一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

沖縄旅行延長戦・運命の一日(後編)

2011-08-26 22:27:00 | 旅行記・沖縄編
しかし…と思う。たかだかLPSAの電話番号を調べるために、100円も遣うのは、少し費用対効果がわるくないか? わるいと思う。それに、仮に番号を調べてLPSAに掛けたとしても、もう遅いのだ。ワインサロンの代わりの受講者が、補充されるわけではないからだ。
私が約束をすっぽかすことで、主宰の船戸陽子女流二段は、肩すかしを喰うことになるが、その件は次回のワインサロンで謝ればいい。
いままで節約に節約を重ねて、今回の旅行を続けてきた。ここで最後の節約をしようと思った。私は硬貨を放し、ポケットから手を出した。
空席待ちカウンターに戻る。その頭上の掲示板には、「種別B」の数字が「15」で止まったままだ。
ときに18時40分。18時55分発の第8便の空席待ち番号が呼ばれた。
相変わらず、種別Aが優先的に呼ばれる。これはダメだとその場を離れようとしたが、まだ係の人がごちゃごちゃやっている。私は歩を止める。案内嬢が、マイクを手に取った。
「空席待ち番号のお知らせをいたします。種別Bの15番から18番のお客様――」
や…やった…!! ついに、ついに東京に帰れることになった…!! もう…もう東京には一生帰れないかと思った。ホッとした。心から、ホッとした。
カウンターで、改めてチケットを発券してもらう。振り返ると、例のモデル美人と目が合った。自分が先に脱出してしまい、自分だけが幸せになってしまい、申し訳ない…。
でも私だってきょうは朝早く起きて、それなりの努力をしたから、今回空席を得ることができたのだ。
しかし取り損ねた人は、そうは思わない。私の幸福をねたむ。
ただ、ここにいるみんなとは、朝から空席待ちをしていた、「戦友」でもある。
彼らが、この便を含めたきょうの残り3便に乗って東京・羽田に行けるよう、私は心から祈った。
私は黙って彼女の横をすり抜けた。
私の席は2階席の78H。非常口扉の列だ。なにしろ空席待ちの身だから、席もヘンなところしか残っていない。しかし1階より2階のほうが機内からの眺めがよさそうで、私は2階席は好きである。ここは前の席からの距離があるので、脚も長く伸ばせる。スッチーがこちらを向けて座ってくれるのがちょっと恥ずかしいが、けっこういい席といえた。
大バッグはカウンターへ預けたが、酒類は預けられない。ちょっと離れた前の席の下へ、それらを入れる。旅先で酒を買うと、かようにめんどうである。大量に購入した場合は、割高でも配送したほうがよい。
出発に時間を要したので、定刻より約20分遅れて、ジャンボジェットは離陸した。
2階席の担当スッチーは2人。いや3人だったか。うちひとりは小沢真珠と中越典子を足して2で割ったような美人だ。彼女がスッチーの主任格のようで、ほかのスッチーにあれこれ指示を出していた。ちょっと、堪らない感じである。
無料の飲み物をいただいて、あとは寝るだけなのだが、スッチーの動きが気になって、眠ることができない。
帰りはちょっと優雅に、アイスクリームを買ってみる。いままで節約に節約を重ねてきたのに、こういうところで散財する。スッチーの点を稼ぎたいからだが、やってることがバカみたいだ。
「ハーゲンダッツ・バニラ」300円。高い。ただ、高級アイスは、内地を旅行して特急列車に乗ったときなど、よく食す。ささやかな贅沢である。
しかしいつも思うのだが、このアイスは固い。ピッ!
「あっ!」
アイスのカケラが、宙を飛んだ。
たまたま近くにいた、中越典子似のスッチーも驚いた。
「いま、飛びましたねえ」
とこれは私。
「固いですから」
とスッチー。ちょっと場の空気がなごむ。
続いて、機内販売の商品を買う。これは親戚の子供用だ。また、あのスッチーが相手をしてくれた。
つい、多めに商品を買ってしまう。3点で8,100円。
これで、機内でやることはすべて終えた。音楽を聴く。KARA「GO GO サマー!」が耳に心地よい。ただし、これは行きにも聴いている。事情が許せば、行きと帰りは違う航空会社にしたい。音楽も機内誌も、違うものを楽しめる。
ちなみにこれが陸路なら、行きと帰りは違うルートにしたほうがよい。例えば東京-名古屋を往復するなら、行きは中央本線、帰りは東海道本線という按配だ。これで旅の楽しさに幅が出る。
羽田着定刻21時15分、から数分遅れて、飛行機は羽田空港に到着した。
早速出口に向かうが、荷物を預けているので、まだモノレールに乗るわけにはいかない。
乗客のひとりが、「今回の旅行は、すべてが長い!」と嘆いていたが、そのとおりだと思う。
乗客が預けた荷物が多く、ベルトコンベアーがなかなか回らない。ようやくコンベアーが動き、自分のカバンを見つけた私は、すぐさまモノレールへ向かった。
船戸女流二段からいただいたパスケースに入っているSuicaは、もう残高不足だ。
現金で、「モノレール&山手線内割引きっぷ」を買う。モノレールと山手線内の電車に乗れて500円という、お得な切符だ。
浜松町に着き、京浜東北線に乗り換える。長かった沖縄旅行の、最終ランナーだ。31本目の公共交通機関である。
ようやっと家に着いたときは、午後11時近くになっていた。
旅先から戻ると、同じ家なのに、違う世界に紛れこんだように錯覚する。一夜が明けてから、いつもの日常に戻る感じだ。
ああう…急激に疲れが出てきた。旅は気を張るのだ。もう、すぐにでも眠りたいが、まだやることがある。ブログのコメントチェックだ。私のブログは「変態ブログ」の異名があるが、コメントは良心的なものばかりで、とても元気づけられる。これがブログ執筆の活力源になっているといっても過言ではない。
今回はさらにLPSAのホームページも開き、電話番号を確認する必要があろう。
船戸女流二段の笑顔が脳裏に浮かぶ。きょう、彼女にお土産は渡せなかったが、それはいつでも渡せる。ああ、次はいつ、会えるのだろう。
私は嬉々として、ノートパソコンのフタを開けた。
(完)
コメント (2)
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