昨年2月18日(金)のLPSA芝浦サロンは、石橋幸緒女流四段(当時天河)の担当だった。
この前日石橋女流四段は、第4期マイナビ女子オープンの挑戦者決定戦で上田初美女流二段に敗れ、この日はさすがに元気がなかった。だが何の暗示か「ミニたい焼き」のお菓子を持参し、私たちにおすそ分けしてくれた。
私はとくに慰めるでもなく、指導対局開始。▲7六歩△3四歩▲2六歩△3五歩。石橋女流四段は石田流をにおわせてきた。
私は▲6八玉から▲7八銀。左美濃に組むのかと思ったら、▲6六歩。では▲6七銀~▲5七銀とでも進めるのかと思ったら、▲6五歩と突き越した。
過去の将棋を並べ返してみると、思いもよらぬ手を指していて理解不能に陥ることがあるが、本局の私もそうだ。1年前の私は、いったい何を考えていたのだろう。
石橋女流四段は△5三銀~△3一角。なんとも大胆な指し方だ。私は▲4五銀と出た。△同桂に▲1一角成は△3七桂成以下うるさいので▲4五同歩だが、石橋女流四段は△4四歩と角道を遮断する。しかし▲同歩△同飛▲4五歩△同飛で▲1一角成が実現し、これは私が有利になったと思った。
△4六歩▲5九桂を利かされたが、私は飛車を成ってますます快調。△4三飛のぶっつけにも▲3四竜と引いて相手にしない。
しかし数手後、△4七歩成を▲同銀と取ったのが軽率だった。飛車をバッサリ切られ、▲同桂に△4六歩からと金を作られては、ヨリを戻された気がした。
△4七歩成には、▲同桂と取るのだった。これに△4六歩なら▲3五桂ハネが飛車当たりになって下手よし。
それでも本譜は▲4三桂成から金桂交換になり、まだこちらに分があると思った。
石橋女流四段は△2四角から△3五角と出る。私は▲3六歩と突く。
図以下の指し手。△4二歩▲3四竜△5七と▲3五歩△6八と▲同玉△5六銀▲7八角△6七銀打▲同角△5七金▲7八玉△6七銀成(投了図)まで、石橋女流四段の勝ち。
△4二歩が玄妙な手で参った。私は▲3四竜だが、ここは何か手がなかったか。
△5七とに▲3五歩。しかしここは▲3五竜だった。
石橋女流四段は△6八とから△5六銀。大庭美夏女流1級が来て、
「大沢さんのほうに大ゴマが4枚ある」
と言う。しかし大駒は受けに適さない。意外に受けが難しく、愕然とした。
私は熟考して▲7八角だが、「それは…」と石橋女流四段がつぶやいて△6七銀打。
そうか…と思う。駒を呼び込んでおいて、あとでその駒を取り返す手筋だ。数手進み、△6七銀成に私は投了した。
「マイナビでもこういけばよかったんだけどな」
と石橋女流四段。勝ってもさびしそうだった。
感想戦に入ったが、▲4五銀出は成功していたようだ。その後の指し手も、多少ぐずぐずしていたが、下手は決定的な悪手は指していない。それでいて△5六銀の局面は、たぶん上手がいいのだろう。これはどういうことなのか。
先にも書いたが、▲3五歩と角を取るところでは竜で取るのだった。そのあと▲7八角に換えて▲5八金と打つ。もし△5五桂なら▲同馬△同歩▲5七歩で一息つけるが、しかしこうはならない気がする。
下手に指させるだけ指させて、最後にすっと体を入れ替える。指導対局の王道を見た気がした。
「大ゴマが4枚あったのに…」
と美夏女流1級が再びつぶやく。将棋は駒取りゲームではないから、大駒が何枚あってもダメなのだ。
この前日石橋女流四段は、第4期マイナビ女子オープンの挑戦者決定戦で上田初美女流二段に敗れ、この日はさすがに元気がなかった。だが何の暗示か「ミニたい焼き」のお菓子を持参し、私たちにおすそ分けしてくれた。
私はとくに慰めるでもなく、指導対局開始。▲7六歩△3四歩▲2六歩△3五歩。石橋女流四段は石田流をにおわせてきた。
私は▲6八玉から▲7八銀。左美濃に組むのかと思ったら、▲6六歩。では▲6七銀~▲5七銀とでも進めるのかと思ったら、▲6五歩と突き越した。
過去の将棋を並べ返してみると、思いもよらぬ手を指していて理解不能に陥ることがあるが、本局の私もそうだ。1年前の私は、いったい何を考えていたのだろう。
石橋女流四段は△5三銀~△3一角。なんとも大胆な指し方だ。私は▲4五銀と出た。△同桂に▲1一角成は△3七桂成以下うるさいので▲4五同歩だが、石橋女流四段は△4四歩と角道を遮断する。しかし▲同歩△同飛▲4五歩△同飛で▲1一角成が実現し、これは私が有利になったと思った。
△4六歩▲5九桂を利かされたが、私は飛車を成ってますます快調。△4三飛のぶっつけにも▲3四竜と引いて相手にしない。
しかし数手後、△4七歩成を▲同銀と取ったのが軽率だった。飛車をバッサリ切られ、▲同桂に△4六歩からと金を作られては、ヨリを戻された気がした。
△4七歩成には、▲同桂と取るのだった。これに△4六歩なら▲3五桂ハネが飛車当たりになって下手よし。
それでも本譜は▲4三桂成から金桂交換になり、まだこちらに分があると思った。
石橋女流四段は△2四角から△3五角と出る。私は▲3六歩と突く。
図以下の指し手。△4二歩▲3四竜△5七と▲3五歩△6八と▲同玉△5六銀▲7八角△6七銀打▲同角△5七金▲7八玉△6七銀成(投了図)まで、石橋女流四段の勝ち。
△4二歩が玄妙な手で参った。私は▲3四竜だが、ここは何か手がなかったか。
△5七とに▲3五歩。しかしここは▲3五竜だった。
石橋女流四段は△6八とから△5六銀。大庭美夏女流1級が来て、
「大沢さんのほうに大ゴマが4枚ある」
と言う。しかし大駒は受けに適さない。意外に受けが難しく、愕然とした。
私は熟考して▲7八角だが、「それは…」と石橋女流四段がつぶやいて△6七銀打。
そうか…と思う。駒を呼び込んでおいて、あとでその駒を取り返す手筋だ。数手進み、△6七銀成に私は投了した。
「マイナビでもこういけばよかったんだけどな」
と石橋女流四段。勝ってもさびしそうだった。
感想戦に入ったが、▲4五銀出は成功していたようだ。その後の指し手も、多少ぐずぐずしていたが、下手は決定的な悪手は指していない。それでいて△5六銀の局面は、たぶん上手がいいのだろう。これはどういうことなのか。
先にも書いたが、▲3五歩と角を取るところでは竜で取るのだった。そのあと▲7八角に換えて▲5八金と打つ。もし△5五桂なら▲同馬△同歩▲5七歩で一息つけるが、しかしこうはならない気がする。
下手に指させるだけ指させて、最後にすっと体を入れ替える。指導対局の王道を見た気がした。
「大ゴマが4枚あったのに…」
と美夏女流1級が再びつぶやく。将棋は駒取りゲームではないから、大駒が何枚あってもダメなのだ。