このブログはあまり時事ネタは書かないし、ましてやこの棋戦には興味がないのだが、きょうはこれを書こうと思う。
きのう2日(木)に行われたマイナビ女子オープン挑戦者決定戦・清水市代女流六段と長谷川優貴女流初段の一戦である(以下、段位は略)。
本局、長谷川に時の勢いはあるものの、まだ清水には敵わないだろう、が大勢の見方だったと思う。むろん私もそう思っていたし、ジョナ研メンバーも、その意見が多かったようである。しかし結果は…。
将棋は長谷川の先手中飛車でスタートした。清水は△5三銀~△4二銀上の古風な陣立てで迎え討つ。清水は、対四間飛車には左美濃、対中飛車には舟囲いと、奇をてらわない指し方をする。
長谷川、意表の▲7五歩で戦いが始まり、清水の△6五桂に、長谷川は強く▲7四歩。銀桂交換の駒損でも、相手の飛車を取って指せるという読みだ。
数手後、▲1五歩△同歩▲1三歩に、清水の△1四金が、驚愕の一手だった。
端攻めをガッチリ受ける意だが、金はトドメに使うもの。こんなところに金を打つ将棋は見たことがない。
清水は昨年秋の女流王座戦第4局で、角による金取りを、△1二金とじっと寄って受けた。本局の△1四金はそれに勝るとも劣らない辛抱で、将棋界広しとしえども、この金を打てるのは清水しかいない。「清水金」と命名したらいいのだろうか。
清水流はこれだけにとどまらない。長谷川、▲1八香打と端を攻めた手に、△2四銀と入れたのが、またも忍の一手。2手前に打った△5一桂と合わせ、金銀6枚に桂の防波堤という、凄まじい囲いを作り上げた。しかしこれで清水の持ち駒は歩ばかり。これで勝てるのだろうか。
自陣は鉄壁だから負けはない。将棋に引き分けはないから、最後は自分が勝つ。…という読みだったのだろうか。
もしそうだとしたら清水、恐るべき大局観だ。
なおこの将棋の模様は、仕事中にもかかわらず、私はスマホを盗み見て、状況を確認していた。これもスマホを手にした恩恵というべきか。
終盤に差し掛かり、清水、8筋に味をつけて、△6五歩とじっと伸ばしたのが味わい深い好手。△4六馬の王手竜取りや、△5五馬の飛車竜両取りを見ている。長谷川、▲6一竜と一手パスするようでは、何と清水が優勢である。まさに清水、恐るべき読みである。ここに清水の、底しれない強さを見た。
しかし数手後の△4六歩が、ここまでの苦労をあたら棒に振った疑問手だった。長谷川によろこんで▲同飛と取られ、△同馬▲同馬の結果は、天王山の馬がいなくなり、敵の馬が4六に据わってしまった。
清水はこのあたりで秒読みだったが、この変化はすぐに見えたはずだ。その後の△4九飛に期待したのかもしれないが、何か誤算があったとしか思えない。
あまりにもドラマチックな展開に、このあたり私は、スマホに釘づけだった。
一気に長谷川勝勢である。清水も△2六桂から△2一玉と見せ場を作るが、持ち時間を余計に残していた長谷川が、落ち付いて寄せ切った。
さあ、大変なことになった。女流棋士デビュー、わずか125日の女子高生が、タイトル戦の檜舞台に上がることになったのだ。
まさにシンデレラガールの登場だが、ここに至る道のりは平坦ではなかった。予選決勝の渡部愛アマとの一戦は、最後まで負け形だったし、本戦2回戦の甲斐智美女流王位戦は、二転三転の激闘の末、持将棋になった。
準決勝の斎田晴子女流五段戦は、終盤で負けの局面になりながら、斎田女流五段の大悪手で、薄氷の勝利となった。
そして本局の勝利である。これは運も味方につけているとしか思えない。上田初美女王との五番勝負は、上田女王が厚い、と私は見るが、長谷川が甲斐、斎田、清水と手ごわいところを破ってきている結果も無視できない。まさに、戦いながら強くなってきている感じである。
上田女王と長谷川新女流二段の対戦は、前期のマイナビ女子オープンの本戦1回戦以来。今五番勝負は、お互い期するものがあるだろう。ふたりとも、力いっぱい戦ってほしい。
ともあれ長谷川女流二段、おめでとうございます。
しかし…先の加藤桃子女流王座の誕生といい、ほかの女流棋士は何をやってるんだと思う。シンデレラガールは何人もいらないのだ。ほかの女流棋士は寝食を忘れて、もっと将棋に打ち込まないとダメである。
きのう2日(木)に行われたマイナビ女子オープン挑戦者決定戦・清水市代女流六段と長谷川優貴女流初段の一戦である(以下、段位は略)。
本局、長谷川に時の勢いはあるものの、まだ清水には敵わないだろう、が大勢の見方だったと思う。むろん私もそう思っていたし、ジョナ研メンバーも、その意見が多かったようである。しかし結果は…。
将棋は長谷川の先手中飛車でスタートした。清水は△5三銀~△4二銀上の古風な陣立てで迎え討つ。清水は、対四間飛車には左美濃、対中飛車には舟囲いと、奇をてらわない指し方をする。
長谷川、意表の▲7五歩で戦いが始まり、清水の△6五桂に、長谷川は強く▲7四歩。銀桂交換の駒損でも、相手の飛車を取って指せるという読みだ。
数手後、▲1五歩△同歩▲1三歩に、清水の△1四金が、驚愕の一手だった。
端攻めをガッチリ受ける意だが、金はトドメに使うもの。こんなところに金を打つ将棋は見たことがない。
清水は昨年秋の女流王座戦第4局で、角による金取りを、△1二金とじっと寄って受けた。本局の△1四金はそれに勝るとも劣らない辛抱で、将棋界広しとしえども、この金を打てるのは清水しかいない。「清水金」と命名したらいいのだろうか。
清水流はこれだけにとどまらない。長谷川、▲1八香打と端を攻めた手に、△2四銀と入れたのが、またも忍の一手。2手前に打った△5一桂と合わせ、金銀6枚に桂の防波堤という、凄まじい囲いを作り上げた。しかしこれで清水の持ち駒は歩ばかり。これで勝てるのだろうか。
自陣は鉄壁だから負けはない。将棋に引き分けはないから、最後は自分が勝つ。…という読みだったのだろうか。
もしそうだとしたら清水、恐るべき大局観だ。
なおこの将棋の模様は、仕事中にもかかわらず、私はスマホを盗み見て、状況を確認していた。これもスマホを手にした恩恵というべきか。
終盤に差し掛かり、清水、8筋に味をつけて、△6五歩とじっと伸ばしたのが味わい深い好手。△4六馬の王手竜取りや、△5五馬の飛車竜両取りを見ている。長谷川、▲6一竜と一手パスするようでは、何と清水が優勢である。まさに清水、恐るべき読みである。ここに清水の、底しれない強さを見た。
しかし数手後の△4六歩が、ここまでの苦労をあたら棒に振った疑問手だった。長谷川によろこんで▲同飛と取られ、△同馬▲同馬の結果は、天王山の馬がいなくなり、敵の馬が4六に据わってしまった。
清水はこのあたりで秒読みだったが、この変化はすぐに見えたはずだ。その後の△4九飛に期待したのかもしれないが、何か誤算があったとしか思えない。
あまりにもドラマチックな展開に、このあたり私は、スマホに釘づけだった。
一気に長谷川勝勢である。清水も△2六桂から△2一玉と見せ場を作るが、持ち時間を余計に残していた長谷川が、落ち付いて寄せ切った。
さあ、大変なことになった。女流棋士デビュー、わずか125日の女子高生が、タイトル戦の檜舞台に上がることになったのだ。
まさにシンデレラガールの登場だが、ここに至る道のりは平坦ではなかった。予選決勝の渡部愛アマとの一戦は、最後まで負け形だったし、本戦2回戦の甲斐智美女流王位戦は、二転三転の激闘の末、持将棋になった。
準決勝の斎田晴子女流五段戦は、終盤で負けの局面になりながら、斎田女流五段の大悪手で、薄氷の勝利となった。
そして本局の勝利である。これは運も味方につけているとしか思えない。上田初美女王との五番勝負は、上田女王が厚い、と私は見るが、長谷川が甲斐、斎田、清水と手ごわいところを破ってきている結果も無視できない。まさに、戦いながら強くなってきている感じである。
上田女王と長谷川新女流二段の対戦は、前期のマイナビ女子オープンの本戦1回戦以来。今五番勝負は、お互い期するものがあるだろう。ふたりとも、力いっぱい戦ってほしい。
ともあれ長谷川女流二段、おめでとうございます。
しかし…先の加藤桃子女流王座の誕生といい、ほかの女流棋士は何をやってるんだと思う。シンデレラガールは何人もいらないのだ。ほかの女流棋士は寝食を忘れて、もっと将棋に打ち込まないとダメである。