一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第3回 信濃わらび山荘将棋合宿(第4譜)・濃密な2局

2011-11-13 00:33:26 | 将棋イベント
朝日で目が覚めた。遮光カーテンを引いてなかったのだ。いままでは雨ばかりだったので、朝日の目覚めは初めてのケースである。もっとも昨夜は、ほとんど眠れなかった。枕が変わると寝付けないのは、いつものことである。
部屋を出ると、Hi氏と鉢合わせになった。Hi氏、さすがに朝が早い。
7時00分。駒音がするので、再度中央フロアを覗くと、Hi氏とFuj氏が将棋の検討をしていた。こんな朝っぱらから、バカじゃないのか?
局面を覗くと、どうやら先日の社団戦での将棋を並べているようだ。Fuj氏が不詰めの局面を投了した、というやつである。
Fuj氏の玉は▲4四。次、△6六馬の王手にFuj氏が投了した。しかしここは▲5三玉と逃げれば後手玉は全然詰まない。こんなもん全然むずかしい手ではなく、将棋のルールを知っていて勝つ気があれば、誰でも指す。失礼ながらFujさん、Fujさんはアホでいらっしゃいますか?
Fuj氏、3勝3敗でこんな手を指したら、敵のスパイと見做され、LPSA星組の仲間に抹殺されていただろう。
そんなふたりの傍らでは、いつの間にか起きてきた大野八一雄七段が、朝の腕立て伏せをやっていた。
なんなんだこの光景は…。シュールだ…。
やがて何人かが起きてきた。前日に行われたB級1組順位戦の話になる。現在6敗の藤井猛九段が千日手の末、午前2時すぎに初白星を挙げたらしい。
午前2時すぎまで…。すごいねぇ、とみなは感心するが、よく考えたら私たちだって、きのうは2時すぎまで将棋を指していたのだ。
7時30分から朝食。私はいつものように外れの席に座ったが、そこへW氏が避難してきた。朝食についている納豆が苦手らしい。大野七段もついてきた。納豆嫌いは、ニオイまでダメなのだ。
結局私が押しだされて、私はR氏、Is氏、Fuj氏と同じテーブルで朝食を摂った。
朝食後、表に出る。朝の光が気持ちいい。庭の紅葉が綺麗だ。しばしの観光だが、私たちにはほとんど関係ない。
庭の一隅で人だかりがしている。20年以上も前に発行された、中井広恵女流六段と林葉直子さんの本をみんなで見ているのだ。ここに掲載された中井女流六段の写真がバリバリのアイドルチックで、みんが「詐欺だ」と論評した。
たしかにカメラマン、さすがにプロというか、うまく撮るものだと感心した。

コテージに戻り、また実戦である。私はまたまた中井女流六段と一局。これで早くも3局目である。朝の中井女流六段はちょっとアンニュイで、魅力的だ。そんな中井女流六段に、朝から将棋を教えていただけるとは、なんて贅沢なんだろうと思う。
きょうは土曜日組5人と蕨市役所将棋部OB4人が合流する。彼らが来たら中井女流六段はそちらに取られてしまう。いまのうちに中井女流六段を堪能しておくのがいいのである。
本局は相矢倉。私が先手番なのに後手(上手)から攻められ、おもしろくない戦いとなった。△9二飛△9三香の形から、△9五歩▲同歩に△9七歩の垂らしが厳しい。そこで思ったのだが、矢倉は端にちょっかいを出せば、なんとか手になってしまう感じである。
中井女流六段、△4九角と▲5八飛取りに打つ。飛車が逃げれば△7六角成と金を取られて終わりだ。私は▲5九香と泣きの辛抱。中井女流六段は端を攻める。私は▲7七玉と早逃げをしつつ、▲7六金にヒモをつけた。
これが粘りある手で、中井女流六段の端攻めを緩和している。これがあってみると、中井女流六段は△5七歩▲同銀を利かせておくべきだった。
息詰まる終盤戦。中井女流六段が「行っちゃおう」とつぶやき、△8五角を△6七に成る。▲6七同金△同金。さあ、ここで上手王が詰むかどうかだ。
その局面が下である。

上手・中井女流六段:1一香、1三歩、2一桂、2二王、2三歩、3二香、3三銀、3四歩、4二金、4四歩、5二歩、5八と、6七金、7三桂、8三歩、9六歩 持駒:金、銀、歩
下手・一公:1七歩、1九香、2五歩、2九桂、3八銀、3九金、4七歩、5四馬、5七歩、5九香、6一竜、6五歩、8七歩、8八玉 持駒:飛、角、銀、桂、歩3

ここから私は▲3一角から詰ましに行ったのだが、わずかに詰まなかった。局後の検討でも長い時間をかけたのだが、結論は変わらず。乞うご研究。
でも、中井女流六段との将棋は本当に楽しかった。私は本当に幸せです。ありがとうございました。
続いて、いよいよ植山悦行七段に教えていただく。
「角落ちでお願いします」
「角はイヤなんだよなア。指してておもしろくないんだもん」
「…。じゃあ平手でいいですよ」
という不思議な会話のあと、畏れ多くもプロ七段相手に、平手での指導対局となった。
将棋は私の三間飛車に、植山七段は△5三銀左の急戦。さっそく△6五歩と仕掛けられた。
私も強く応接し、味よく▲4六角。しかしここは▲6六角と打つべきだった。
それでも下手がよく指して、十分。将棋は終盤になだれこんだ。ここで駒の配置を記す。

上手・植山七段:1一香、1四歩、2一桂、2三歩、3三歩、4二王、4三歩、5二金、5四歩、6一歩、7六歩、9四飛、9五歩、9八竜 持駒:角、銀、桂2、香
下手・一公:1六歩、1九香、2七歩、2八玉、3六歩、3七桂、3八銀、4五歩、4六馬、4七金、4九金、5六歩、6四歩、6九銀、8五歩、9七歩 持駒:金、銀、香、歩2

△9八竜と香を補充したところまで。
以下の指し手。▲6八香△6二歩▲7三歩△1五歩▲7二歩成△1六歩▲1八歩△1二香打▲2二銀△7七歩成▲2一銀不成△3二桂▲2五桂△6八と▲3四桂△同歩▲3三金△5三王▲3二銀不成△6四飛…。

植山七段が9四の飛車を取り、ウラを見る。これ飛車だよなあ…という顔だ。上手はこの遊び駒が痛い。
私は▲6八香と打つ。しかしこれは感触がわるかった。△6二歩に▲7三歩が、この忙しいときに二階から目薬のようなノンビリした手で、一遍に形勢を損ねた。局後植山七段に指摘されたのは、▲6八香に換えて▲4四歩。言われてみればなるほどという手で、これが本筋だ。早咲誠和アマの言葉に「俗に『端玉に端歩』というが、玉頭の歩突きはどの筋も急所」があるが、▲4四歩は、まさにそれだった。
数手進んで▲3四桂捨ても疑問。ここは▲3三桂成だった。△同王▲3四桂△4一銀(△同王なら▲3二銀成)に▲3一金が、次に▲3二銀成!△同銀▲2五桂△3四王▲3五馬までの詰めろ。まだしもこう指すのだった。
本譜は、遊んでいた△9四飛に、△6四飛と活用されてはもういけない。最後は植山七段に華麗に詰まされて、無念の投了となった。
プロに平手で勝てるわけはないが、もう少しだけ上手を焦らせたかったと思う。
ともあれ、気楽に平手で指してくれた、植山七段のご厚意に感謝したい。中井女流六段、植山七段と、濃密な2局であった。
周りを見渡すと、Hi氏が中井女流六段に指導対局を受けている。しかし、振り飛車党のHi氏が矢倉を指している。何でも、「矢倉は30年に1回指す」という。それならば、私たちは貴重な場に居合わせたことになるわけだ。次にHi氏が矢倉を指すのは、30年後ということになる。
もう昼近くである。土曜日組を迎えに行かなければならない。
めいめいクルマに乗り、12時すぎ、信濃川上駅に着いた。と、すでに5人が駅の前にたむろしていた。「早く将棋指してー」という妖気が漂っている。さすがの私たちも、たじろいだ。
(つづく)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする