一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第5期マイナビ女子オープン一斉予選対局⑤・決勝戦始まる

2011-07-21 01:06:46 | 観戦記
マイナビルームL内の片隅で行われている、大抽選会に再び行く。進行の中に、ぬいぐるみをかぶった飯島栄治七段と佐藤紳哉六段がいた。お笑いキャラの位置づけらしい。飯島七段はともかく、佐藤六段はデビュー時「歌って踊れる棋士」を目指していたはずだが、方向転換してしまったのか。
ふたりは「週刊将棋」で、「深夜A時」を連載中である。かつての「対局日誌」や「対局室25時」のように、深夜の対局室をレポートしたものだろうか。
「ろうか」というのは、私は最近「週刊将棋」を買っていないからで、「深夜A時」は読んだことがない。よって、内容は推測である。
大抽選会の抽選方式は「ガラポン」で、1等は第5期マイナビ女子オープン5番勝負観戦、2等は第4期女王就位式招待であった。
何人か並んでいたが、辛抱強く待つ。あと2人になった。…というところで、なんとガラポンの玉がなくなってしまった。補充しなければならないということで、次は17時からとなった。
私の持っている抽選券は28枚(1+9×3)。何か賞品は当たるだろうが、別に当たらなくても構わない。ちょっとシラケて、フリースペースへ戻る。
あっ、女流棋士会の駒桜スペースで、室田伊緒女流初段と室谷由紀女流初段が、入会の勧誘をしている。1回戦で敗れたアイドル系女流棋士の、ツートップを受付に持ってきたのだ。女流棋士会、ニクイ人選である。
その向かい側では、LPSAがMinervaの受付をしている。こちらは藤森奈津子女流四段と松尾香織女流初段が受付をしている。お話にならない。
ぐずぐずしていたら、マイナビルームAに入りそびれてしまった。扉の外には決勝戦を戦う24選手が勢ぞろいし、入場を待っている。
全員が入ったあと、私もすべりこんだ。選手の配置は入口左から、渡部愛アマ-長谷川優貴アマ、加藤桃子奨励会2級-中倉宏美女流二段、鎌村ちひろアマ-鈴木環那女流初段、伊藤沙恵奨励会2級-村田智穂女流二段、里見香奈女流名人・女流王将・倉敷藤花・奨励会1級-渡辺弥生1級、貞升南女流1級-井道千尋女流初段、竹部さゆり女流三段-千葉涼子女流四段、山田朱未女流二段-島井咲緒里女流初段、清水市代女流六段-北尾まどか女流初段、岩根忍女流二段-中井広恵女流六段、野田澤彩乃女流1級-山口恵梨子女流初段、中澤沙耶アマ-藤田綾女流初段、だった。前者が先手で統一されているが、ここも伊藤-村田戦のみ、村田の先手だった。
定刻を32分遅れた14時52分、ついに決勝戦が始まった。
1回戦で勝っても、ここで負けては意味がない。負ければここでサヨウナラ。勝てば本戦トーナメント入りが決まり、ファンの前で喜びを報告できる。そして夢は「女王」へ。勝つと負けるとでは大違いなのである。
鈴木-鎌村戦。鈴木、一手損角換わりに出た。女流棋士でこの手を指すのは珍しいと思う。
まだ序盤なので、再び外の空気を吸いにいく。自販機でココアを買って、飲む。きょうパレスサイドビルで摂取した初めての飲食物だ。
戻ってみると、渡部-長谷川のアマチュア同士の一戦は、渡部が穴熊に潜っていた。渡部の棋風は穴熊向きではないと思うが、そうも言ってられないようだ。
16時06分。中井-岩根戦。岩根の三間飛車に、中井も左の香を上がっている。対振り飛車戦では左美濃を愛用している中井だが、重要な一戦では、穴熊を用いることもある。
そのほかの対局者にこれといった動きはなく、極めて静かだ。
16時12分。スタッフが、懸賞札を立てに来た。ここでの関心はただ一つ、懸賞金女王・鈴木環那に、何本立つかということだ。
中倉-加藤戦。中倉の振り飛車で、相穴熊になっていた。
「将棋世界」平成13年11月号の付録は、「若手女流棋士自戦記集」で、当時女流初段だった中倉も執筆している。矢内理絵子女流三段(当時)との一局を取り上げているが、戦型は飛車先交換相腰掛け銀で、格調高い将棋だった。いまの中倉はすっかり穴熊党に変貌しているから、このような将棋は見られない。本局、中倉に疲労が残っていなければいいがと思う。
結局、鈴木-鎌村戦は、8本の懸賞金が立った。これも十分すごい数なのだが、鈴木の1回戦が11本だったので、少ない気がする。ともあれ鈴木は、これに勝てば19万円を獲得することになる(ただし、実際の手取り額は少なくなる)。
山口-野田澤戦。野田澤が▲9六歩△9四歩から▲3五歩と仕掛けた。元気があってよい。
中井-岩根戦は、元奨励会同士の対戦なので、安心して観ることができる。岩根が、左手の中指をくちびるに当てて考えている。そんな岩根が、内田恭子キャスターに見える。時折、チラッ、チラッと中井を見る。その表情は午前中より魅力的だ。
中井は天を向いて、吐息をひとつ。このあたりの構想が、本局の勝敗を左右する。
この将棋の懸賞金は7本。前局は、中井が0、岩根が1本だった。しかしこのカードなら、7本ぐらいは当然である。
16時23分。井道-貞升戦。井道の振り飛車に、貞升は▲5七銀左の急戦。しかしすぐには仕掛けず、▲4七銀と上がった。
16時31分。中井、9四へ飛車を追いやられたが、何とか角と刺し違えた。中井の構想どおりには進んでない気がするが、どうか。
千葉-竹部戦。竹部の服装は異国情緒があふれていて、ちょっと独特。しかし、妙に似合っている。
千葉の持ち時間がまたも切れそうだ。千葉、持ち時間は気にせず、序盤から考えるタイプなのだろう。
16時36分。中井の玉は、1一に潜るヒマがなかったようだ。くちびるを半分開いて考えている。マニアにはたまらない光景である。
里見-渡辺戦。里見が大駒を成り、早くも優勢。渡辺も女流名人位戦B級リーグに入る実力者だが、本局は相手がわるい。本人も、戦う前から観念していた雰囲気があったが、それを責める気にはなれない。
16時39分。山田朱-島井戦。意外だが、島井が一番手で秒読みに入った。島井は早見え早指しだが、近年、やや翳りが見えている。このむずかしい中盤戦を、1分未満でどう乗り切るか。
少し遅れて、千葉も秒読みに突入。しかし千葉はここからが強い。
16時44分。清水-北尾戦。清水が両手で髪を掻きあげている。清水のこうした動作は珍しいと思う。
16時46分。鈴木、△6五歩。ふだんはハキハキとして笑顔を絶やさない鈴木だが、対局中はもちろん、むずかしい顔だ。しかしその顔がよい。
16時48分、中井、角を引いたあと、岩根をジロリ、ジロリ、と見た。女流タイトル19期の中井、さすがの迫力だ。「ガン飛ばし勝負」のほうは、中井が勝利したようだ。
岩根は▲5九金引と辛抱。この手はふつうの女流棋士には指せない。さすがに元奨励会、鍛えが入っている。
千葉、早くも勝勢になっている。優勢になれば時間はいらない、という考え方ができる。千葉はメリハリをつけて考えるタイプなのだ。
村田-伊藤戦。伊藤、ピシッと歩を打つ。白のハイソックスがまぶしい。
17時ちょうどになった。どこかで「夕焼け小焼け」のメロディーが流れている。まだどの将棋も終わっていない。このあたりからが、本当の激闘の幕開けである。
(つづく)
コメント (2)
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