一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

LPSA芝浦サロン・船戸陽子女流二段10・船戸陽子を堪能する

2011-08-12 01:03:56 | LPSA芝浦サロン
1月25日は火曜日だったが、LPSA芝浦サロンは船戸陽子女流二段が担当だったので、ふらふらとお邪魔した。
午後7時前にサロンに入ると、客がいない。月曜日は駒込マンデーレッスン、金曜日は駒込金曜サロンの流れがあるからある程度の集客は見込めるが、火曜と水曜は厳しい。もっともそれは経営側から見ればの話であって、私からすれば、船戸女流二段が担当のときは客が少ないほうが、極論すれば誰もいないほうが、ふたりの時間を楽しめるからよい。今回はその狙いがピッタリはまった形となった。
本日の手合い係は大庭美樹女流初段。お姉さんの美夏女流1級も遊びに来て、指導対局前に雑談をした。
話の中身は、1月21日(金)に行われた「ジョナ研」のことだ。
大庭姉妹「(そんなに楽しいなら)私たちも駒込に行こうかな」
船戸女流二段「偶然を装って」
3人は、ジョナ研の存在が気になるようである。女流棋士がジョナ研に参加してくれるならそれはWelcomeだが、大庭姉妹と船戸女流二段が、そんなに将棋が好きだとは思われない。ジョナ研が芝浦サロンの脅威になる可能性を感じて、3人が警戒したものだろう。
いよいよ船戸女流二段との指導対局である。しかし客は私ひとりだから、私は緊張の極みだ。そこへ
「まだ2時間あるからたっぷり指せますよ」
と船戸女流二段が言った。確かにそうで、それ以外の意味は見つからないのだが、なんだかミョーに興奮する。きょうは最初から最後まで、このもやもやした思いが私の頭の中を支配した。
▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩。
通常なら上手(後手)の振り飛車だが、船戸女流二段は雁木も得意だから、まだ上手の作戦は分からない。その後も△6四歩や△7四歩と態度を決めず、16手目に△7二飛と寄った。袖飛車だ。
私は自然に駒組を進め、▲2四歩△同歩▲2三歩△同金▲2四角と攻勢に出た。
改めて、広い室内に船戸女流二段と私、それに大庭手合い係の3人。
顔を上げれば盤上没我の船戸女流二段の顔がある。まったく、何という美しさであろうか。思わず見とれてしまう。
△2二歩と凹まして下手好調。しかしここからの数手がひどかった。

ここで▲2五桂がどうだったかと思うが、まあ、そう指した。しかし△2四金に▲1三桂成が悪手だった。△2三歩▲2二歩に、△1三桂と成桂を取られて、飛び上がった。船戸女流二段も笑いをかみ殺して、
「▲1三桂不成とすべきでしたね」
という。やはり平常心を欠いていたのだろう。大ポカだった。
それでも私は飛車切りの猛攻を仕掛け、▲4三金と貼りつく。まだむずかしい局面である。
と、あれはどの局面のときだったか、大庭手合い係が
「何かあったら知らせてください」
といって事務所に引き込もうとするので、3人とも同じことを考えて?顔を見合わせて、大笑いになった。
何かあってからでは遅いのだが、まあ、私にそんな度胸はない。
しかし実際、大庭手合い係に事務所に戻られてみると、絶対に起こり得ない状況に、私の頭はスパークした。ついに、この部屋に船戸女流二段と私だけになったのだ!!
船戸女流二段を恐る恐る眺めてみる。彼女は私の視線に気づいているのかいないのか、体を前傾姿勢にし、くちびるに指をあて、読みに没頭している。それはまるで、モデルがポーズを取っているかのようだった。
何て綺麗なんだろう…。本当に、爆発しそうだった。
しそうではあったが、そこへ大庭手合い係が戻ってくる。
ところが私が平静を取り戻すと、再び大庭手合い係が再び事務所に消える…というふうに、その後もおかしな展開が繰り返されたのだった。
そんななか局面は進行し、大詰めを迎えた。私は▲2一飛成と角取りに迫る。
しかし、ここで自陣を見る船戸女流二段ではなかった。船戸女流二段の目は私の玉に注がれている。それを見て、ああ、私の玉は、詰まされるんだな、と思った。ふたりの濃密な時間に、終わりのときが来ようとしていた。
船戸女流二段、じっくり読みを入れて、△6八角成。私は、▲同歩。
船戸女流二段、ビシリと重い駒音で、△8九銀と打った。
「そうか…。負けました」
と私は投了。濃密な一局が終わった。本当に、船戸陽子を堪能した思いだった。
「いやしかし厳しい」
私は嘆息する。怪訝そうなふたりに、私は続けた。
「鼻血が出そうでした」
「興奮した」
「ムラムラしてしまいました」
神聖なる指導対局の場で、指導の女流棋士にこんな思いを抱き、それを吐露することが不謹慎極まりないと承知しつつ、私は言わずにはおれなかった。
本局、船戸女流二段は、たったひとりの指導対局にもかかわらず、真剣に対局に臨んでくれた。その船戸女流二段に指導を仰ぎたい将棋ファンは、全国に大勢いる。その中のひとりである私は、何の障害もなくそれが叶えられる、稀有な状況にある。その幸せを私はきょう、改めてかみしめたのだった。

参考までに、上に記した局面から投了までの棋譜を、以下に記しておく。

▲2五桂△2四金▲1三桂成△2三歩▲2二歩△1三桂▲3四歩△3五歩▲2一歩成△同銀▲2四飛△同歩▲4三金△2八飛▲3七銀△3八飛成▲4四金△6五歩▲3三歩成△6六歩
▲同金△6七歩▲同玉△4七竜▲7八玉△6七歩▲5三銀△6八歩成▲同金△5九角▲7四歩△7六歩▲同銀△7七歩▲同桂△3七竜▲6九歩△5二金▲4二歩△5一王
▲4三と△6三金▲7三歩成△同金▲5二と△同飛▲同銀成△同王▲2三飛△3九竜▲5三金△6一王▲2一飛成△6八角成▲同歩△8九銀(投了図)
まで、106手で船戸女流二段の勝ち。
コメント (10)
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