16日(土)は、迷ったが、東京・竹橋へ「第5期マイナビ女子オープン・一斉予選対局」を観に行った。迷ったといっても前日からスーツを用意していたから、行く気まんまんではあったわけだが。
東京メトロ大手町駅で東西線に乗り換え、ひとつめの竹橋で降りる。改札口を出てパレスサイドビルの9階に上がれば、そこの「マイナビルームA」が対局会場だ。ちなみにパレスサイドビルは地下が7階まであり、地下6階には、ここに本社を構える毎日新聞社の印刷工場がある。地下7階には、そこで働く人たちのために大浴場まであるという(秋葉俊著「大東京の地下鉄道99の謎」二見文庫)。覚えていて損はない豆知識だ。
9時45分、9階の廊下を歩いていると、美少女がこちらへ歩いてきた。伊奈川愛菓女流1級だ。どこかへ電話をするようだった。
さらに歩くと、古河彩子女流二段と中村真梨花女流二段がそろって入室するところだった。
早くも女流棋士を3人、目にしたわけだが、これは序の口もいいところ。これからきょう1日は、女流棋士をイヤというほど目にするのだ。
どう考えても納得がいかない1,500円を入口で払うと、抽選券を1枚くれた。後ほどの抽選会で使えるのだろう。
そのまま、奥のマイナビルームAに入る。待たせることなく、9時51分、1回戦午前の部の、24名の選手がそろって入場した。
毎日コミュニケーションズの担当女性が開会の挨拶を行い、日本将棋連盟八段・中川大輔理事、LPSA女流四段・石橋幸緒代表理事の挨拶がこれに続いた。
午前の対局者は入口左から、長谷川優貴アマ-伊奈川女流1級、井道千尋女流初段-石本さくらアマ、里見香奈女流名人・女流王将・倉敷藤花・奨励会1級-本田小百合女流二段、中村女流二段-貞升南女流1級、大庭美樹女流初段-鎌村ちひろアマ、松尾香織女流初段-鈴木環那女流初段、迎琉歌アマ-渡辺弥生女流1級、安食総子女流初段-渡部愛アマ、久津知子女流初段-中井広恵女流六段、北村桂香アマ-岩根忍女流二段、関根紀代子女流五段-村田智穂女流二段、古河女流二段-伊藤沙恵奨励会2級、の24名である(以降の敬称は、略す)。
いきなり席に座らず振り駒を行い、先手番を引いた選手が、観戦客の向かって左側に座る。ただ、何かの手違いか、中村-貞升戦のみ、貞升が先手だったようだ。
10時きっかり、ここに第5期マイナビ女子オープンの火ぶたが切られた。
序盤の駒組合戦の合間をぬって、勝敗予想を投票しに行く。今期は1回戦の午前、午後と、決勝戦の計3回で、抽選のチャンスがある。チャンスは3倍、という考え方もあるが、プレゼントが当たる人数が同じなら、あまり意味はない。
勝者にチャッチャッと○を付け、投函。懸賞金スポンサーのほうは、今期も賛同させていただいたが、カードの公表は省略する。本当はすべてのカードに懸けたいが、予算の関係で厳選しているだけだからだ。なお今回は、1口につき抽選券が3枚いただけた。1万円の懸賞金は庶民には大金だから、このくらいの見返りは当然である。
マイナビルームAに戻る。まだ序盤とあって、各選手の身体的動作は少ない。
マイナビ予選は、2連勝通過。1回戦の勝者同士が午後3時すぎに決勝戦を行い、本戦入り12名が決まる。出場選手は、ファンの前に直接雄姿を見せられる、絶好の機会だ。
LPSAの選手を見て回る。私はLPSAのファンクラブに入っているし、実際知己も多いが、女流棋士会とLPSAの応援は平等にしている。懸賞金も、どちらに渡ろうが一向に構わない。有意義に使ってくれればいいだけだ。
LPSAの選手は、相変わらず紺のブレザーを着用していた。マイナビ一斉予選対局は、48戦士の一大決戦であると同時に、華やかさを競う場でもあると思っている。しかるにLPSAのこのブレザーは何だ。私はこの地味な服装をやめろと毎年主張しているのだが、LPSAは聞き入れてくれない。
何も派手な服装にしろとか、高価な服を着ろとか言っているのではない。ふだんの公式戦で指すときの自由な服装で、将棋に専念してほしいのだ。
そこへ行くと、例えば岩根は、若奥様らしい、ラフな服装。とても真剣勝負を指しているとは思えないが、そこが女性の戦いらしくてよい。さっぱりした髪型がよく似合っているが、ただ、きょうの岩根はちょっとお疲れ気味の顔だ。
対する北村アマは、制服着用。これは「制着」ならぬ「正着」。女子中学生や高校生は、制服を着られるときに着たほうがいい。着たくても着られなくなるときが、すぐに来るからだ。
10時13分、里見が扇子を仰ぐ。揮毫がよく見えないが、大山康晴十五世名人の書だろうか。きょうの里見は黒服のスーツで、マンガ「イヤハヤ南友」に出てくるイヤハヤ十人衆のひとり、神薔薇あけみに似ている。…あれっ!? 里見の顔が、広瀬章人王位に見える。
そんなはずはない、と否定する。里見は▲6九飛と引いた。
古河-伊藤戦など4局の後方に、三脚が立てられている。そこにはウェブカメラが取り付けられており、これを通じてナマの盤面が全国に配信されるようだ。
それは結構だが、手作業で入力した棋譜(盤面)を配信する従来の方法ではいけないのだろうか。
長谷川アマが考えている。小柄だが、将棋は強い。将棋は、大人も子供も、女性も男性も、老いも若きも、同じルールで遊べる稀有な競技である。
貞升、中村の四間飛車に対して、飛車先突かずの右四間飛車に構えている。貞升は女流棋界には珍しい、居飛車の急戦派。ガチガチの穴熊には目もくれず、薄い将棋で挑む姿勢は好感が持てる。
松尾-鈴木戦は、松尾の「先手中飛車」に鈴木の居飛車穴熊。秒読みに弱い松尾は、まだ平静だ。とても落ち着いた表情である。向かって右に座っている鈴木は、上から下までオレンジ色の服装。注目の「脚」は、あちら側に向いていた。
中井-久津戦は、北海道出身同士。久津の四間飛車に、中井の天守閣四枚美濃。どちらも得意の戦形だ。
中井の先には、かつての愛弟子・渡部アマが安食とまみえている。渡部アマは現在、LPSAのツアー女子プロだが、出場できるのはLPSAの公認棋戦と女流エントリー棋戦に限られている。そのほかの棋戦に出場するには、マイナビで活躍して名をさしめるのが、一番の近道だ。
将棋は相振り飛車。一時期、居飛車党に転身したとも伝えられたが、将棋は自分の意思で自由に指し手を選べるゲームだ。居飛車だろうと振り飛車だろうと、指したい手を指せばよいのだ。
大庭-鎌村戦。大庭のブレザーはよく似合っている。鎌村アマはラフな服装で、ちょっとパレスサイドビルに寄りました、という感じ。
10時24分。岩根-北村戦。岩根、相変わらずシブイ顔だ。北村アマ、音を立てずに▲6七銀。しかし記録係がそっぽを向いていて、気付いてない。彼は奨励会を退会するか、名人になるかのどちらかだろう。
迎アマ、対局相手の渡辺をじっと見ている。迎アマはまだ小学生に見える。チビッ子は盤を見ずキョロキョロするが、指し手は的確だから始末がわるい。
スタッフ氏が懸賞札を立てにくる。松尾-鈴木戦には、何と11本の札が立った。昨年は鈴木-室田伊緒女流初段戦に8本、鈴木-藤田戦に7本が立ち、懸賞金女王の名をほしいままにした鈴木だが、今年は記録更新の11本である。むろん中には松尾に懸けたファンもいるだろうが、ここは鈴木の面目躍如であった。
迎アマ、▲6五銀。手つきもしっかりしている。
渡部アマ、ハンドタオルを口に当てるいつものポーズ。しかし体調が悪そうだ。渡部アマはもっとモリモリ食べて、体力をつけなければならない。
10時35分。どの対局も、形勢不明。勝負はまだまだ、これからである。
(つづく)
東京メトロ大手町駅で東西線に乗り換え、ひとつめの竹橋で降りる。改札口を出てパレスサイドビルの9階に上がれば、そこの「マイナビルームA」が対局会場だ。ちなみにパレスサイドビルは地下が7階まであり、地下6階には、ここに本社を構える毎日新聞社の印刷工場がある。地下7階には、そこで働く人たちのために大浴場まであるという(秋葉俊著「大東京の地下鉄道99の謎」二見文庫)。覚えていて損はない豆知識だ。
9時45分、9階の廊下を歩いていると、美少女がこちらへ歩いてきた。伊奈川愛菓女流1級だ。どこかへ電話をするようだった。
さらに歩くと、古河彩子女流二段と中村真梨花女流二段がそろって入室するところだった。
早くも女流棋士を3人、目にしたわけだが、これは序の口もいいところ。これからきょう1日は、女流棋士をイヤというほど目にするのだ。
どう考えても納得がいかない1,500円を入口で払うと、抽選券を1枚くれた。後ほどの抽選会で使えるのだろう。
そのまま、奥のマイナビルームAに入る。待たせることなく、9時51分、1回戦午前の部の、24名の選手がそろって入場した。
毎日コミュニケーションズの担当女性が開会の挨拶を行い、日本将棋連盟八段・中川大輔理事、LPSA女流四段・石橋幸緒代表理事の挨拶がこれに続いた。
午前の対局者は入口左から、長谷川優貴アマ-伊奈川女流1級、井道千尋女流初段-石本さくらアマ、里見香奈女流名人・女流王将・倉敷藤花・奨励会1級-本田小百合女流二段、中村女流二段-貞升南女流1級、大庭美樹女流初段-鎌村ちひろアマ、松尾香織女流初段-鈴木環那女流初段、迎琉歌アマ-渡辺弥生女流1級、安食総子女流初段-渡部愛アマ、久津知子女流初段-中井広恵女流六段、北村桂香アマ-岩根忍女流二段、関根紀代子女流五段-村田智穂女流二段、古河女流二段-伊藤沙恵奨励会2級、の24名である(以降の敬称は、略す)。
いきなり席に座らず振り駒を行い、先手番を引いた選手が、観戦客の向かって左側に座る。ただ、何かの手違いか、中村-貞升戦のみ、貞升が先手だったようだ。
10時きっかり、ここに第5期マイナビ女子オープンの火ぶたが切られた。
序盤の駒組合戦の合間をぬって、勝敗予想を投票しに行く。今期は1回戦の午前、午後と、決勝戦の計3回で、抽選のチャンスがある。チャンスは3倍、という考え方もあるが、プレゼントが当たる人数が同じなら、あまり意味はない。
勝者にチャッチャッと○を付け、投函。懸賞金スポンサーのほうは、今期も賛同させていただいたが、カードの公表は省略する。本当はすべてのカードに懸けたいが、予算の関係で厳選しているだけだからだ。なお今回は、1口につき抽選券が3枚いただけた。1万円の懸賞金は庶民には大金だから、このくらいの見返りは当然である。
マイナビルームAに戻る。まだ序盤とあって、各選手の身体的動作は少ない。
マイナビ予選は、2連勝通過。1回戦の勝者同士が午後3時すぎに決勝戦を行い、本戦入り12名が決まる。出場選手は、ファンの前に直接雄姿を見せられる、絶好の機会だ。
LPSAの選手を見て回る。私はLPSAのファンクラブに入っているし、実際知己も多いが、女流棋士会とLPSAの応援は平等にしている。懸賞金も、どちらに渡ろうが一向に構わない。有意義に使ってくれればいいだけだ。
LPSAの選手は、相変わらず紺のブレザーを着用していた。マイナビ一斉予選対局は、48戦士の一大決戦であると同時に、華やかさを競う場でもあると思っている。しかるにLPSAのこのブレザーは何だ。私はこの地味な服装をやめろと毎年主張しているのだが、LPSAは聞き入れてくれない。
何も派手な服装にしろとか、高価な服を着ろとか言っているのではない。ふだんの公式戦で指すときの自由な服装で、将棋に専念してほしいのだ。
そこへ行くと、例えば岩根は、若奥様らしい、ラフな服装。とても真剣勝負を指しているとは思えないが、そこが女性の戦いらしくてよい。さっぱりした髪型がよく似合っているが、ただ、きょうの岩根はちょっとお疲れ気味の顔だ。
対する北村アマは、制服着用。これは「制着」ならぬ「正着」。女子中学生や高校生は、制服を着られるときに着たほうがいい。着たくても着られなくなるときが、すぐに来るからだ。
10時13分、里見が扇子を仰ぐ。揮毫がよく見えないが、大山康晴十五世名人の書だろうか。きょうの里見は黒服のスーツで、マンガ「イヤハヤ南友」に出てくるイヤハヤ十人衆のひとり、神薔薇あけみに似ている。…あれっ!? 里見の顔が、広瀬章人王位に見える。
そんなはずはない、と否定する。里見は▲6九飛と引いた。
古河-伊藤戦など4局の後方に、三脚が立てられている。そこにはウェブカメラが取り付けられており、これを通じてナマの盤面が全国に配信されるようだ。
それは結構だが、手作業で入力した棋譜(盤面)を配信する従来の方法ではいけないのだろうか。
長谷川アマが考えている。小柄だが、将棋は強い。将棋は、大人も子供も、女性も男性も、老いも若きも、同じルールで遊べる稀有な競技である。
貞升、中村の四間飛車に対して、飛車先突かずの右四間飛車に構えている。貞升は女流棋界には珍しい、居飛車の急戦派。ガチガチの穴熊には目もくれず、薄い将棋で挑む姿勢は好感が持てる。
松尾-鈴木戦は、松尾の「先手中飛車」に鈴木の居飛車穴熊。秒読みに弱い松尾は、まだ平静だ。とても落ち着いた表情である。向かって右に座っている鈴木は、上から下までオレンジ色の服装。注目の「脚」は、あちら側に向いていた。
中井-久津戦は、北海道出身同士。久津の四間飛車に、中井の天守閣四枚美濃。どちらも得意の戦形だ。
中井の先には、かつての愛弟子・渡部アマが安食とまみえている。渡部アマは現在、LPSAのツアー女子プロだが、出場できるのはLPSAの公認棋戦と女流エントリー棋戦に限られている。そのほかの棋戦に出場するには、マイナビで活躍して名をさしめるのが、一番の近道だ。
将棋は相振り飛車。一時期、居飛車党に転身したとも伝えられたが、将棋は自分の意思で自由に指し手を選べるゲームだ。居飛車だろうと振り飛車だろうと、指したい手を指せばよいのだ。
大庭-鎌村戦。大庭のブレザーはよく似合っている。鎌村アマはラフな服装で、ちょっとパレスサイドビルに寄りました、という感じ。
10時24分。岩根-北村戦。岩根、相変わらずシブイ顔だ。北村アマ、音を立てずに▲6七銀。しかし記録係がそっぽを向いていて、気付いてない。彼は奨励会を退会するか、名人になるかのどちらかだろう。
迎アマ、対局相手の渡辺をじっと見ている。迎アマはまだ小学生に見える。チビッ子は盤を見ずキョロキョロするが、指し手は的確だから始末がわるい。
スタッフ氏が懸賞札を立てにくる。松尾-鈴木戦には、何と11本の札が立った。昨年は鈴木-室田伊緒女流初段戦に8本、鈴木-藤田戦に7本が立ち、懸賞金女王の名をほしいままにした鈴木だが、今年は記録更新の11本である。むろん中には松尾に懸けたファンもいるだろうが、ここは鈴木の面目躍如であった。
迎アマ、▲6五銀。手つきもしっかりしている。
渡部アマ、ハンドタオルを口に当てるいつものポーズ。しかし体調が悪そうだ。渡部アマはもっとモリモリ食べて、体力をつけなければならない。
10時35分。どの対局も、形勢不明。勝負はまだまだ、これからである。
(つづく)