一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

十三たび大野教室に行く(後編)・応援の力

2011-11-23 00:04:33 | 大野教室
きょうの生徒は大人7人、子供2人。そして大野八一雄七段の弟子2人だった。日曜日は土曜日と比べて人が少ないが、それでも11人いれば多いほうである。
3局目、ここで大野七段に教えていただく。出だしは指し掛けの将棋とまったく同じになった。私は矢倉を目指すが、囲いを先にしてしまったため立ち遅れ、飛車先の歩を切ることができなかった。将棋はわずかな手順前後が致命傷になる。それは序盤でも同じである。
大野七段の金が4五に出てきたので、私は▲4六銀とぶつける。駒を交換すれば下手がいいとしたものだが、思ったほどよくならない。
△2五桂と跳ねてきたので、△3七桂成▲同桂△3六歩を防ぐべく▲2七金と打ったのだが、これはよくなかった。
大野七段、△4七歩成。▲同飛の一手に△3八銀。典型的な両取りで、バカバカしくなって投了も考えたが、私は▲4五飛と金と指し違え、▲2四歩と突きだす。しかし飛車桂交換の駒損は変わらず、大野七段に△2八飛と下ろされては、投了目前となった。
△8六飛▲8七歩△7六飛(と銀を取る)▲同金△6七銀。自陣はほとんど詰めろだが、これはかなり雑な寄せだった。
私は敵銀を取り、▲4四飛。これに大野七段は△2五王と逃げられると思っていたらしいが、それは▲3四銀△2六王▲2五金で詰んでしまう。△2七成銀と△2八飛が、上手の入玉ルートを塞いでいる。
実戦はここで大野七段の投了となった。以下△3三王▲3四銀△3二王なら詰まないが、そこで▲7七金引と駒の入手を図られていけない。
しかし、どうしてこうも下手が悪くなったのか。感想戦では、銀をぶつけた▲4六銀が疑問手とされた。前述のとおり、駒が交換できれば下手が成功だが、本局は上手の厚みが消えないので、よくないという。
正着は4筋にはさわらないことで、例外ながらこんなケースもあるらしい。▲4六銀はベストの時期に指すことにし、(後にも指したが)▲7五歩~▲7六銀と、こちらで手を作るべきだったという。
本局、大野七段が勝手に転んだ将棋で、大野七段からの勝利は、こんなのばっかり。勝たせていただいても、全然うれしくなかった。
4局目はFuj氏と。Fuj氏は棋士との指導対局や生徒との星を克明につけていて、私とは5勝4敗だという。Fuj氏とは、私が中盤まで優勢で進めながら、終盤でひっくり返されるケースが多い。Fuj氏は、死んだフリをして飛び蹴りを狙っているようなところがあり、油断のならない将棋だ。
しかしこうはっきりと勝敗を知らされると、私もこれ以上負けるわけにはいかない。本局は節目の10局目、私も気合を入れて臨んだ。
将棋は相矢倉。私は3五の歩交換から▲3六銀と立ち、十分の形勢。以下、激しい攻め合いになった。
2四で銀交換をし、▲2五歩。Fuj氏は△8六歩。これに私が▲同歩と取ったのが第一のつまづきだった。以下△8七歩▲同金△3九角▲3八飛△6六角成とされ、いくばくもなく負けた。
▲8六同歩では強く▲2四歩と取りこむところ。これに△8七歩成▲同金△8六歩なら、▲2三銀で先手勝ち。△8七歩に▲同金も悪手で、ここは▲同玉だった。最後の悪手が▲3八飛で、ここは▲2九飛と引き、2筋に利かせておくところ。以下△6六角成なら▲同金△同飛▲7七銀と受けて、先手もまだ戦えた。
▲8七同金の局面で、私の残り時間は、まだ7、8分はあった。どうしてここで腰を落として読まないのか、軽率な自分に腹が立つ。かくして記念の10局目を白星で飾れず、また星の差が開いてしまった。
将棋対局はここまで。食事会は、大野門下の奨励会員2人も同行し、7人の参加となった。
近くの中華料理屋へ入る。どうでもいいが、席の配置を記しておこう。

    Kun O M

 W Fuj 大野 一公
       壁

私のテーブルに、奨励会員が座った。これはなかなかできない経験である。
料理が運ばれてくると、O3級が箸を持って合掌する。いい心がけである。
M6級は大食漢。バクバク食う。彼は明日(14日)行われるマイナビ女子オープン・中井広恵女流六段と清水市代女流六段の記録係を務めるという。おカネをもらってふたりの将棋を観戦できるとは羨ましい。
もっとも彼は、そこまでの感慨はないようだ。私から見たら対局のふたりは魅力的な女性だが、彼から見たら、ただのオバチャンである。
そんなM6級を見ていて、アッと思った。彼、今年のマイナビ女子オープンで記録係をしていなかったか。たしか彼は将棋をあまり見ておらず、対局者が指したのに気づかないときがあった。それを私は、「彼は奨励会を退会するか、名人になるかのどちらかだろう」と書いた記憶がある。
それはともかく、私が彼らと食事を摂ったことを自慢できるかどうかは、彼らの今後の活躍にかかっている。ふたりには是非とも、四段になってもらいたい。
食事も終わり、奨励会のふたりとはここでお別れ。Kun氏もここで退席。残った私たち4人は、近くの「ガスト」へ向かった。
ガストは現在キャンペーン中で、パスタセットとデザートセットが激安で提供されていた。両方頼んでも651円にしかならない。
私たち4人は、それをオーダーする。さっき食事を摂ったのに、これではまた太ってしまう。まあ、ダイエットは、明日から始めればいいのだ。
いい大人が4人でデザートを摂りながら雑談とは気持ち悪い光景だが、それに抗うことはできない。
Fuj氏は相変わらず、120%将棋の話題である。話の途中で「中川流矢倉ですか」とかマニアックなことを言われたが、W氏と私は何のことだか分からない。Fuj氏、将棋の知識は豊富だが、それを万人が知っていると曲解しているところがある。「将棋の話=おもしろい」というわけではない。私たちはプロ棋界の裏情報には詳しいが、将棋の最新戦法には疎いことを知ってほしい。
大野七段が竜王戦で5組に昇級した話になる。昇級の一局となった加藤一二三九段戦は大苦戦だったが、辛抱が実って逆転勝ちとなった。私たちはその快挙を自分のことのように喜び、祝勝会の予定も組んだ。
大野七段、対局中はもちろん将棋の手を考えているが、時おり、生徒の応援が脳裏に浮かぶこともあるという。
本局も、局面は苦しいから、投了してしまえばラクになった。しかし生徒の応援を考えると投げられず、もう一手頑張ろう、という気になったのだという。
「だから皆さんの応援はとても励みになったし、感謝しています」
というようなことを大野七段は言った。
もったいない言葉である。私たちも大野七段の活躍には元気をもらったし、こちらこそ御礼を言いたい気分だ。
店を出て、大野七段が
「今回が5回目の昇級のチャンスだったからなあ。指してるときは気にしなかったけど、これを落としてたら、さすがに私もガックリきてましたよ」
と、かみしめるようにつぶやいた。
大野七段も、人知れずプレッシャーを感じていたのだろう。大野七段、竜王戦の昇級、本当におめでとうございます。来期の竜王戦も、期待しています。
コメント (2)
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