀で△3九角と打たれては、私も投了するしかなかった。文字どおりの、完敗だった。
局後、あの3手は経験があるのかと問うたら、
「思いつきで…」
と、事もなげに言った。そうだったのか…。いや、まいった。
感想戦が一息ついたころ、右で指しているSi氏が、
「島井先生とは何を賭けるんですか?」
と言った。
「しっ…これ以上対局者が増えると…島井先生は知らないんですから」
私は慌てて声をひそめる。
「?」
島井女流初段は怪訝そうだ。
「あ、いや…今年は何人かの女流棋士とお酒を賭けて勝負をしてまして…。宏美先生とはワイン、船戸先生とはマッカラン、松尾先生とは芋焼酎です」
私は島井女流初段に説明した。
「ああ…負けると、罰ゲームなんですか」
「そうですね、私がプレゼントするわけです。先生が負けても罰はありません。先生ともやりましょう。12局指して5勝7敗なら私の勝ち、4勝8敗なら先生の勝ちになります。先生への賞品はリラックマにしましょうか」
「リラックマは部屋じゅうにあふれてるんですよ。でも私はお酒はあまり飲まないし…甘いものがいいです」
「じゃあ『チョコレート勝負』にしましょう、とりあえず」
「それは張り合いが出ますねェ」
「今回の勝負の結果も入れますから」
「そうですか。ふふっ」
というわけで、島井女流初段とは「チョコレート勝負」が始まったのだった。