一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第3回 信濃わらび山荘将棋合宿(第1譜)・うっかりママ

2011-11-08 00:06:44 | 将棋イベント
いまや恒例となった「信濃わらび山荘将棋合宿」に、11月4(金)~6日(日)と行ってきた。同合宿は、蕨市在住で同市の教育委員を務めている中井広恵女流六段が、同市所有の施設を利用し、コアな将棋ファンと心の交流を図るというものである。
今回の参加は19名。中井女流六段、植山悦行七段、大野八一雄七段の講師陣と、W、R、Hi、Hon、Is、Fuj、私の生徒組。ここにKun、Y、Mi、Kaz、Kubの5名が土曜日から合流する。さらに蕨市役所将棋部のOB4名も、土曜日から合流する。
この合宿に参加基準はとくにないが、みんな将棋愛がある人ばかりだ。何しろこの合宿は、3日間将棋三昧である。酒を飲んでどんちゃん騒ぎをするわけでもなく、ひたすら将棋を指す。研究に没頭する。将棋愛が根底になければ、この3日間は耐えられないのである。
「信濃わらび山荘」は長野県南佐久郡川上村にある。今回も往復の移動にはクルマ利用である。4日朝9時30分、各自が埼玉県K駅前とA駅前に集合する。K駅からは中井カーとHonカー。A駅からはWカーが出る。私は定刻6分前にK駅に着いたが、筆記用具を忘れたことに気づき、キヨスクに買いに戻った。
ところがそれで、ほかのみんなは私が遅刻したと思ったようだ。バカを言ってはいけない。鉄道マニア、とくに一人旅を好む人間は、時間に厳しいのだ。
本当に遅刻したのは中井女流六段、植山七段で、14分の遅刻。対局だったら持ち時間から3倍引きである。中井女流六段が、出発間際になってグズグズしていたらしい。中井女流六段と私が飛行機で長崎に行くことになったら、遅刻は許されない。気をつけてほしいところである。
とはいえ朝の中井女流六段、いつにも増して素敵だった。どうでもいいが、植山七段はオシャレな帽子をかぶっていて、遠目からはマイケル・ジャクソンに見えた。
中井カーには植山七段、R氏、私。HonカーにはHi氏、Fuj氏が同乗し、ついに出発した。ちなみにA駅からのWカーには、大野七段、Is氏が乗っている。
上では厳しいことを書いたが、中井女流六段の運転で将棋イベントに行けるとは、将棋ファン冥利に尽きる。
合宿も旅行も、実は目的地に着くまでがいちばん楽しい。車内には、昭和50年代後半のアイドルの、ヒットメドレーが静かに流れていた。中井女流六段の趣味だろうか。中井女流六段と私は同年代。このころのアイドルは青春ド真中である。
空は快晴で、これは珍しい。植山七段と私は筋金入りの雨男で、過去2回はいずれも雨に祟られている。今年4月の合宿では、帰途に寄った観光地で吹雪いたほどだった。よって、これは奇跡的な天気なのである。車内では植山七段と私がお互いに、「あなたのほうが雨男なんだから」と牽制しあった。
10時45分、高坂サービスエリアに到着。ここで初めて、一堂が会した。そして乗車メンバーをシャッフルする。みんなでグーチョキパーを出し合って、同じ手を出した者同士が同乗するのだ。私はWカーに、Fuj氏と乗ることになった。合宿の参加メンバーは、私もウンザリするほど将棋好きが多く、どのクルマに乗っても「濃い」。Wカーでもマニアックな将棋談議に花が咲いたが、意外とほかのジャンルの話に飛んだりする。
芸能ネタになり、往年のアイドル・黒沢ひろみの話になった。黒沢ひろみはボーイシュなB級アイドルで、その容姿は若き日の山田久美女流三段に似ていた。
しかしW氏とFuj氏は黒沢ひろみに関して私以上の知識を有していて、私は、こいつらには敵わないと観念した。
高速道路を下り、峠の釜めしで有名な「おぎのや」に入る。ここは敷地が広く、サービスエリア内の食堂の雰囲気がある。釜めし以外にも多くのメニューがあり、私は唐揚げ定食の食券を購入した。厨房の前で待って、料理が出てくるのを待つ。
と、店員さんが中井女流六段に、
「自動券売機のおつりを取り忘れませんでしたか?」
と言った。自動券売機に4,000円の忘れものがあったのを、届け出てくれた客がいたらしい。
「アッ…」
中井女流六段が顔色を変えた。中井女流六段、五千円札を投入し、小銭のおつりだけを取り、千円札を取り忘れたのだ。購入した券には自動的にナンバリングがされているので、誰の忘れものか特定できたようだ。
親切な人に届けられ、これは中井女流六段、運がよかった。
定食を食し、腹もくちて、土産物コーナーをぶらぶらする。
190mlの瓶コカコーラが売られている。この瓶のシルエットは女性の体の線を模したものと聞いたことがあり、旅先でこのコーラを見つけると、ゲンを担いでよく飲んだものである。しかしいまはもう、買う気が起こらない。
ワインコーナーに行くと、「長野・桔梗ヶ原 2010」の赤があった。私が最後に出席した、9月1日の「LPSA木曜ワインサロン」で供されたワインが、この白だった。
また乗車メンバーをシャッフル。今度はHonカーに、Hi氏と乗ることになった。今回の初参加は、Hi、Fuj、Miの3氏だが、もちろん「将棋愛」を持っている。この方々と指すのが楽しみでもあり、ちょっぴり恐ろしくもある。
このあとはスーパーマーケットに向かう。飲み物とお菓子の買い出しである。しかしHonカーと中井カー・Wカーが、出発時からはぐれてしまった。カーナビを備えているのは中井カー・Wカーだが、しかしここはカーナビのないHonカーが正しい道を進んでいた。Hon氏は「実戦」で道を覚える。私もそっち派である。
結局、予定とは別のスーパーに入ってお買い物。この時間がまた楽しい。飲み物とお菓子を、次々とカゴに入れる。会計は9,787円。1万円以内に収まり、味がよかった。
時刻は15時を過ぎ、いよいよ信濃わらび山荘に近づいてきた。右手に列車が走っている。小海線だ。地方で観る鉄道は官能的である。ああ、あの気動車に乗りたい、と思う。しかし今回は、鉄道旅行より将棋だ。小海線はまたの機会である。
15時27分、ようやっと信濃わらび山荘に着いた。約半年ぶりだ。懐かしい。
雨のない快晴の山荘は初めてである。この天気がいつまでもつだろうと思う。
中井女流六段が、深刻な顔をしてクルマから降りてきた。
「大沢さん…私、たいへんな忘れ物しちゃった」
「なんですか」
「大盤、忘れちゃった」
オオバン? 大盤を忘れちゃったのか!? …それじゃあ、講座や解説ができないじゃないか!
うっかりママの言葉に、私たちは呆然とした。
(つづく)
コメント (4)
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