8月6日(土)に公開で指された「日レスインビテーションカップ・第5回女流棋士トーナメント」は、迷ったが、見に行かなかった。いまでは賢明な判断だったと言わざるを得ない。
そのときの将棋はLPSAサイトで拝見したので、きょうはその感想を述べてみたい(文中敬称略)。
<準々決勝>
・▲鹿野圭生女流二段VS△中井広恵女流六段
鹿野の四間飛車に、中井の左美濃or穴熊模様。
△2二玉に▲6五歩と角交換を求めたのは積極的な動き。38手目△3五角(打)に鹿野は▲5八金寄と受けたが、ここは▲5八金上としてどうだったか。鹿野は関西だが、わりと形にこだわる。▲5八金上は形が乱れるので指し切れなかったようだ。
44手目△4四角に▲7八銀と引いて受けるようでは、先手がおもしろくないと思う。さらにそのあと▲6七金と上がっているが、それなら最初から▲5八金と上がっておけばよかった、ということになる。
以下は中井の的確な攻めを見るのみ。鹿野は力を出し切れなかった。
・▲蛸島彰子女流五段VS△山口真子アマ
振り飛車党の両者、予想どおりの相振り飛車となった。中盤の入口で蛸島、▲8四歩の合わせから▲4五銀の飛車取りが、次の一手のような妙手だった。ここで飛車交換になり、先手で飛車を打てては蛸島がよくなったようだ。
以下山口アマも懸命に手を作るが、蛸島の受けが冷静。よくなったときの蛸島は、相手の攻めに対して、実に丁寧に面倒を見る。そして紙一重で、相手の攻めを見切る。まるで男性棋士のような安心感がある。
最終盤、玉を包むような寄せ方も参考になる。蛸島会心の一局だったと思う。
・▲船戸陽子女流二段VS△渡部愛ツアー女子プロ
船戸の居飛車明示に渡部の四間飛車。船戸は、対振り飛車では腰掛け銀+穴熊or天守閣美濃を得意とする。渡部が飛車を振るのは構わないが、船戸の対策を研究していたかどうかが問題だ。
その答えが△6五銀のぶつけだったのかもしれないが、それが渡部の用意した解答とは思われない。
本譜は船戸に存分に攻められ、明らかな負けである。
それにしても、勝ちになってからの船戸の指し方もおかしかった。緩手を連発し、自玉を受けなしにされてから▲8三金の妙手を指して勝ちにしたが、寄せに強い船戸の指し手とは思われない。両者とも、こんな将棋を指していてはダメである。
・▲島井咲緒里女流初段VS△石橋幸緒女流四段
なんでも指す石橋が飛車を振り、相振り飛車に。石橋は公式戦で、ここまで島井に7戦全勝。圧倒的にカモにしており、本局でもその一端が窺える。
67手目▲3四歩の飛車取りに△4七歩~△4六歩の攻めも、「攻めてりゃなんとかなるでしょ。最後はアタシが勝つんだから」という手。
しかし勝負は簡単に終わらなかった。島井も懸命に粘り、形勢は島井に好転する。だが、対石橋戦7戦全敗の過去が島井の指し手を委縮させた。
私にも経験があるが、対戦成績の分が悪いと、「最後は負かされるのではないか」という疑心暗鬼に陥るものだ。島井もそれにかられてしまったのではないか。
最後は石橋玉に詰みがあったがそれを逃し、石橋の王手ラッシュに逃げ方を間違え、詰まない玉が詰んでしまった。
島井は女流名人位戦A級リーグで清水市代女流六段にも勝ったことがある実力者である。もっと体力をつけて自信を持てば、どんどん勝てるようになる。
<準決勝>
・▲蛸島彰子女流五段VS△中井広恵女流六段
本局、敗着は3手目の▲1六歩である。蛸島は中飛車五十年の指し手。▲1六歩などと様子を見たりせずに、すぐに飛車を振っていくべきだった。
蛸島は▲1六歩以降も態度をはっきりさせず、飛車を三間に振ったのは15手目だった。これは蛸島の指し手ではない。
31手目▲1八香と上がり、穴熊を明示したのも蛸島らしくない。これでは▲1六歩が、相手の攻めを誘発するだけの疑問手になってしまった。
中井は攻めの態勢を十分に整え、開戦。中井の的確な攻めに、蛸島の▲3八の金が▲1五に出ざるを得ないようでは、もはや大勢決した。
中井は前局と合わせ、労せずして決勝進出。しかし、これではいけないのだ。
・▲石橋幸緒女流四段VS△船戸陽子女流二段
序盤、船戸が△5三銀から△6四銀と出る。石橋も強く迎え撃って、双方居玉の攻め合いに。2008年7月に行われた「第14回1dayトーナメント・MONDAYカップ」で、両者が決勝を争った将棋を彷彿とさせる、丁々発止の戦いとなった。
船戸の将棋は玉を固めてバーン!というイメージがあるが、こうした「ケンカ将棋」も実にうまく指しこなす。むろん、後者の将棋のほうが魅力的なのはいうまでもない。
本局、どこが本筋か分からないところを、船戸はうまく攻めた。彼我の玉形を視野に入れ、最後は石橋玉に必至を掛けた。船戸会心の一局だったと思う。
中井女流六段、船戸女流二段による決勝戦は今月24日(土)。優勝賞金100万円の大勝負である。私はこんな状態だから、いまは船戸女流二段を応援する気にはとてもなれないが、両雄はどうか、悔いのない将棋を指してもらいたい。
そのときの将棋はLPSAサイトで拝見したので、きょうはその感想を述べてみたい(文中敬称略)。
<準々決勝>
・▲鹿野圭生女流二段VS△中井広恵女流六段
鹿野の四間飛車に、中井の左美濃or穴熊模様。
△2二玉に▲6五歩と角交換を求めたのは積極的な動き。38手目△3五角(打)に鹿野は▲5八金寄と受けたが、ここは▲5八金上としてどうだったか。鹿野は関西だが、わりと形にこだわる。▲5八金上は形が乱れるので指し切れなかったようだ。
44手目△4四角に▲7八銀と引いて受けるようでは、先手がおもしろくないと思う。さらにそのあと▲6七金と上がっているが、それなら最初から▲5八金と上がっておけばよかった、ということになる。
以下は中井の的確な攻めを見るのみ。鹿野は力を出し切れなかった。
・▲蛸島彰子女流五段VS△山口真子アマ
振り飛車党の両者、予想どおりの相振り飛車となった。中盤の入口で蛸島、▲8四歩の合わせから▲4五銀の飛車取りが、次の一手のような妙手だった。ここで飛車交換になり、先手で飛車を打てては蛸島がよくなったようだ。
以下山口アマも懸命に手を作るが、蛸島の受けが冷静。よくなったときの蛸島は、相手の攻めに対して、実に丁寧に面倒を見る。そして紙一重で、相手の攻めを見切る。まるで男性棋士のような安心感がある。
最終盤、玉を包むような寄せ方も参考になる。蛸島会心の一局だったと思う。
・▲船戸陽子女流二段VS△渡部愛ツアー女子プロ
船戸の居飛車明示に渡部の四間飛車。船戸は、対振り飛車では腰掛け銀+穴熊or天守閣美濃を得意とする。渡部が飛車を振るのは構わないが、船戸の対策を研究していたかどうかが問題だ。
その答えが△6五銀のぶつけだったのかもしれないが、それが渡部の用意した解答とは思われない。
本譜は船戸に存分に攻められ、明らかな負けである。
それにしても、勝ちになってからの船戸の指し方もおかしかった。緩手を連発し、自玉を受けなしにされてから▲8三金の妙手を指して勝ちにしたが、寄せに強い船戸の指し手とは思われない。両者とも、こんな将棋を指していてはダメである。
・▲島井咲緒里女流初段VS△石橋幸緒女流四段
なんでも指す石橋が飛車を振り、相振り飛車に。石橋は公式戦で、ここまで島井に7戦全勝。圧倒的にカモにしており、本局でもその一端が窺える。
67手目▲3四歩の飛車取りに△4七歩~△4六歩の攻めも、「攻めてりゃなんとかなるでしょ。最後はアタシが勝つんだから」という手。
しかし勝負は簡単に終わらなかった。島井も懸命に粘り、形勢は島井に好転する。だが、対石橋戦7戦全敗の過去が島井の指し手を委縮させた。
私にも経験があるが、対戦成績の分が悪いと、「最後は負かされるのではないか」という疑心暗鬼に陥るものだ。島井もそれにかられてしまったのではないか。
最後は石橋玉に詰みがあったがそれを逃し、石橋の王手ラッシュに逃げ方を間違え、詰まない玉が詰んでしまった。
島井は女流名人位戦A級リーグで清水市代女流六段にも勝ったことがある実力者である。もっと体力をつけて自信を持てば、どんどん勝てるようになる。
<準決勝>
・▲蛸島彰子女流五段VS△中井広恵女流六段
本局、敗着は3手目の▲1六歩である。蛸島は中飛車五十年の指し手。▲1六歩などと様子を見たりせずに、すぐに飛車を振っていくべきだった。
蛸島は▲1六歩以降も態度をはっきりさせず、飛車を三間に振ったのは15手目だった。これは蛸島の指し手ではない。
31手目▲1八香と上がり、穴熊を明示したのも蛸島らしくない。これでは▲1六歩が、相手の攻めを誘発するだけの疑問手になってしまった。
中井は攻めの態勢を十分に整え、開戦。中井の的確な攻めに、蛸島の▲3八の金が▲1五に出ざるを得ないようでは、もはや大勢決した。
中井は前局と合わせ、労せずして決勝進出。しかし、これではいけないのだ。
・▲石橋幸緒女流四段VS△船戸陽子女流二段
序盤、船戸が△5三銀から△6四銀と出る。石橋も強く迎え撃って、双方居玉の攻め合いに。2008年7月に行われた「第14回1dayトーナメント・MONDAYカップ」で、両者が決勝を争った将棋を彷彿とさせる、丁々発止の戦いとなった。
船戸の将棋は玉を固めてバーン!というイメージがあるが、こうした「ケンカ将棋」も実にうまく指しこなす。むろん、後者の将棋のほうが魅力的なのはいうまでもない。
本局、どこが本筋か分からないところを、船戸はうまく攻めた。彼我の玉形を視野に入れ、最後は石橋玉に必至を掛けた。船戸会心の一局だったと思う。
中井女流六段、船戸女流二段による決勝戦は今月24日(土)。優勝賞金100万円の大勝負である。私はこんな状態だから、いまは船戸女流二段を応援する気にはとてもなれないが、両雄はどうか、悔いのない将棋を指してもらいたい。