植山悦行七段とW氏がこの局面を見て話す。
「大沢さんが攻めを呼び込んだみたいですけど」
「そうだね。攻めさせてカウンター狙いだね」
「だいぶ高度な狙いみたいですけど」
「もちろんもちろん。だから下手に力がないと指せませんよ」
植山七段は私の指し手を信用しているふうだったが、私は上手の攻めを呼び込みすぎた気がしていた。
この局面、第一感は▲6四歩だった。これに△同飛は▲8六角が幸便だから上手も取りにくい。
右で対局していたWパパ氏(W氏とは別人)が、▲8六角に△5七銀を示す。大野八一雄七段は席を立っているので、あからさまな検討をしても大丈夫だ。
「それは▲6五金と取ります。△6八銀成▲同玉は、上手の持ち駒が角1本なのに、こっちの持ち駒は銀銀桂でしょ。盤面は制圧しているし、これは下手がいいです」
私が述べると、Wパパ氏が感心したように私を見る。先ほどは植山七段に平手で勝っていたWパパ氏にそんな反応をされると、私が恐縮してしまう。
そんなわけで▲6四歩には△同飛だろうが、▲8六角に△6一飛と引かれて、下手の次の手が分からない。
次に考えたのは△5七銀を防ぐ▲5八銀である。これでよければ問題はないのだが、▲6六金が浮いているのが気にかかる。
強く▲6七金上もある。しかしこれは強気に過ぎて、下手が上手に指す手ではないような気がした。
「(▲5八銀に)△7七歩なら?」
とWパパ氏。
「それは▲同桂で下手の桂を捌かせることになるから、ないと思います」
大野八一雄七段が私に詰将棋のプリントを配り忘れたということもあったが、私は現局面をこんこんと考える。しかし結論は容易に出なかった。
そこへHon氏が来る。これで役者が揃った感じだ。きょうは大人8人、子供6人。日曜日は土曜日と比べて生徒が少なかったが、最近は日曜日も土曜日並に多くなってきた。
きょうは女流名人位戦第3局が行われている。里見香奈女流名人の石田流三間飛車に、清水市代女流六段が棒金模様に出た将棋だ。その進行をパソコンで確認するが、いまは訳の分からない戦いになっている。
指導対局再開。結局私は、▲5八銀と引いた。大野七段は△7七歩。Wパパ説が当たった。▲同桂△同桂成▲同金△8五桂。▲6七金左は△6五歩なので私は▲6五歩だが、△7七桂成と取られては、下手が失敗した。しかし▲6五の位は取ったし、左桂も捌けた。まだ下手指せる、と思っていた。以下はこう進んだ。
▲7七同角△5三金寄▲5七桂△9四歩▲7八玉△9五歩▲7五歩△8五歩▲5九角△8一飛。
ここで▲6七銀と上がったのが疑問だった。すかさず△4七金と張りつかれ、苦しくなった。
以下は大野七段の攻めを振りほどけず、私の投了となった。
感想戦で私は開口一番、▲6七銀で▲7六桂と指すべきだった、と悔やんだが、とりあえず3時休憩の場面まで戻す。
▲6四歩に△同飛は▲8六角がイヤなので、△5七銀と打つと大野七段は言った。しかしそれは▲6五金以下下手がよい。これは大野七段も納得する。
大野七段は▲6二歩~▲6三歩~▲7四銀を考えていたという。以下△6一飛▲6五金となるが、これは桂を取っても歩切れになるのが痛い。これにも大野七段は同意してくれた。
では▲6四歩には、やはり△同飛か。▲8六角△6一飛は、確かに下手の次の手が難しい、となったところで、△6一飛で△5七桂不成が発見された。これは下手負けだ。
とするならば、▲5八銀はとりあえず正解だったようで、それで大野七段も自信がない、とのことだった。
局面が進んで、私は▲6七銀に換え▲7六桂を示す。まことにボンヤリした手だが、▲6四歩~▲6五桂を見た、雄大な手だ。これで意外に難解か、となったとき、大野七段は△3九銀を指摘する。▲1八飛なら△2七金で飛車が死ぬので▲2六飛だが、△4八金で上手優勢。だが▲3八飛と寄ればどうなのだろう? そうか、これも△4八金がある。▲同角△同銀成▲同飛△8六歩▲同歩△5九角▲2八飛△8六角成は、下手まったく自信がない。
となると、3時休憩の時点では下手がすでに悪かったということになる。では休憩前の△6六歩には、▲同銀でなく▲同金だったか。整理すると、△6六歩▲同金△同銀▲同銀△6五桂▲6七歩。盤上に銀を残せば5七の地点が守れる。△6五桂には▲6七歩と収めて、下手も威張れた形勢ではないが、これならまだまだ頑張れた。
女流名人位戦は、里見女流名人が勝ったようだ。この勝利は大きい。
Hanaちゃんが、植山七段に飛車落ちで指導を受けている。お互い大駒を自陣に引いて、長期戦の構えだ。
私は、初めて見る生徒氏と一局。先手氏の四間飛車に、私は△5三銀左。先手氏の▲9六歩に私がつき合わなかったので、△1三角から山田流に出ることができた。
△8六歩から角を交換して▲7七角。先手氏にだけ角を打たせて私は満足。▲9七桂を咎めるべく端攻めに出て、最終的には銀得になった。
これはさすがに負けられない、というか勝ったと思ったのだが、ここから先手氏の捨て身の攻撃が始まる。▲3三角成と切って、▲7二銀。△8一飛取りだから△3一飛と逃げたが、▲7三の成桂を▲6三成桂と寄り、△5三金と交換になっては、私も気持ちの悪い形になった。
以下は先手氏の的確な指し手の前に、私が屈した。
これで今年の大野教室は、ここまで1勝12敗。ちょっとこれは重傷である。「将棋世界」を購読してリハビリをしないとダメのようだ。
(つづく)
「大沢さんが攻めを呼び込んだみたいですけど」
「そうだね。攻めさせてカウンター狙いだね」
「だいぶ高度な狙いみたいですけど」
「もちろんもちろん。だから下手に力がないと指せませんよ」
植山七段は私の指し手を信用しているふうだったが、私は上手の攻めを呼び込みすぎた気がしていた。
この局面、第一感は▲6四歩だった。これに△同飛は▲8六角が幸便だから上手も取りにくい。
右で対局していたWパパ氏(W氏とは別人)が、▲8六角に△5七銀を示す。大野八一雄七段は席を立っているので、あからさまな検討をしても大丈夫だ。
「それは▲6五金と取ります。△6八銀成▲同玉は、上手の持ち駒が角1本なのに、こっちの持ち駒は銀銀桂でしょ。盤面は制圧しているし、これは下手がいいです」
私が述べると、Wパパ氏が感心したように私を見る。先ほどは植山七段に平手で勝っていたWパパ氏にそんな反応をされると、私が恐縮してしまう。
そんなわけで▲6四歩には△同飛だろうが、▲8六角に△6一飛と引かれて、下手の次の手が分からない。
次に考えたのは△5七銀を防ぐ▲5八銀である。これでよければ問題はないのだが、▲6六金が浮いているのが気にかかる。
強く▲6七金上もある。しかしこれは強気に過ぎて、下手が上手に指す手ではないような気がした。
「(▲5八銀に)△7七歩なら?」
とWパパ氏。
「それは▲同桂で下手の桂を捌かせることになるから、ないと思います」
大野八一雄七段が私に詰将棋のプリントを配り忘れたということもあったが、私は現局面をこんこんと考える。しかし結論は容易に出なかった。
そこへHon氏が来る。これで役者が揃った感じだ。きょうは大人8人、子供6人。日曜日は土曜日と比べて生徒が少なかったが、最近は日曜日も土曜日並に多くなってきた。
きょうは女流名人位戦第3局が行われている。里見香奈女流名人の石田流三間飛車に、清水市代女流六段が棒金模様に出た将棋だ。その進行をパソコンで確認するが、いまは訳の分からない戦いになっている。
指導対局再開。結局私は、▲5八銀と引いた。大野七段は△7七歩。Wパパ説が当たった。▲同桂△同桂成▲同金△8五桂。▲6七金左は△6五歩なので私は▲6五歩だが、△7七桂成と取られては、下手が失敗した。しかし▲6五の位は取ったし、左桂も捌けた。まだ下手指せる、と思っていた。以下はこう進んだ。
▲7七同角△5三金寄▲5七桂△9四歩▲7八玉△9五歩▲7五歩△8五歩▲5九角△8一飛。
ここで▲6七銀と上がったのが疑問だった。すかさず△4七金と張りつかれ、苦しくなった。
以下は大野七段の攻めを振りほどけず、私の投了となった。
感想戦で私は開口一番、▲6七銀で▲7六桂と指すべきだった、と悔やんだが、とりあえず3時休憩の場面まで戻す。
▲6四歩に△同飛は▲8六角がイヤなので、△5七銀と打つと大野七段は言った。しかしそれは▲6五金以下下手がよい。これは大野七段も納得する。
大野七段は▲6二歩~▲6三歩~▲7四銀を考えていたという。以下△6一飛▲6五金となるが、これは桂を取っても歩切れになるのが痛い。これにも大野七段は同意してくれた。
では▲6四歩には、やはり△同飛か。▲8六角△6一飛は、確かに下手の次の手が難しい、となったところで、△6一飛で△5七桂不成が発見された。これは下手負けだ。
とするならば、▲5八銀はとりあえず正解だったようで、それで大野七段も自信がない、とのことだった。
局面が進んで、私は▲6七銀に換え▲7六桂を示す。まことにボンヤリした手だが、▲6四歩~▲6五桂を見た、雄大な手だ。これで意外に難解か、となったとき、大野七段は△3九銀を指摘する。▲1八飛なら△2七金で飛車が死ぬので▲2六飛だが、△4八金で上手優勢。だが▲3八飛と寄ればどうなのだろう? そうか、これも△4八金がある。▲同角△同銀成▲同飛△8六歩▲同歩△5九角▲2八飛△8六角成は、下手まったく自信がない。
となると、3時休憩の時点では下手がすでに悪かったということになる。では休憩前の△6六歩には、▲同銀でなく▲同金だったか。整理すると、△6六歩▲同金△同銀▲同銀△6五桂▲6七歩。盤上に銀を残せば5七の地点が守れる。△6五桂には▲6七歩と収めて、下手も威張れた形勢ではないが、これならまだまだ頑張れた。
女流名人位戦は、里見女流名人が勝ったようだ。この勝利は大きい。
Hanaちゃんが、植山七段に飛車落ちで指導を受けている。お互い大駒を自陣に引いて、長期戦の構えだ。
私は、初めて見る生徒氏と一局。先手氏の四間飛車に、私は△5三銀左。先手氏の▲9六歩に私がつき合わなかったので、△1三角から山田流に出ることができた。
△8六歩から角を交換して▲7七角。先手氏にだけ角を打たせて私は満足。▲9七桂を咎めるべく端攻めに出て、最終的には銀得になった。
これはさすがに負けられない、というか勝ったと思ったのだが、ここから先手氏の捨て身の攻撃が始まる。▲3三角成と切って、▲7二銀。△8一飛取りだから△3一飛と逃げたが、▲7三の成桂を▲6三成桂と寄り、△5三金と交換になっては、私も気持ちの悪い形になった。
以下は先手氏の的確な指し手の前に、私が屈した。
これで今年の大野教室は、ここまで1勝12敗。ちょっとこれは重傷である。「将棋世界」を購読してリハビリをしないとダメのようだ。
(つづく)