一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第3回 信濃わらび山荘将棋合宿(第3譜)・植山悦行七段のホメ言葉

2011-11-12 00:04:12 | 将棋イベント
「いやそれはホントに! ホントにまずいです! 中井先生どうか、あちらでみんなと召し上がってください!」
私は恐縮しながら、中井広恵女流六段の好意を辞退した。中井女流六段は、バカねえ、という顔で踵を返し、植山悦行七段の前に座った。
ホントにバカだよなあ…。ヒトの好意を素直に受け取ればいいものを。目の前に来たチャンスをみすみす見送ってあとで後悔する。私の人生はこんなんばっかりだ。
結局私の前には、Hon氏が座った。まあ、これでよかったのだと思う。
夕食は800円。朝食は500円である。800円の夕食でも十分なのだが、その上に特別メニュー1,500円というのがあって、私たちはそれを注文している。
宿泊代も含め、信濃わらび山荘の利用料金があまりにも安いので、少しでも売り上げに貢献しようとのヨミだ。
今回の夕食も品数がいっぱいあって、美味かった。ただ、ご飯が固めだった。
夕食のあとは、将棋盤と駒、それに飲み物とお菓子をコテージに移し、お待ちかねの実戦である。私は間隙をぬって一番風呂。山荘の入浴時間は16時30分から21時まで。入れるときに入っておいたほうがよい。ただ、入浴時間はもう少し延長してほしい。
風呂は広くはないが狭くもない。湯船に浸かりながら、いまごろ中倉宏美女流二段は、LPSA芝浦サロンで指導対局をしてるんだなあ、と思う。
もし宏美女流二段にサロンの予定がなかったら、彼女は今回の合宿に参加しただろうか。したような気がする。宏美女流二段には将棋愛があるからだ。
風呂から上がってコテージに戻ると、まずは大野八一雄七段と角落ちで一局。ウーロン茶を片手に、棋士に将棋を教えていただく。至福の時間である。
私は居飛車で立ち向かい、終盤までうまく指して「上手の投了級」だったのだが、例によってそこから私がヘンな手を連発し、急転直下で幕。どうして大野七段には勝てないのだろう。ああもどかしい。
続いて中井女流六段と平手戦。中井女流六段にはここまで平手で1勝10敗で、はっきりいって手合いが違う。しかし中井女流六段に駒を落としてもらうと、ほかの女流棋士とは棋力が一枚違います、と私が主張してしまうことになる。よって、泣きながら平手でお願いしているのだ。
本局は私の三間飛車に、中井女流六段が躊躇しながら、一目散穴熊に囲った。
中井女流六段、私の恋愛相談には親身になってくれるのに、盤上では鬼だ。
しかし私も向かい飛車に振り直し、果敢に戦いを挑む。▲8四歩と垂らし、角を換わって▲6六角が、プロみたいな名角。ここ、▲8三角はスジがわるい。
その後も堂々と戦って、私が優位のまま、終盤の入口になった。その局面が下。

上手・中井女流六段:1一王、1二香、1三歩、2一桂、2三歩、3一銀、3二金、3三金、3五歩、4五歩、5四飛、6四歩、7四歩、9三歩 持駒:角2
下手・一公:1七歩、1九香、2七歩、2八玉、2九桂、3七歩、4六銀、4八香、4九金、5七歩、6五歩、6七銀、7三と、7六歩、7八金、9一竜、9七歩、9九香 持駒:銀、桂2、歩3

5五の角で▲4六角と桂を取り、△同銀▲同銀△4五歩まで。この局面は角と銀桂香の駒割りの上、上手は歩切れ。手番も下手が握っているし、下手優勢と見て間違いない。しかしここから私がおかしくなる。

▲3五銀△5七飛成▲5八歩△5四竜▲2五桂△3四金▲6六桂△3五金▲5四桂△2五金▲5一飛△3六歩…

▲3五銀とこちらの歩を取ったのが失着。△5七飛成▲5八歩に△5四竜とここに引かれて、下手に思わしい攻めがないのに愕然とした。▲2五桂~▲6六桂を打ったが、いかにも筋がわるい。以下竜を犠牲に△3五金~△2五金と銀桂を取られ、△3六歩と玉のコビンに手をつけられては、下手大きく形勢を損ねた。
最後は△1五角と王手飛車を掛けられ、投了。またもいい将棋を落としてしまった。
戻って▲3五銀では、▲4五銀とこちらの歩を取るところだった。これなら4八の香も通り、将来の△3六歩も消して、下手は十分な戦いができた。
急所で腰を落として考えるクセ。これを身につけないと、いつも同じ失敗を繰り返す。今後の課題である。
3局目はR氏と。R氏とは前回の合宿で平手で戦ったのだが、R氏が15分・30秒、私が初手から20秒という変則ルールを提案して、私が完敗した。
今回は同じ轍は踏まない。ゴキゲン中飛車から慎重に指し、なんとか雪辱を果たすことができた。
続いて中井女流六段にもう一局挑む。LPSA芝浦サロンだったら、おかわり料金を取られるところである。
うっ…何か邪気を感じる。先発組はきょうこうして指導対局を受けているが、土曜日組はまだ東京だ。
「中井先生と将棋を指したい」
「お前、中井先生を独占しやがって」
という土曜日組の怨念が、コテージ内に漂っているようだった。
今度はひねり飛車。しかし中井女流六段に堅囲いをされ、▲5六銀にも△5四銀と対抗され、▲7四歩△同歩▲同飛に「こう指したらどうするんだろ」と△6六角と歩を取られ、以下いいところなく負けた。通常▲7四同飛には△7三歩なのだが、本局は上手の角道が通っているので、この手が利かなかった。この辺り、何も考えず形だけで指している弊害が出た。
局後中井女流六段より、上手がこの形で待っているときは、▲6六歩~▲5六銀より、▲5六歩~▲5七銀がいいでしょう、と教わった。完敗だったが、勉強になった一局だった。
もうこの時点で22時40分を過ぎていた。しかし対局はここから熱を帯びてくるのである。
5局目はFuj氏と。Fuj氏は強いのか弱いのか分からぬが、まあ、実力者のひとりである。
将棋は私の先手三間飛車。しかし作戦負けから苦戦に陥る。▲6八銀取りに△6九飛が痛打。私は9七の角を▲7九に引いて頑張る。そして▲5八銀の飛車取り。△7九飛成▲同銀△8九飛成には▲6八銀と上がる。続く△8五角の▲5八銀取りには▲4八金引。まったく、泣きたいくらいの辛抱だ。
ところが、左の席でこの手順を見ていた植山七段が、
「大沢さん、やっぱり強いですね」
と感心したように言う。「手順にムダがない」。
いやいや、こんなヘボ手ばかりで、それはないだろうと思いきや、植山七段は
「いや大沢さんは強いですよ」
と真顔で繰り返す。本気で言ってるのか? と訝しく思った。
最後もモタモタした寄せで何とか私が幸いしたが、植山七段は「うまく寄せましたね」みたいな感想だった。何か、キツネにつままれたようだ。ただ、私はホメられて伸びるタイプである。たとえお世辞でも、植山七段の言葉はうれしかった。
再び大野七段に角落ちで教えていただく。これでプロと4局目だ。
本局、私は珍しく矢倉。▲5五同歩~▲5六銀と理想的な構えを作る。これはさすがに勝ったろう、と思いきや、またも私が乱れまくり、不可解な敗戦となった。しかしこの将棋を負けたら、勝つ将棋がない。まったく、何がどうなっているんだろうと思う。
時に23時50分。スケジュールどおりなら就寝時間だが、これはあってないようなものである。私たちは引き続き対局を続ける。
その前にブログの更新だ。前回の合宿では、2日目の4月23日に更新ができなかったが、今回はスマホを所有しているので、それができる。原稿は予め書いてあるから、投稿ボタンを押すだけで更新終了となる。外出先では休めると思ったのに、便利も善し悪しだ。
植山七段に対局を誘われるが、まだ植山七段に将棋を教わる気分ではないので、丁重にお断りする。しかし贅沢というか、バチ当たりな話ではある。
7局目は、本合宿初参加のHi氏と。Hi氏の筋違い角振り飛車。中盤、△7四金から△7六歩と突き出されたら手段に窮したが、Hj氏は△6五角と出たので、私は▲6六銀から▲7五銀と歩を取って、一遍にヨリが戻ってしまった。
以下も攻めが繋がって私の勝ち。きょうのHi氏は調子がわるかった。
8局目はHon氏と。Hon氏の作戦は雁木。チッ、雁木かよ…。Hon氏、ふだんは朗らかだが、勝負はカライ。しかし結果は、動揺しながらも私の勝ち。
時刻は25時45分。すなわち5日の1時45分だ。周りを見ると、植山七段を除いた9人がいた。みんな将棋が好きだなあと思う。まだまだ指したいところだが、きょうはこんなところか。
26時すぎ、初日のぶつかり対局は、とりあえずお開きとなった。
(つづく)
コメント (3)
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