日付変わってきょう29日(木)は、倉敷藤花戦挑戦者決定戦・清水市代女流六段対室谷由紀女流初段の一戦が指される。清水女流六段が勝てば貫禄勝ち。室谷女流初段の勝ちならば、殊勲の銀星。
どちらも悔いのない、いい将棋を指してください。両者とも、等しく応援いたします。
17日(土)は、川口市にある「大野教室」に行った。大野教室とは――。めんどうなので、省略。
それにしても、最近、大野教室に行く回数が増えた。もっとも、将棋を指すことより、そのあとの食事会が目当てなのが情けない。
入室すると、先客が数名いた。W氏、Kun氏、His氏、将棋関係者のMi氏、それと少年。茨城から遠征のHis氏は、LPSA木曜ワインサロン、LPSA芝浦サロン、そしてこの大野教室と三連投である。アマ将棋界は、このような将棋好きのオッサンに支えられているのだ。
早速、大野八一雄七段に角落ちで教えていただく。植山悦行七段には居飛車を勧められているが、私はヒトの教えは守らないので、本局は中飛車に構えた。
序盤、▲3八玉△2四歩に▲2八玉と寄ったのが危険な手。すかさず△2二飛と回られ、作戦負け気味になった。以下普通に指し手を進めると、▲3八銀△2五歩▲○○○△2六歩となるが、この順は上手に1歩を持たれておもしろくない。5筋の歩交換は上手が△5四歩と打つことになるが、2筋の歩交換は上手の駒台に歩が乗ったままだから、下手はこの順を回避すべき、が大野七段の持論なのだ。
よって▲2八玉では▲4八銀が先で、同じく△2二飛なら、▲3六歩△2五歩に▲3七銀が間に合い、上手の歩交換を防げる。
この順は大野七段に教わったのに、「別のこと」を考えていて、ついうっかりしてしまった。
ところが本譜で私は、玄妙な順をひねりだす。
△2二飛以下、▲1八香△2五歩▲1九玉△6二王▲3六歩△7二王▲5五歩△同歩▲同角△5四歩▲3七角、と進んだ。
△6二王で△2六歩なら、▲同歩△同飛に▲2八飛が用意の手。上手飛車交換はできぬので△2七歩だろうが、それは▲3八飛と逃げておいて、将来この歩が負担になると思った。
それで上手は△6二王だが、私は▲5五歩から、手順に角を3七に転換し、ついに上手の歩交換を防いだのだった。
もっともこの順も、以下△4四銀に▲4六歩と突かざるを得ず、必ずしも下手がよくならない。ただ、下手も不満はないところである。
私はそのまま指し手を進める。…ウン?
「ああっ!!」
私は大声を上げた。「なんだこれ! オレ、穴熊を指してるじゃないか!! なんだこれ!! ウワアアアアーーーッ!!」
あ、穴熊を嫌っている私が、自ら穴に潜るとは、なんたることか!!
「いいじゃない大沢さん、それだけ将棋に集中しているということだよ」
と、誰かが言った。
そうなのだろうか。
頭がクラクラした。しかしここで投了するわけにはいかない。対中井戦とは違うのだ。
私は動揺したまま将棋を指し継ぎ、終盤、▲3四歩と桂取りに打つ。桂が入れば▲7四桂が、次の▲8二金もしくは、▲6二桂成と金を取る手を見せて厳しい。
対して大野七段、受ける手もないので、△6九飛と、▲6七銀取りに打つ。
ここで私が▲7八銀と打ったのが弱気な手だった。▲6七銀を守るために銀を投入するなんて、将棋の手ではない。続く△5九飛成にも▲4九金打としたが、これも疑問。ここでカナケを2枚使ったため、攻め駒不足となり、一遍に切れ筋に陥ってしまった。
以下は大野七段に巧妙に攻められ、無念の逆転負けとなった。これは本当に痛かった。
局後の検討では、△6九飛には、予定どおり▲3三歩成でよかったらしい。以下複雑な変化もあるが、これなら、下手が勝ちだったようだ。そもそも大野七段は、▲6七銀を取るために飛車を打ったのではなかったらしい。何てことだ、と思う。
どうも大野七段に教えていただくと、終盤で逆転負けするケースが多い。それも、予定どおりに指せばいいのに、それを変更して敗れるパターンが多い。
必要以上に、プロの影におびえてはいけない――。これは棋力云々より精神面の問題なので、克服はできると思う。
この将棋の途中にHon氏が来て、大人はつごう6名になった。
すぐに大野七段との2局目が始まる。序盤、私は▲6七銀、▲7八金型に組む。
大野七段は△7二飛から7筋の歩を交換にきた。△7五同飛に私は▲7九金。大山流の金引きを拝借したものだが、これが無理筋だった。以下△7二飛に▲7八飛△同飛成▲同玉と進んだが、直後の△2九飛が金香両取りで厳しく、早くも下手敗勢となった。
戻って、▲7五同歩では、▲7七金とするのだった。以下△7六歩には▲同金と取り、▲7八飛~▲7五歩を目指せば、絶好の厚みができる。こう指すのだった。
実戦はボロ負け。15分もかからなかったのではないか。
せっかくプロ棋士に教えていただいているのに、こんなヘタクソな将棋を指してしまうと、申し訳ない気持ちになる。
3時半の休み時間は、詰将棋タイム。今回は手筋モノが多かったので、ノルマの4題はすぐに解けた。しかしそれならすぐおかわりが来るのが大野教室である。
次の4題は最後の1問が解らず、けっきょく不完全燃焼になってしまった。
再会後は少年と。前回は相矢倉の将棋で見事に負かされた。しかしきょうも、まったく勝てる気がしない。ただ本局は、勝った気がする。断定できないのは、将棋の内容をすっかり忘れてしまったからだ。
私は勝った将棋はあまり記憶に残さないので、勝ったと思うわけだが、どうなのだろう。
続いてMi氏と。私の先手三間飛車。対してMi氏は棒銀で来た。Mi氏は例の件を知らないので、これは偶然と思われる。しかし私の動揺は大変なものだった。気の抜けた手を指し、中盤の折衝を終えたところでは敗勢になっていた。
ところが、▲6五桂と金取りに跳ねた手に対し、Mi氏がそれを放置して△6九飛打と二枚飛車で攻めたのが、負ければ敗着という手だった。ここは△5二金と逃げておけばなんでもなかった。
私は▲5三桂成として、先手勝勢。ところがそこで△3九角と打たれたので、飛び上がった。こ、こんな手があったのか…!!
私は力なく▲同金だが、△同飛成以下、詰まされてしまった。しかしどうもおかしい。…アッ!! △3九角には、▲同玉で何でもなかったんじゃないか!!
そうだ…。後手の二枚飛車に、この手は詰めろではないと即断したのは、やはり正解だったのだ。この形に詰みはないと、長年の経験がそう告げていたからだ。
ところが△3九角という見たことのない手を指され、動揺した私が悪手のお返しをしてしまった。だが△3九角は、見たことがないはずだ。だって▲同玉でタダなんだもの。そもそも盤上に現れるわけがない。
こりゃ、重症だ…。私は激しい自己嫌悪に陥ったのだった。
(つづく)
どちらも悔いのない、いい将棋を指してください。両者とも、等しく応援いたします。
17日(土)は、川口市にある「大野教室」に行った。大野教室とは――。めんどうなので、省略。
それにしても、最近、大野教室に行く回数が増えた。もっとも、将棋を指すことより、そのあとの食事会が目当てなのが情けない。
入室すると、先客が数名いた。W氏、Kun氏、His氏、将棋関係者のMi氏、それと少年。茨城から遠征のHis氏は、LPSA木曜ワインサロン、LPSA芝浦サロン、そしてこの大野教室と三連投である。アマ将棋界は、このような将棋好きのオッサンに支えられているのだ。
早速、大野八一雄七段に角落ちで教えていただく。植山悦行七段には居飛車を勧められているが、私はヒトの教えは守らないので、本局は中飛車に構えた。
序盤、▲3八玉△2四歩に▲2八玉と寄ったのが危険な手。すかさず△2二飛と回られ、作戦負け気味になった。以下普通に指し手を進めると、▲3八銀△2五歩▲○○○△2六歩となるが、この順は上手に1歩を持たれておもしろくない。5筋の歩交換は上手が△5四歩と打つことになるが、2筋の歩交換は上手の駒台に歩が乗ったままだから、下手はこの順を回避すべき、が大野七段の持論なのだ。
よって▲2八玉では▲4八銀が先で、同じく△2二飛なら、▲3六歩△2五歩に▲3七銀が間に合い、上手の歩交換を防げる。
この順は大野七段に教わったのに、「別のこと」を考えていて、ついうっかりしてしまった。
ところが本譜で私は、玄妙な順をひねりだす。
△2二飛以下、▲1八香△2五歩▲1九玉△6二王▲3六歩△7二王▲5五歩△同歩▲同角△5四歩▲3七角、と進んだ。
△6二王で△2六歩なら、▲同歩△同飛に▲2八飛が用意の手。上手飛車交換はできぬので△2七歩だろうが、それは▲3八飛と逃げておいて、将来この歩が負担になると思った。
それで上手は△6二王だが、私は▲5五歩から、手順に角を3七に転換し、ついに上手の歩交換を防いだのだった。
もっともこの順も、以下△4四銀に▲4六歩と突かざるを得ず、必ずしも下手がよくならない。ただ、下手も不満はないところである。
私はそのまま指し手を進める。…ウン?
「ああっ!!」
私は大声を上げた。「なんだこれ! オレ、穴熊を指してるじゃないか!! なんだこれ!! ウワアアアアーーーッ!!」
あ、穴熊を嫌っている私が、自ら穴に潜るとは、なんたることか!!
「いいじゃない大沢さん、それだけ将棋に集中しているということだよ」
と、誰かが言った。
そうなのだろうか。
頭がクラクラした。しかしここで投了するわけにはいかない。対中井戦とは違うのだ。
私は動揺したまま将棋を指し継ぎ、終盤、▲3四歩と桂取りに打つ。桂が入れば▲7四桂が、次の▲8二金もしくは、▲6二桂成と金を取る手を見せて厳しい。
対して大野七段、受ける手もないので、△6九飛と、▲6七銀取りに打つ。
ここで私が▲7八銀と打ったのが弱気な手だった。▲6七銀を守るために銀を投入するなんて、将棋の手ではない。続く△5九飛成にも▲4九金打としたが、これも疑問。ここでカナケを2枚使ったため、攻め駒不足となり、一遍に切れ筋に陥ってしまった。
以下は大野七段に巧妙に攻められ、無念の逆転負けとなった。これは本当に痛かった。
局後の検討では、△6九飛には、予定どおり▲3三歩成でよかったらしい。以下複雑な変化もあるが、これなら、下手が勝ちだったようだ。そもそも大野七段は、▲6七銀を取るために飛車を打ったのではなかったらしい。何てことだ、と思う。
どうも大野七段に教えていただくと、終盤で逆転負けするケースが多い。それも、予定どおりに指せばいいのに、それを変更して敗れるパターンが多い。
必要以上に、プロの影におびえてはいけない――。これは棋力云々より精神面の問題なので、克服はできると思う。
この将棋の途中にHon氏が来て、大人はつごう6名になった。
すぐに大野七段との2局目が始まる。序盤、私は▲6七銀、▲7八金型に組む。
大野七段は△7二飛から7筋の歩を交換にきた。△7五同飛に私は▲7九金。大山流の金引きを拝借したものだが、これが無理筋だった。以下△7二飛に▲7八飛△同飛成▲同玉と進んだが、直後の△2九飛が金香両取りで厳しく、早くも下手敗勢となった。
戻って、▲7五同歩では、▲7七金とするのだった。以下△7六歩には▲同金と取り、▲7八飛~▲7五歩を目指せば、絶好の厚みができる。こう指すのだった。
実戦はボロ負け。15分もかからなかったのではないか。
せっかくプロ棋士に教えていただいているのに、こんなヘタクソな将棋を指してしまうと、申し訳ない気持ちになる。
3時半の休み時間は、詰将棋タイム。今回は手筋モノが多かったので、ノルマの4題はすぐに解けた。しかしそれならすぐおかわりが来るのが大野教室である。
次の4題は最後の1問が解らず、けっきょく不完全燃焼になってしまった。
再会後は少年と。前回は相矢倉の将棋で見事に負かされた。しかしきょうも、まったく勝てる気がしない。ただ本局は、勝った気がする。断定できないのは、将棋の内容をすっかり忘れてしまったからだ。
私は勝った将棋はあまり記憶に残さないので、勝ったと思うわけだが、どうなのだろう。
続いてMi氏と。私の先手三間飛車。対してMi氏は棒銀で来た。Mi氏は例の件を知らないので、これは偶然と思われる。しかし私の動揺は大変なものだった。気の抜けた手を指し、中盤の折衝を終えたところでは敗勢になっていた。
ところが、▲6五桂と金取りに跳ねた手に対し、Mi氏がそれを放置して△6九飛打と二枚飛車で攻めたのが、負ければ敗着という手だった。ここは△5二金と逃げておけばなんでもなかった。
私は▲5三桂成として、先手勝勢。ところがそこで△3九角と打たれたので、飛び上がった。こ、こんな手があったのか…!!
私は力なく▲同金だが、△同飛成以下、詰まされてしまった。しかしどうもおかしい。…アッ!! △3九角には、▲同玉で何でもなかったんじゃないか!!
そうだ…。後手の二枚飛車に、この手は詰めろではないと即断したのは、やはり正解だったのだ。この形に詰みはないと、長年の経験がそう告げていたからだ。
ところが△3九角という見たことのない手を指され、動揺した私が悪手のお返しをしてしまった。だが△3九角は、見たことがないはずだ。だって▲同玉でタダなんだもの。そもそも盤上に現れるわけがない。
こりゃ、重症だ…。私は激しい自己嫌悪に陥ったのだった。
(つづく)